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地球上の生命の“原材料”は宇宙にも揃っていたことが日本発の画期的な研究で証明されている。我々を含む地球上の生命は宇宙からやってきたという“パンスペルミア説”の説得力が急激に増しているのだ――。
一見、何も無いように見える宇宙空間だが、星と星の間にはガス(星間ガス)と氷微粒子(星間塵)からなる星間分子雲が存在している。
星間分子雲は-263℃という極低温の環境にもかかわらず、活発な化学反応の場であることで知られており、これまでの研究で紫外線や宇宙線という宇宙における普遍的なエネルギー源を用いた化学反応が検証され、タンパク質の主成分であるアミノ酸など、生体関連分子が生成可能であることがわかってきた。
さらに生命の遺伝情報を担う核酸(DNAとRNA)の構成成分の2種(糖、リン酸)が星間分子雲で生成できることが確認されたのだが、生命を構成するもう1つの成分である核酸塩基の全般についても、そうした宇宙の極限環境で生成可能かどうかはこれまで実証されていなかった。
核酸塩基はウラシル、シトシン、チミン、アデニン、グアニンで構成されるらせん構造であり、雑多な順列で結合し、人間を含む地球上の生命の“ソースコード”が書かれている。アデニンとグアニンは約50年前に隕石から発見されたが、これらの地球外の物体にシトシンとチミンまで存在するかどうかは、これまでよくわかっていなかったのだ。
そこで北海道大学低温科学研究所をはじめとする研究チームは、独自に開発した高精度な核酸塩基分析手法を駆使し、マーチソン隕石やタギッシュレイク隕石など3種の炭素質隕石のサンプルから、星間分子雲における氷微粒子の光化学反応を再現して分析した。
その結果、得られた生成物から初めて核酸塩基を検出することに成功し、核酸の構成成分のすべて(ウラシル、シトシン、チミン、アデニン、グアニン)が星間分子雲で生成可能であることが実証されたのである。
「この研究は、隕石の核酸塩基の多様性が、初期の地球でDNAとRNAの構成要素として機能する可能性があることを示しています」と研究チームは説明している。
今回の研究は隕石に関する多くの関連研究を踏襲するものであり、地球上に到達した地球外由来のタンパク質、窒素、水、有機化合物、およびその他の生命にとって重要な成分が、地球上の生命にどのような影響を及ぼしたのかという根源的な問題を紐解くカギとなることが期待されているのだ。
それは「パンスペルミア説」に改めてスポットライトが当たることであり、地球上の生命の起源を宇宙に求める考え方がこれまで以上に支持を集めることになるのかもしれない。
パンスペルミア説で想定されているのは、単独の惑星への影響のみならず、惑星への衝突で宇宙空間に放出された隕石によって、まるでヒッチハイクするかのように生命の構成要素となる成分が惑星間を点々としながら広まるケースも考えられている。たとえば、地球の生命はその昔に火星を中継してやって来た可能性も残されているのだ。
言い換えれば、今回の新しい発見は地球人としての我々自身のルーツを解明するのに役立つだけでなく、地球外生命体の探求にも重要な役割を担うことになる。2020年のJAXAの「はやぶさ2」に続き、NASAの「オサイリス・レックス」のサンプルリターンミッションは今年に予定されており、そのサンプルから同様の成分が検出されるのかどうかについても期待は膨らむ。
地球上の人類だけが兄弟なのではなく、「宇宙人は皆兄弟」と言える日が来るのは、そう遠い先のことではないのかもしれない。
【参考】
https://www.vice.com/en/article/88gpk3/all-four-building-blocks-of-dna-have-been-found-in-meteorites
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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