「戦争とオカルティズム 現人神天皇と神憑り軍人」など新刊書籍7選/ムー民のためのブックガイド
「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。
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「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。
クリス・ゴスデン 著
「魔術」とは、人類の普遍的、かつ根源的な精神的営為に他ならない
『魔術の歴史』と題された書物を評者は3冊ほど所有している。エリファス・レヴィ版、J・B・ラッセル版、そしてリチャード・キャヴェンディッシュ版である。いずれも、それぞれの視点から、魔術とその歴史を記した良書である。
そんなとき、ここに第4の『魔術の歴史』が登場した。これまでの三者とはまったく異なる内容であり、まさしく、21世紀のための魔術論ともいうべき、壮大な論述が展開される。
というのも、本書は専ら考古学や人類学、民俗学などの知見を武器に、果敢にも過去4万年に及ぶ魔術の人類史に、真っ向から切り込んでいるのだ。曰く、「魔術の理解なしには人類史を解読することは到底かなわない」。
何とも頼もしい宣言である。ここで取り扱われるのは、いわゆるオカルティズムとしての魔術ではない。著者によれば魔術とは、宗教、科学と並ぶ、人間の世界認識の3つの様式のひとつであり、この3つは「三重螺旋」として「人間の体験のさまざまな位相と共鳴している」。
つまり著者のいう「魔術」とは、単なる隠秘学の枠組をはるかに超えた、人類の普遍的、かつ根源的な精神的営為に他ならないのだ。
本書はそのような前提に基づき、世界各地、各時代の魔術を丹念に論じた後、最終的には「知覚ある宇宙」という、驚嘆の結論に到達する。
著者クリス・ゴズデンは英国の考古学者であり、オクスフォード大学ヨーロッパ考古学教授。そんな碩学が、持てる知識と情報と人脈と研究成果を、惜しげもなく盛り込んでいるものだから、その情報量たるや、まさに圧倒的である。
実は評者は職業柄、魔術とその歴史に関しても一応、人並み以上の知識を持っていると自負していた。だがその評者にして、恥ずかしながらまったく聞き覚えのない情報が目白押し。何しろ、21世紀になってから発掘された遺跡に関する情報なども普通に出てくるので、知識のアップデートにはもってこいである。
大部の著作であるが、あまりにも扱っている範囲が幅広すぎるきらいがある。できれば、各章を拡充した上で、それぞれ一冊の単行本として出せばよかったのではないか。翻訳は大変かもしれないが。
保江邦夫 著
メルマガ『ほえマガ』2021年度版をまとめた一冊
本欄の常連でもある著者の保江邦夫氏は、陰陽師の家系に生まれた理論物理学者。ノートルダム清心女子大学名誉教授にして、伯家神道の奥義「祝之神事」の継承者でもある。
量子力学の基礎方程式である、シュレーディンガー方程式を導出することのできる「Yasue方程式」の発見者として世界にその名を知られ、小惑星にまでYasueの名を冠せられるほどの偉人である。通称「神様に最も愛されている男」。
そんな保江氏の身のまわりには、連日のように「これでもかというほど奇想天外な神秘的出来事が起き続けている」。
そこで彼は、「僕の周囲に起きた摩訶不思議な出来事の数々をリアルタイムでありのままにご報告する『ほえマガ』」というメールマガジンを立ち上げた。その2020年度版をまとめたのが、前著『神様ホエさせてください』である。
本書はこれに続き、同メールマガジンの2021年度版を、成書の形にしたもの。神事の最中に降臨した神様と一体化する話、庭の芝生にUFOが着陸する話、東京に北斗七星の結界を張る話、マイアミで天使に救われる話など、不可思議な話が満載されている。そして読み進めていくうちに、「神様を引寄せる法則」がわかってくるという仕組みである。
元々がメールマガジンであるから、それぞれの話が短くまとまっており、ともかく読みやすい。「保江ワールド」への入門書として、最適な一冊。
石川雅晟 著
独自研究に基づく日ユ同祖論と日本古代史の第6弾
著者の石川雅晟氏は長年にわたり、金融や医療機器メーカーに身を置き、特に後者においては、取締役まで務めた人物。2010年に定年退任後、「歴史探偵」として生まれ変わり、専ら日ユ同祖論をベースに、知られざる日本古代史の謎の独自研究に取り組んでいる。ここ数年の間に、本欄でも『隠された「ダビデの星」 東寺曼荼羅と平城京外京』『魏志倭人伝の中のユダヤ 出雲大社に隠された「ダビデの星」』『ユダヤ系秦氏が語る邪馬台国』『ユダヤ系多氏が語る装飾古墳 描かれた△○の意味』などの著書を、ご紹介してきた。
つまり、ほぼ年に一冊のペースで、研究成果を世に問われていることになるわけで、その旺盛なエネルギーには、脱帽せざるを得ない。
本書は、そんな著者による最新作。「ユダヤシリーズ第6弾」と銘打たれ、古代の日本に渡来した越人、ユダヤ人、騎馬民族などのさまざまな活動が、事細かに跡づけられていく。そして提唱されるのが、著者独自の「騎馬・ユ支配説」である。
何でもそうなのだが、このシリーズもまた、巻数を重ねるごとに、記述も内容も、高度化・専門化・細分化していく傾向があり、まったくの初心者が、これまでの巻を飛ばしていきなり本書に取り組まれるのは、あまりおすすめしない。
まずは既刊を真摯に読み込み、「石川ワールド」の構造を十分に理解したうえで、存分に本書を堪能されるのがよろしかろう。
西田みどり 著
シャーマンの世界に光を当てる迫真のドキュメント
シャーマンとは何か。著者によれば、それは「死者や異次元存在と交信し、派手なペインティングと衣装でプージャ(治療儀式)を行う一風変った世界に生きている人」。世界には、今もこのようなシャーマンが細々と生き延び、人々の身体的・精神的・霊的な(それらは時に区別されない)問題の解決に当たっている。
