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200年以上前に埋葬された男性の遺体は、大腿骨を胸の上に乗せるという奇妙な方法で埋葬されていた。吸血鬼だと疑われた末の事態だというが……!
200年以上前に亡くなった男性が、「交差した大腿骨を胸の上に乗せられた」形で埋葬されていることが明らかになった。これは、ヴァンパイアだったと思われていた彼が墓から出て来られないようにするためであると考えられる。こうした埋葬法の遺体が見つかるのはヨーロッパ大陸では多いのだが、新大陸アメリカで発見されたケースはかなり珍しい。
問題の骨が見つかったのはコネティカット州グリズウォルドという町にある墓地。状況から考えて、埋葬された遺体は一度掘り返され、特別な処置を施した後に再び埋められたと考えられる。亡くなった男性は最初ごく普通の方法で埋葬されたが、後になって何らかの理由でヴァンパイア疑惑が持ち上がり、それを懸念した住民たちが“念のため”遺体を掘り返して大腿骨を外し、それを胸の上で組んで、甦って墓から出られないようにしてから再び棺に戻した。そんなストーリーが想像できる。
加えて今回は、バージニア州の法遺伝学企業「パラボン・ナノラブ」およびアメリカ軍DNA鑑定研究所(AFDIL)による複顔作業も行われ、男性は推定55歳で黒い髪にブラウンの瞳だったことも明らかになっている。
男性の遺体は、上から見るとジョリー・ロジャー(海賊旗)のようになっていたに違いない。では、彼はなぜヴァンパイアであると思われてしまったのか。
一番可能性が高いのは、ひどい貧血あるいは呼吸器系の病気を患っていたことだ。生前あまり日の光を浴びず、常に青白い顔をしていた可能性もある。そして、ヨーロッパ大陸から移住した人たちの間で語られていたヴァンパイア伝説が悪い方向で作用した結果、こんな形になったのかもしれない。
実際、ヨーロッパ大陸から多くの移民がアメリカに渡る際、伝承や伝説に関してもそのままの形で持ち込んでいた。ヴァンパイア伝説の他にも、たとえば、ルイジアナ州を中心とする南部のフランス系移民の間では「ルーガルー」という人狼の伝説が広く信じられていたようだ。南部から広がった噂が東部から中西部にまで及んだ結果、ライカンスロープ(=人狼)に関する伝承も語られるようになった。
いずれにしても、1700年代のアメリカでヴァンパイアが恐れられていたという事実に加え、自分たちの身に降りかかるかもしれない災厄を逃れるために、ごく普通の人々が想像を絶する恐ろしい儀式を行っていたことは驚きだ。
ちなみに、1800年代のヨーロッパではいわゆるヴァンパイア・ハンターと呼ばれる人々が活躍していたが、映画作品のように夜活発になるヴァンパイアを狩っていたわけではなく、怪しいと思われる故人の墓を掘り起こして、生き返れない状態にするというのが主な仕事の内容だったようだ。
昨年の9月には、ポーランド南東部のピエン村にある墓地で、首部分に長い鎌の刃が当てられた状態の女性の遺体が見つかった。これもヴァンパイアを蘇らせないための措置だったようだ。ちなみに、この女性は前歯の間に大きな隙間があり、それが角度によっては牙のように見えたためヴァンパイアであると決めつけられてしまったと考えられる。
今回、現代のテクノロジーは200年前に亡くなり、墓標もないまま埋葬されていた“みなしヴァンパイア”の正体を明らかにした。抽出したDNAデータにより、この骨がジョン・バーバーという貧しい農民のものであることもわかった。複顔に関しては法医学の分野でもテクノロジーが進んでおり、それほど難しいものではなかったという。検証結果には歴史学、民俗学、社会学をはじめとする多くの分野の専門家が興味を寄せている。これから先、同分野において実現する可能性が高い技術のベンチマーク的な性質のものとなりそうだ。
【参考】
https://www.livescience.com/vampire-burial-dna-connecticut
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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