量子コンピュータに関する基本から未来まで「量子超越」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    量子超越

    ミチオ・カク 著

    量子コンピュータに関する基本から未来までを語る

     量子コンピュータ。量子の「重ね合わせ」「縺れ」といった現象を利用し、現在のデジタル・コンピュータを遙かに凌駕する性能を備えるとされる、夢の次世代コンピュータである。その実用化に欠かせない「量子超越性」に、人類はすでに2019年に到達した。Googleの「Sycamore」がそれである。これによってわれわれは、いよいよ量子コンピューティングの時代に突入したといえる。

     本書は、量子論の基本から説き起こし、コンピューティングの歴史、量子コンピュータ開発を巡る熾烈な競争、そして将来的に、量子コンピュータによってどのようなことが可能となるのかまで、およそ量子コンピュータに関する、あらゆる話題を語り尽くす啓蒙書。
     何しろ著者によれば、量子コンピューティングを駆使すれば、生命の起源を突き止め、世界を緑化し、食糧・エネルギー問題、地球温暖化までをも解決し、核融合発電も実用化できるというのだから、未来は明るいといわざるを得ない。
     さらに、医療の分野にこれを活用すれば、細胞の若返りや不老不死までをも獲得できるというのだ。

     著者のミチオ・カク氏は、ニューヨーク市立大学理論物理学教授で、「ひもの場の理論」の創始者。間違いなく当代随一の知性であるが、同時に「最新の科学を一般読者や視聴者にわかりやすく情熱的に伝える」力量の持ち主でもあり、その力量は本書でも遺憾なく発揮されている。

    NHK出版 2860円(税込)

    (月刊ムー 2025年3月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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