30年後に失踪当時の姿で帰ってきた男に何が起きたのか!? 消えた記憶と謎の運転手… ルーマニアの未解決事件
仕事で出張に出かけたきり行方不明になっていた父親が、その30年後、家を出た時と同じ服装のまま何もなかったかのように帰宅した――。父親にいったい何があったのか。
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UFO、UMA、心霊現象——。不可思議な事件の数々に、超常現象研究家・並木伸一郎が鋭く切り込む。 今回は、ルーマニアはトランシルヴァニアのミステリー多発地帯、「ホヤ・バチュー」の森で起こる怪異の数々と、その発生原因に迫る。
古くから、「森」は畏怖すべき場所であった。鬱蒼と生い茂る木々が陽光を遮り、暗い影を落とす。いずこからともなく聞こえる野生動物の遠吠え、得体の知れぬざわめき……灯りのない時代、人々はそれらすべてを恐れ、尊崇してきた。
だが、ルーマニアのトランシルバニア地方に広がる「ホヤ・バチュー(ホィア・バキュー、ホイア・バチウ)」の森は、今なお畏怖すべき場所かもしれない。この森は、古の時代からヴァンパイアや人狼、そして悪鬼の巣とされ、現在も科学では説明のつかない怪奇現象が、日々起こりつづけているからだ。
ホヤ・バチューは地方都市クルージュ・ナポカの西に位置し、面積は3平方キロと決して広くない。ここで発生する怪異の歴史は古く、その種類も多岐にわたる。心霊現象、失踪事件、さらにはUFO目撃事件まで起きており、トランシルバニア版のバミューダ・トライアングルという俗称までつけられているほどだ。
森の名前である“バチュー”とは、かつて200頭もの羊を連れて森に入ったまま行方不明になった羊飼いの名前に由来する。この事件以来、“帰らずの森”として恐れられ、その名を口にすることさえはばかられる時代が長い間続いていた。
だが、それが単なる伝承ではないことは、森の中に足を踏み入れればわかる。言葉にできない重い空気で満たされたその空間では、猛烈な頭痛や吐き気に襲われたりするなど、人体に影響を及ぼす。
事実、2015年8月、テレビ番組『世界の果てまでイッテQ!』で、珍獣ハンター・イモトが森に侵入したが、白いモヤの出現と同時に、謎の激しい頭痛に襲われ、即、撤退している。
頭痛だけではなく、激しい痛みを体中に感じ、時間の感覚がなくなることもあるという。また、突然、意識が遠のき、気がついたときにはまったく別の場所にいるという体験をする人もいる。さらには、遠い昔の記憶が突如として溢れ、前世の記憶が甦ったと証言する人や、幽体離脱を体験したという報告までもあるのだ。
こうした摩訶不思議な感覚や現象のほかに、原因不明の切り傷やさまざまな箇所からの出血やアザ、さらには火のないところで火傷を負う人が数多くいるという。これらは森から離れると自然と消えてしまうようだが、その証言の多さが決して世迷言ではないことを裏づけている。
やはり、この森には“何か”がある。それはこれから紹介する数々の伝承・報告を知ることで、確信に変わるはずだ。
興味本位で森の中に入った人人が、だれかに見られているような視線を絶えず感じるという報告もある。無気味な感覚は森の中にいる限り続き、人々は異常な喉の渇きに悩まされ、後悔と不安に駆られるという。もしかしたら、その視線の“主”は暗い森の中に巣食う幽霊かもしれない。
事実、この森で霊体験をしたという報告は枚挙に暇がない。突然、無気味な声が聴こえたり、森の中で撮影した写真に奇妙なものが写り込むこともある。目の前に顔が浮かび上がったり、木の幹が醜い顔に変化したりすることもあるというのだ。
だが、目撃されるのは、こうした“人型の存在”だけではない。とりわけ注目したいのは、どこからともなく現れ、点滅しながら木々の間を飛び回る怪光だ。オーブといわれるその怪光は何の前触れもなく現れ、空間を徘徊するように漂い、ふいに姿を消す。
これらの光の正体を検証するために、心霊現象の専門家が森に入り、最新機器を用いた調査がたびたび行われたが、電子機器がしばしば誤作動を起こし、赤外線カメラを駆使しても熱源反応を検知できなかったという。
さらに、この森ではポルターガイスト現象も珍しいことではない。歩いていると、背後から強い力で押される。カメラを構えれば、何かがぶつかってきたり。怪異がテレビカメラによって捉えられたこともある。
あるテレビ番組の取材クルーが森の中に入った際に、スタッフのひとりが目に見えない“何か”に突き倒されるという怪現象が起こり、その一部始終が撮影されているのだ。彼は長袖のシャツを着ていたにもかかわらず、その両腕には無数のひっかき傷が残っていた。その直前に、背後で無気味な女の声を聴いたというが、それは突き飛ばした張本人=幽霊なのだろうか。
