われわれが宇宙と共振し、受け取った信号を解読するプロセスこそが「意識」を生んでいた!?

文=仲田しんじ

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    単細胞生物や植物にも意識があるのかもしれない――。あらゆる生命に意識が存在するという理論が新たな進展を遂げている。

    単細胞生物や植物にも意識がある

     われわれの意識が量子現象である可能性を示唆する研究成果はこれまでも紹介してきたが、残念ながら、今のところそれを直接証明するエビデンスはない。この“意識のハードプロブレム”を難問にしているの一つの原因は、意識が人間に特有のものであるという思い込みかもしれない。では、意識は特別な現象ではなく、生命に普遍的に生じていると考えてみるとどうなるのか。

     生命と知覚は基本的に同じものであるとする「意識の細胞基盤(The Cellular Basis of Consciousness:CBC)」と呼ばれる理論が1990年代に登場している。この理論によれば、「すべての生物は意識を持ち、自己認識を持ち、価値付けされた感覚的および知覚的経験を持つ」というのだ。

     2023年12月に学術誌「EMBO Reports」に掲載された研究によれば、単細胞原核生物でさえ今後の出来事を予測し、機能的な社会集団を形成し、さらにその中で協力と競争の両方を示し、そして興味深いことに、コロニー内の一部の細胞が、苦境にあるほかの細胞の生命機能を支えるために自らを危険にさらすという、原始的な利他主義の行動を示すことが報告されている。

    ※モジホコリ(Physarum polycephalum) 画像は「Wikimedia Commons」より

     たとえば、単細胞真核生物である粘菌の一種「モジホコリ(学名:Physarum polycephalum)」は、数学の問題を解いたり、迷路から脱出したりすることができるという。

     同様に、集団行動を起こすために十分な数の細菌が存在することを感知できる細菌もいる。海洋性発光細菌は発光を促す分子を放出するが、それは細菌の個体密度が一定のレベルに達した場合に限られる。米プリンストン大学の分子生物学者ボニー・リン・バスラー氏は、細菌がこのように行動する仕組みは「集団で会話したり、数を数えたり、作業を実行したりすること」と相違ないと説明する。

    ※米海軍艦から撮影された海洋性発光細菌 画像は「Wikimedia Commons」より

     さらに植物神経生物学者のステファノ・マンクーゾ氏は、植物は根の先端で環境を感知するなど20以上の感覚をもっており、それはもはや“知性”と呼べるものだと指摘する。実際、ハエトリグサのような植物も麻酔に対して人間と同じように反応することがわかっているのだ。また、人間と同じように植物にも素早い判断を下す無意識の心と、よりゆっくりとした判断を下す意識の心という、「2つの心」がある可能性が高いという。

     問題は、これらの単細胞生物や植物の意識は、人間の意識と違って単なる反応や直感のように思える点だが、いずれにしても数々の研究によって意識が人間の特権であるという認識は大きく揺らぎつつあるのだ。

    脳は宇宙と共振している

     別のアプローチとしては、「電磁気」から意識の謎に迫ろうとする研究もある。この電磁気は、われわれの存在をはるかに超えて広がっており、地球全体が巨大な電磁気システムの一部とされる。

     地表と上層大気が約7.83Hzの安定した周波数で振動している「シューマン共振」。そのエネルギー源は雷の放電や太陽風による電離層の震動だといわれる。“地球の鼓動”とも呼ばれるシューマン共振について、その周波数帯は人間の脳波に近く、人体も同様に共鳴しているとの説もあるのだ。

     伊トリノ工科大学のマルコ・カヴァリア氏やトマソ・フィロー氏は、電磁エネルギーが人間の脳とどのように相互作用するか解明することに取り組んできた。

     脳の約75%は水分だが、水には極性があり、イオンを運び、微弱な電磁信号にも反応することができる。そのため、脳の細胞膜やタンパク質などの近くに形成される水分子(脳脊髄液など)は電池にもたとえられる。これらを踏まえれば、シューマン共振をはじめほとんどの電磁エネルギー波が脳に何らかの影響を与えていることは間違いなく、われわれは“地球放送局”の電波を受信しているラジオのような存在だと考えることもできる。

     しかし、ラジオが受信した電波をそのまま音声として再生する装置である一方、人間の脳は受け取った情報を内部で処理している。そして、この処理プロセスこそが意識かもしれないというのだ。

    Colin BehrensによるPixabayからの画像

    「生命システムは静的なものではないのです。それは継続的なプロセスであり、電気活動、化学物質の交換、体液の移動、そして絶えず変化する膜の状態が連綿と続いています。脳は常に体内や環境からの信号を統合することで、刻々と調整を行っているのです」(フィロー氏)

    「私たちは、宇宙に存在する信号を解読する生物学的インターフェースにすぎません」(カヴァリア氏)

     つまり、脳とは絶えず情報を処理して環境に適応しながら安定性を追求しているシステムであり、このプロセスこそが意識そのものであるというわけだ。

     依然として謎に包まれた意識の問題だが、さまざまなアプローチからの解明の糸口が模索されているのは興味深い限りである。今後の研究の進展にも期待したい。

    【参考】
    https://www.popularmechanics.com/science/a70702319/consciousness-beyond-humans/
    https://www.popularmechanics.com/science/a70396948/electromagnetic-fields-membranes-consciousness/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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