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「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2024年5月号、第481回目の内容です。
エジプトのアスワン大学病院の医師たちは驚いた。腹痛を訴えた男性患者(当人の希望で匿名)の腹部をレントゲン検査で調べたところ、なんと胃の中にスマホが呑み込まれていたのだ!
患者の男は、半年ほど前に自分でそれを呑み込んだことを認めたが、最初のうちは痛くなかったので、医者へは行かなかった。
ところが、痛みがだんだん激しくなってきて、とうとう耐え切れなくなったので、近隣の大学病院に駆け込んだのだという。
そんなものをどうしてわざわざ呑み込んだのか、理由ははっきりしないが、この珍事を報じた「メトロ」紙2021年10月19日付によれば、外科医師団はそのスマホを男の胃の中から、無事取り出すことに成功した。
タスマニア島在住の58歳の男が動物虐待の容疑で逮捕された。
男は牧場主で、チェーンソーを使って羊の毛を巧みに刈り取る動画をネットに上げたのだが、当の羊が傷つくことは絶対ないにもかかわらず、怯え切っていたからだった。
海のギャングといえば、通例シャチを指すが、鯨と同様に哺乳類のせいか、人間はめったに襲わない。その意味ではむしろ、大ヒット映画『ジョーズ』で描かれたホオジロザメのほうが、海のギャングの名に相応しいだろう。
そのホオジロザメの遺骸が、今現在、南アフリカ共和国の沿岸に大量に漂着している。それもいつも〝まるで外科医がメスを振るったかのように〟肝臓だけが鋭利な刃物ですっぱり切り取られて消え去っているのだ。肝臓ではなく胃腸とか精巣のときもある。
南アの海洋生物学専門家たちによれば、鮫の死体に残された歯型からみて、犯人はオルカ以外には考えられないという。ちなみにオルカというのは、ラテン語で〝鯨の類い〟を意味し、通常シャチの別名とされている。
1昨年1月16日付「イフサイエンス・ドットコム」によれば、これまでシャチないしオルカがホオジロザメを襲うケースはほとんど知られていなかったし、なぜシャチ=オルカが鮫の特定の臓器だけを狙うのか理由がわからない、と専門家たちは首を傾げている。
ブラジルのメストレアルヴァロ自然保護区内で、助けを求める男の叫び声を聞きつけた通行人からの通報で、救急救助隊のヘリがいち早く現場に駆けつけた。
現場は深さ90メートルもある狭い峡谷で、高さ24メートルの断崖の割れ目に、素っ裸の若い男(19歳、匿名)が挟まって身動きがとれなくなっていた。
男は病院に緊急搬送され、擦過傷と低体温症の治療を受け、自分の氏名も住所も年齢も覚えていたが、ただ自分がなぜあんな場所にいて、しかも素っ裸だったのかはまったく思い出せなかった。
まさか何かのはずみで、自宅の寝室か浴室からでも、テレポート(瞬間移動)しただなんて?
フランスはモンペリエのワインメーカー、オリヴィエ・モロー氏は、葡萄畑を荒らして収穫を台無しにする猪どもに手を焼いて、とうとう非常手段に打って出た。
旅行者や浮浪者や放浪民たちを私有地内で自由に寝泊まりさせ、猪に敏感な犬を連れている人ほど大歓迎で優遇したのだ。
「うちの葡萄畑は村から遠く離れているので、いくら騒いでも近所迷惑にはならない」
2022年8月8日付「タイムズ」紙によれば、モロー氏は自分の名案にすこぶる満足そうだ。
「ひと晩中大騒ぎしても全然かまわんさ。野生の猪どもを怯えさせて追い払えればいいのだからね」
スイス・ザンクトガレン在住の45歳の女性アマデア・ロンギンさん(仮名)は、ついうっかりエンジンを切らず、ハンドブレーキもかけないまま、車から降りて、トランクを開けようとした。
ところが、わずかに坂道だったので、車がバックしはじめた。アマデアは慌てて抑えようとして、車に轢かれた。車は別の車にぶつかり、跳ね返って再び彼女を轢き、縁石にぶつかるとまた後戻りして3たび彼女を轢いてしまった。
2022年10月4日付「ガーディアン・ドットコム」によれば、アマデアは重傷を負ったものの、命はなんとか取り止めた。
イギリスはゲーツヘッドのチョップウェル地区を数日間逃げ回っていた1頭のワラビーが、ボランティアたちの手で捕獲され、獣医に鎮静剤を射たれた上で、カークリーホールのノーサンバランドカレッジ動物園に収容された。
2022年10月30日付「BBCニュース」によれば、近隣のどの動物園からもワラビーの失踪届けは出ておらず、本来はオーストラリアとニュージーランドにしか棲息しないこのカンガルーの小型種が何頭野生化して潜んでいるのか、専門家でも知る者はない。
会社経営者のエドガー・オソミア氏は、その日の午後、共同墓地内に愛車のテスラを乗り入れて停めると、車の衝突防止システムのドライブレコーダーを確認した。
レコーダーの画面には、車のすぐそばを多数の人間が思い思いの方角に歩いているのが映っていたが、エドガーがいくらカメラを左右にパンしてみても、画面には人影はまったく映らなかった。
後日、エドガーがその不思議な映像を動画共有SNSのTikTokに投稿したところ、多数の視聴者が「この車には〝シックスセンス〟があるらしい」とか「幽霊が見えるらしい」と騒ぎ立てた。
もっとも、2022年4月6日付のニュースサイト「デクセルト・ドットコム」によれば、一方では「レコーダーが誤作動して、立ち並ぶ墓標たちを動き回る人影と誤認しただけ」と、冷静に解釈する否定派もいる。
南山宏
作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。
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