もしそうだとすれば、正体はホヤ・バチューで行方不明になった者たちなのかもしれない。
地元民たちが“帰らずの森”と恐れるように、この森では行方不明者が後を絶たない。その数はすでに1000人を超えているともいわれている。運よく見つかったとしても、その後の人生は暗い闇に閉ざされている。
5歳のときに行方不明になったある少女は、5年後に森の中で保護された。だが、少女は5年間の記憶がまったくなく、年月が経過していることにさえ気づいていなかった。そればかりか、少女の洋服は行方不明になった“当時のまま”で、5年もたったとは思えなかった。
5年もさまよい歩き、着ていた服がほとんど無傷であることが実に不可解だ。なお、彼女のように行方不明者が保護された例はほかに5件あるが、当事者たちは発見後にほどなくして亡くなってしまっている。死因はいずれも自殺。森の中に巣食う闇が、彼らの心まで蝕んでいたのかもしれない。
前述したように、この森はUFO目撃の多発地帯としても知られている。最初の事例が起きたのは1968年のこと。現地で調査を行っていた生物学者アレクサンドル・シフトが、円盤状の飛行物体を鮮明な写真に収めている。同年8月、軍人のエミール・バルネアも同じような物体を撮影することに成功した。
これらは社会的立場のある人物による“証拠”であるだけに、捏造されたものとは考えにくい。1970年代に入っても森で撮影されたUFOの出現は増加しつづけ、それは21世紀の今日まで続いている。
2002年には、森のすぐ隣にあるクルジの街で一番高い建物の屋上から撮影されたビデオ映像が公開された。その映像には、森の上空を飛ぶ葉巻形の物体が約27秒もの間とらえられている。一緒に映り込む建物との比較で、推測される全長は50メートルほど。ゆっくりと飛行しつづけるこの物体は、やがて厚い雲の中に姿を消した。
なぜ、これほどまでにUFOの出現が頻発するのか? その原因は、やはり森の中にあるのかもしれない。実は、異常の中核をなしていると考えられている場所がある。鬱蒼とした樹木で覆われているホヤ・バチューの森に、まったく植物が生えていない半径300メートルほどの広さの“円形地帯”がある。
この一帯ではあらゆる電子機器の誤作動が止まらないことから、何らかの原因で電磁波が異常に高まっていると考えられているのだ。調査の結果、マイクロ波も赤外線も異常な数値が計測されるのだが、その絶対的な原因が判明しない。さらなる調査で、土壌のサンプルの分析が行われたが、周囲の土壌と異なる成分さえ見つからず、原因は不明のままだ。
実際、森の地下にはUFOの基地があると主張する人たちもいる。電子機器による計測で異常な数値が示されることを考えれば、そう結論づけられても不思議はない。さらには、この地こそが失われたアトランティス文明の中心地点ではないかという説もある。古のアトランティス人が異次元へのポータルを残したのではないかというのだ。
真相は今のところ不明だが、森の一部が別の次元への入り口になっているという可能性は十分考えられる。多発するオーブの目撃事例や行方不明事件を鑑みれば、これらの説は決して荒唐無稽なものではないはずだ。
一方で、この森から超低周波が発せられているという説もある。人間の耳では聴こえない周波数の音波が物理的な効果を生み出すというのだ。確かに、しばしば報告される頭痛や鼻血、吐き気を始め、幻覚や幻聴の原因にもなりえる。森の中に“音源”をなす何かが存在する可能性を否定はできない。
だが、それではポルターガイスト現象やオーブのような怪光の現出を説明することはできない。
残念ながら、これらの怪奇現象を根本的に解明できる“証拠”は何ひとつない。怪現象についての報告は増える一方だが、原因はいっさいわかっていない。だが原因が何であれ、ホヤ・バチューの森でわれわれの理解を超える怪異が起きていることはまぎれもない事実だ。
幸いなことに、この謎に挑む専門家は少なくない。継続的な現地調査が行われれば、怪異の中核に何があるのか、その全容が明らかになる日が来るかもしれない。
並木伸一郎
「ムー」創刊当初から寄稿するベテランライター。UFO研究団体ICER日本代表、日本宇宙現象研究会(JSPS)会長などを兼任。ロズウェルやエリア51をはじめ現地調査を重ねて考察し、独自の仮説を「ムー」や自身のYouTubeなどで発表している。
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