ミノア文明の真の姿を追う!「失われたアトランティス」/ムー民のためのブックガイド
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大西洋に栄えたという超文明アトランティスとはいかなるものだったのか? 世界各地に眠る遺産から実像を読み解いていく。初回はプラトンの記述からの、基礎知識。
遥かなる太古、大西洋に存在していたとされる大陸「アトランティス」。今なお人々の好奇心を駆り立ててやまないアトランティス大陸の伝説は、紀元前4世紀頃、古代ギリシアの哲学者プラトンが著した対話篇『ティマイオス』と『クリティアス』に始まる。
——まず我々は父祖たちがヘラクレスの柱の外側と内側、すべてで戦うよう宣言した大戦争から9000年が経過したことを忘れてはいけない。私はこの戦争について伝えよう。アテナイ(アテネ)は軍を指揮し支援していた。そしてその先にはアトランティス島の王たちがいた。かつてこの島はリビアとアジアより大きかったが、地震で海中に飲み込まれてしまった。そのため今もその近海は島の沈下により形成された泥土が浅瀬にまで迫り、航海の妨げになっている——『クリティアス』108E
これはプラトンが著書『クリティアス』のなかでアトランティスについてふれた一節である。
クリティアスは、理想社会の姿と宇宙観を描いた『ティマイオス』の中に登場したアトランティスに関する続編として執筆されたもので、その副題を『アトランティスの物語』という。その起源は、プラトンの遠縁にあたるクリティアスの家で曾祖父から代々語り継がれていたもので、古代ギリシア・アテナイの政治家ソロンが、旅先で知り合ったエジプトの神官から伝え聞いた話が元になっているとされる。
と、前置きが長くなってしまったが、そのアトランティスとはなんなのか。まずはプラトンが語った内容から紐解いてみよう。
現代から遡ること1万2千年ほど昔、ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)の遥か彼方、アトラスの海には豊かな恵みと圧倒的な勢力を誇る帝国「アトランティス」があった。始祖は海神・ポセイドンであり、10に分けられた領域を人間の妻クレイトとの間に生まれた半神半人の5組10人の双子たちが治めていた。
”アトランティス”という名は帝国を統べる初代王となった長男アトラスの名から「アトラスの島」を意味する。王には代々アトラス直系の長男が君臨する決まりになっており、国内の体制は各領域をそれぞれの王が治める専制君主制であった。
アトランティスの首都は海神ポセイドンが大地を砕き造ったという環状都市「ポセイドニア」である。ポセイドニアは王宮がおかれた中央島の周りを2重の陸地帯と3重の環状水路が囲む構造となっており、まさにアトランティス帝国の象徴であった。
中央島の大きさは直径約925m。島は謎の金属「オリハルコン(オレイカルコス)」の外壁にぐるりと囲まれ、遠目からでも鮮やかな緋色に光り輝いていたとされる。王宮もまた金、銀、象牙、オリハルコンなどがふんだんに使われた絢爛豪華な造りで、冷泉や温泉が豊かに湧き出る泉や、海神ポセイドンを祀る神殿があったという。
神殿にはポセイドンを始め、クレイトの巨大な黄金像の他、王家の始祖10人や歴代王の黄金像が林立しており、代々、王たちはここで5年または6年ごとに会合を開き、国事の相談や裁判、祭事を行っていたとされる。
特に興味深いのはその内容である。王たちはまず始祖ポセイドンに祈りを捧げると、神殿近くに放牧されている牡牛を捕らえ、アトランティスの立法が刻まれたオリハルコンの柱でその喉を搔っ切る。そしてその血で碑文を赤く染めると、黄金の器に牡牛の血液と酒を注ぎ飲み交わすのだ。これは王たちの誓約であり、帝国への忠誠を誓い合うことで彼らは平和と繁栄を享受することができたのである。
中心島の外側には、神官や王族の護衛が暮らす居住区の他、錬成所や軍馬教練場、戦車競技場などが整備された2つの陸地帯があった。どちらも外側が銅で内側は銀を含む錫(すず)張りの外壁と、最大幅約555mの巨大な水路に囲まれており、外洋へは幅約93m、約9kmの水路で繋がっていたという。
