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取材=松原タニシ 構成=高野勝久
松原タニシが人間を超えた存在を目指す「タニシ超人化計画」、第2回のテーマは、土中に自らを入定させて永遠に生きる超人、即身仏だ!
「超人」とは人を超えた存在ということだが、どうなったら人間が人間を超えたといえるだろう。もしも「死んでいるはずなのに生きている人間」がいるとしたら、それは完全に超人だといえるはずだ。
生物学的には死んでいるけれど「生きている」人間。
たとえば弘法大師。弘法大師は高野山の奥の院に今も生きていて、朝晩お食事も届けられている。なにしろ誰も弘法大師の遺体をみたものはいないのだ。
今回とりあげる超人は、そこに確実に遺体があるにもかかわらず生きている、そんな存在。
即身仏だ。
即身仏とは、生きながらにして苦しい修行を積み、自らミイラになる道を選んだ修行者のこと。この世界の人々を救うために生きた体のまま(即身)に仏になることを目指した人たちである。だからその体が生物として死んだあとも、即身仏は生き続けていることになるのだ。
今回の「松原タニシの超人化計画」は、この超人・即身仏を訪ねて東日本を歩き回った旅のレポートをお届けする。
現存する日本の即身仏は20人ほど知られているが、最も多く残されているのは山形県。東北屈指の霊場として有名な山形県の出羽三山で修行をして即身仏になる、というスタイルが主流だった時期があるため、即身仏を目指す僧侶、行者たちの多くが出羽三山を目指したのだ。
というわけで、タニシは即身仏の聖地・山形を目指して、各地の即身仏を拝観しながら南から北へと旅をした。最初にお会いするのは、現存する関東唯一の即身仏、舜義上人(しゅんぎしょうにん)だ。
ところで、即身仏は今でも信仰の対象なので写真撮影は基本的にNG。そこで今回はタニシ作画のイラストにて即身仏をご紹介しよう。
●舜義上人 茨城県桜川市・妙法寺
舜義上人の即身仏は、茨城県桜川市の妙法寺に安置されている。一発目に紹介する例からあれなのだが、舜義上人は石仏の下でミイラ化したという、即身仏としてはややイレギュラーなパターンだ。
基本的に、即身仏は「土中入定」といって、土のなかに埋めた箱に入り、そのなかで仏になる。しかし妙法寺の周辺は穴を掘れば水がでるというほど多湿な地域で、土中入定では遺体が腐ってしまうおそれがあった。即身仏が山形県に多いのには、温度や気候風土がミイラ化にちょうどいいという理由もあるのだ。
では、そこで舜義上人がどうしたかというと、大きな阿弥陀如来の石仏をつくり、台座にスペースを設けてそこに入定することにしたのだ。
写真の阿弥陀仏の下にみえる、大きな台座がそれだ。そうして上人は、弟子たちに「3年たったらこの石仏の蓋を開けてくれ」と言い残し、即身仏となった。
即身仏は入定してから1000日、およそ3年3ヶ月で完成する、という信仰があり、そのため「3年」と遺言したのだが、しかし、なんと弟子たちはその遺言を忘れて(あるいはなんらかの理由でスルーして)蓋をあけずお師匠のミイラをそのまま放置してしまうのだ。
上人のミイラが石仏のなかからとりだされたのは、なんと入定から84年も経ってからのこと。なぜ○周年などでなく84年という中途半端な数字なのかというと、84年後、上人自らが当時の寺の住職の夢枕に立ち、開封を頼んだからなのだ!
住職の夢のなかで、上人は「再びこの世に出でて衆生を救済しよう」と告げたのだという。
夢から覚めた住職、この寺で即身仏になられた方がいるという話は噂に聞いてはいたが、まさかまだそのまま中に入っていたの……と驚き、さっそく人手を集めて石仏を開けてみたところ、まさに夢と噂の通り、そこにミイラ化し、完璧な即身仏となった上人がでてきたのである。
こうして、その後は現在までお寺の本堂に安置されることになった舜義上人。実際に拝観させていただいたのが、足を組み、口を大きく開けている姿からは、何かを強く訴えかけているような迫力を感じた。
ちなみに地元の小学校には遠足で舜義上人に会いにいくという恒例行事があり、そのお姿に衝撃を受けてしまう子もいるとか、いないとか。
つづく!
松原タニシ
心理的瑕疵のある物件に住み、その生活をレポートする“事故物件住みます芸人”。死と生活が隣接しつづけることで死生観がバグっている。著書『恐い間取り』『恐い旅』『死る旅』で累計33万部突破している。
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