本書は、ネパール、スリランカ、インドネシアに住む、6人のシャーマンを訪ね、著者が直接インタビューを敢行。知られざるシャーマンの世界に光を当てる、迫真のドキュメントである。
この21世紀においても、シャーマンの世界では死霊や精霊や悪魔が当たり前に存在し、女神は力を授けてくれる。人間が動物に変身することもあれば、またジャングルには、物理的な身体を備えた、霊的存在のようなものも棲んでいる。
このようなシャーマンたちの生々しい証言を聞けば、この世界が実際には、われわれが考えるものよりも、はるかに豊饒で重層的なものであることが、まざまざと実感できよう。
何しろ著者によれば「タイプの異なる次元がたくさんあり、それらが縦走しているのがこの世界」なのだ。
著者によれば、近年にわかに、シャーマンが注目を集めるようになったのは「これから激動の時代が始まる予兆」であるという。そんな時代を生き抜くために、われわれはどうすればいいのか。本書では、そのヒントの一端も、周到に明かされている。
澤井繁男 著
豊富な図版で解説される、魔術師・錬金術師列伝
どうも今月は、魔術書の当たり月なのか、先ほどの『魔術の歴史』よりも、はるかに正統的な魔術本が登場した。それが本書『魔術師列伝』である。
前半の「魔術師列伝」では、まずはアラビアとの接触から、ルネサンスに至るヨーロッパの思想的背景が丁寧に説き起こされた後に、ジェローラモ・カルダーノからジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ、そしてトンマーゾ・カンパネッラまで、絢爛たる「自然魔術師」たちの思想と実像が、縷々論じられる。
後半の「錬金術師列伝」では、まずは錬金術とは何かが解説され(この部分だけでも、新書一冊分くらいの高度な情報が凝縮されている)、次にパラケルススの錬金術が詳細に論じられる。その後、ニコラ・フラメルやヨハネス・トリテミウスといった有名どころが、次々と簡潔に紹介されていくのだが、その大トリを務めるのが、「最後の錬金術師」と呼ばれる、かのアイザック・ニュートン。
著者の澤井繁男氏は、イタリア・ルネサンス文学文化論を専門とする研究者で、元関西大学文学部教授。『魔術の復権』(人文書院)、『錬金術』(講談社)、『ルネサンスの知と魔術』(山川出版社)などの著書の他、ポルタ『自然魔術』の邦訳書(青土社)など、評者も愛読する魔術関係の著作も多数。まさに斯道の大先達である。心ある読者よ、ぜひ本書を実際に手に取り、著者の深遠なる学恩に浸る愉悦を体感せられよ。
秋山眞人 著
ありとあらゆる、実用的な開運テクニックが集約
「人には、生みつけられたサガ(性)がある」と著者はいう。サガとは、その人に固有の生得的な「枠組み」であり、「物質的牢獄」。「開運」とは、このサガを、想いのままに変えることに他ならない。
本書は、このサガを変えるための「いろんなコツやら、見方やら、トレーニングの仕方やら、生活改善の方法」を網羅した実用書。著者が「生涯で吐き出す基礎的強運・開運法の決定版」になるという。
仕事、お金、健康、恋愛、人間関係、生活、人生といった各項目ごとに、イメージ法、感情や時間のマネジメント、色や数、音楽の使い方、食事法から、顔相術、果てはカバラの秘儀からチャクラまで、すぐに使える、ありとあらゆる実用的な開運テクニックが、この一冊に集約されている。まさに「これで開運できなければあきらめてください」としかいいようのない、贅沢な内容だ。
著者の秋山眞人氏は、本誌でもお馴染みの日本一の超能力者。本欄でも、これまでに多数の著書を取り上げさせていただいているが、それぞれの主題の多様さ、内容の奥深さと独自の視点には、毎回驚かされる。
ご自身も、数万冊の古文書・古書を所蔵しておられるということで、そうした着実な基盤あってこその、離れ業であろう。
それにしても、秋山氏の実践しておられるという読書法が、評者とまったく同じであったのには、思わず乾いた笑いが出た。
畠田秀生 著
日本人と日本文化の根源を「聖書」に求めた研究書
本書は「蒔き餌」である、と著者はいう(「撒き餌」ではないという点に注意)。その意味は追々わかるとして、本書は、日本をこよなく愛する筋金入りのキリスト者が、日本人と日本文化の真の根源を「聖書」に求めた、異色の研究書である。
著者の畠田秀生氏は「日本とイスラエルの古代史からの歴史、伝統、風習、習慣、宗教(特に神道)に至るまで、その類似性と関連性を研鑽する」ことを目的とする「聖書と日本フォーラム」という研究団体の会長を務める牧師である。
23歳でニュージーランドに渡り、その地で「イエスが私の前に立たれ」るという体験をする。この「回心」により、敬虔なキリスト教徒となった著者は、ついには自ら牧師になることを決意する。
一神教であるキリスト教徒の中には、神道や神社、ひいては日本文化そのものに対して、嫌悪感を抱く人々も、一定数いるという。だが著者はまったくその限りではない。著者の中では、キリストへの愛と日本国への愛は、見事に融合しているのである。それはなぜか。詳しくは本書を読んでいただくしかないが、ひと言でいえば、われわれ日本人こそ「失われた十部族の〈不死鳥〉に他ならない」からである。
さて、著者のいう「蒔き餌」の意味は、おわかりになっただろうか。そして、それに惹き寄せられたあなたは、著者の思惑通りに「漁られる」ことになるのだろうか。
(2023年7月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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