では市民はどのような生活をしていたのかというと、その肥沃な大地と温暖な気候から豊かな実りに恵まれ、健康で、秩序と信仰心に満ちた暮らしを送っていたようである。
首都ポセイドニアの後方は、東西555km、南北370kmの美しい山々に囲まれた平地が広がっていた。四周は深さ約30m、幅180m、全長1800kmの堀が巡り、人々はここから内陸部へ運河を縦断させ、約3.5kmを1区画として水路を走らせた。水路は碁盤の目状に整備され、1区画を約6万、10の地域に区切り10人の王たちが各々治めていた。
その豊かな水源は人々にありあまるほどの収穫をもたらした。野菜や穀物は年に2回の収穫を可能にし、椰子の実やオリーブ、葡萄も豊富に得ることができた。川や湖には現代でいう”ゾウのような”生き物も生息しており、その他にも多種多様な動物が存在していたという。
また鉱物資源も豊富だった。いたるところで、金、銀、銅、鉄、当時の好物の中で金をのぞき最も価値があるとされたオリハルコンがいたるところで採掘された。
その様子をプラトンは
——外洋へ向かう水路や町一番の港は、世界各地からやってきた船舶や商人で満ち溢れ、昼夜を問わずかれらの話し声や多種多様の騒音、雑音で大変なにぎわいをみせていた——『クリティアス』117E
と述べていることから、交易も活発だったのだろう。
そして何よりアトランティスが大帝国としてその名を知らしめたのは、彼らの圧倒的な軍事力である。プラトンによると陸軍は戦車1万台、2頭立ての馬車12万騎、馬24万頭、兵士や歩兵、弓兵など約96万人、そして海軍にいたっては軍船1200隻と兵士24万人を擁していたとあるが、これが事実だとすれば総兵力120万という大軍事力になる。
そして彼らの類い希な航海技術は近海のみならず、ヨーロッパやアメリカ大陸の一部にまで影響を広げ、王たちはかつて集められたことがないほどの、またこれからも集まることは難しいほどの莫大な富を所有していったのである。
しかしながら王たちは代々、人間との交配を繰り返すにつれ、徐々にその神性を失い富や支配といった邪悪な欲望にとらわれるようになっていく。そして神の代理人としての役目を忘れ、地中海全体の征服を企てアテナイに敗れると、栄耀栄華を誇ったアトランティスに大破局が訪れるのだ。
ーーその後、激しい地震と大洪水が起こり、一昼夜の間にあなたたちの(古代アテナイ)軍は瞬く間に地中に飲み込まれ、またアトランティス島も同じようにして海の深みに消えてしまったーー『ティマイオス』25D
以上がプラトンが語るアトランティスの姿と滅亡の大要である。
以来、数え切れないほどのアトランティス論が繰り広げられているが、その謎はいまだ解き明かされていない。
現在、「アトランティス」という帝国の名前はおろか、「大西洋で高度な文明を築いていたが、大災害で海中に沈んだ国」に関する記述がプラトン以前に見つかっていないことから、ギリシア神話における巨人神・アトラスの神話に基づいているという説や、古代の理想郷説、さらには予言やスピリチュアルな方面からも様々な見解が唱えられているが——世界各地でアトランティスが存在していた痕跡と思われる遺跡が数多く発見されているのは、ムー読者ならご存じの方も多いだろう。
そして『ティマイオス』と『クリティアス』は、両著ともその本筋において十分信頼できる史料とされているのもまた事実であり、プラトンが示すアトランティスの場所や、首都ポセイドニアの詳細な数字などは、あまりにも具体的であり無視できないものがある、というのが多くの研究家の意見だ。
ではプラトンの主張通りアトランティスは本当に実在してたとすれば、それはどのような姿だったのだろうか。幻の大陸アトランティスの遺産は、世界各地にある。
——このシリーズでその真相を明らかにしていこう。
遠野そら
UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。
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