ネッシーの正体はプレシオサウルスでも巨大ウナギでもない!? 囁かれる衝撃のUMA最新理論/中沢健

文=中沢健

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    UMAの代表格として世界的な知名度を誇るネッシー。果たしてその正体は何か。作家・中沢健が今、改めて過去の情報を整理しつつ、新しい可能性を提唱する!(第1回/全3回)

    1977年5月21日、アンソニー・シールズがネス湖で撮影したネッシー。首から頭部にかけてのリアルな様子は一躍話題となったが、真贋論争の標的にもされた。

    ネス湖の怪物ネッシーを再考する

     UMAの中でも最も知名度が高い存在といえば、やはり「ネッシー」である。

     ネッシーに関する最古の記録(目撃情報)が、いつ頃のものであったのかは議論が分かれるところであるのだが、1930年代には現代の我々がイメージするような「長い首を持った巨大な未確認生物」の目撃談は語られており、写真や映像も撮影されていた。

     それ以前にもネス湖で巨大な生物を目撃したという話自体はあるが、今日の我々が連想するような長い首を持った生物ではない。

     それから90年以上もの時が経ったが、今でもネッシーは人々から関心を集め続けている。

     筆者は5年前にネス湖を訪れたことがある。空港や宿泊したホテルでも一切見かけることが無かった日本語を、「ネス湖エキシビジョンセンター(ネッシーについての記録が見られる資料館)」で目にしたときには非常に驚いた。もちろん、日本語だけでなく、様々な国の言葉でネッシーについて案内していた。ネス湖周辺の人々は、世界中から人々がやって来ることを、国際空港以上に意識しているのである。

    ネス湖は氷河で削られた峡谷にできた湖で、河川から流れ込む泥炭の影響で黒く濁り、透明度はきわめて低い。

     まさに、ネッシーとは全人類にとって巨大なロマンなのだ。それだけに、「ネッシーの正体」に関しては実に多くの仮説が唱えられてきた。 筆者もすべての仮説を把握できているわけではないが、「ネッシー=〇〇○説」の数は100を超えるのではないだろうか?

     今回は、メジャーな仮説から、あまり知られていない仮説までを幅広く振り返ってみることで、改めてその正体とは何なのか考えてみたい。

    プレシオサウルス説は間違いなのか?

     特に知名度の高い説が、恐竜と同じ中生代に海で生息していた首長竜(恐竜とは別の種類の生物である)の生き残り説だ。

     世に出回るネッシーのイラストや商品なども、その大半がプレシオサウルスをモチーフに描かれている。

     ネッシーがここまで世界中から多くの注目を集めるようになったのも、「首長竜が現代に生き残っているかも知れない」という仮説が人々の心を惹きつけたからであることは間違いない。

     筆者も中学生の頃までは、ネッシー=プレシオサウルスという考えに疑いを持ったことは無かった。

    プレシオサウルス 画像は「Wikipedia」より引用

     だが、残念なことに、ネッシーが首長竜であると考えるにはいくつもの問題がある。

     例えば、ネス湖周辺は約11,000年前まで氷河に覆われていたことが分かっている。しかし、ネス湖ができたのはその氷河が溶けてからなのである。

     恐竜や首長竜が滅びたのは約6550万年前と言われているので、古代生物が生き残っていたと考えるには、ネス湖は新し過ぎるのだ。

     しかし、これに関しては、ネス湖ができた後にネッシーが海から移動して来たという説もあるし、氷の中で冷凍冬眠状態になっていた首長竜が目覚めたと考える人もいる。

     ただし、プレシオサウルスが別の場所からやって来たのだとしても、問題は残る。最大の問題は、首長竜は爬虫類であり、肺呼吸であるということだ。

     もしもプレシオサウルスがネス湖に生息している場合は、呼吸のために水面から頭部を出している姿がもっと目撃されなければおかしいのだ。

     だが、ネッシーが湖面に姿を現すことはそう頻繁にあるわけではない。姿を現したとしても、背中のコブのような部分の目撃が圧倒的に多い。

    1951年7月14日、ラクラン・スチュアートが撮影したネッシーの3つのコブ。のちに、撮影した本人が捏造写真だと認めたという。

     どうやらネッシーは肺呼吸をしている生物ではなさそうだ。

     そもそも、ネッシーがプレシオサウルスの生き残りだと言われているのは、1930年代の「発見」当時からのこと。湖面から長い首と頭を出した姿を何度か撮影され、その見た目が似ていたからである。

     ところが90年前と違って、現代の古生物学では、首長竜はキリンのように垂直に首をまっすぐ伸ばすようなことはできなかったと考えられているのだ。

     皮肉なことに、プレシオサウルス説の根拠となった写真や目撃談が、最新の古生物学で考えた場合は、否定する根拠になっているのである。

    巨大ウナギ説についての誤解

    「え? ネッシーの正体は巨大ウナギだと確定したんでしょう?」

     昨今ネッシーについて話していると、このようなことを言われることが多くなった。

     2018年にオタゴ大学のニール・ゲメル教授がネス湖に生息する動植物を調べるために、湖の様々な場所から250のサンプルを採取してDNAを分析した。

    画像は「University of Otago」より引用

     この中に未知の水棲爬虫類のDNAがあれば、プレシオサウルスがネス湖で生きている可能性もあると考えたのだ。しかし、この調査では水棲爬虫類らしきDNAは見つからなかった。

     だが、調査を終えたニール・ゲメル教授は、ウナギのDNAが大量に発見されたことに注目。

     記者会見の席で「ネッシーの正体は、大ウナギかもしれない」とコメントをした。

     このニュースは世界で大々的に報道された。日本のテレビ番組や新聞でも「ネッシーは大ウナギだった!」と、まるでそれが確定した真実のように伝えられた。

     このニュースを知った方々の反応は、残念だと落胆しているものが多かった。やはり、ネッシーの正体は首長竜であってほしかったと望んでいる人が多いからだ。

     だが、筆者はこのニュースを最初に聞いたときはむしろ喜んでいた。

     というのも、ネッシーに関する否定的な意見としては、プレシオサウルスが生き残っているかどうか以前の問題として、「そもそもネス湖は10メートル近い巨大な生物が生きていける環境ではない」という見解が有力だったのだ。巨大生物が生きていくには餌となるものが足りな過ぎるのである。

     だから、ウナギとはいえ、ネス湖に巨大生物がいるらしいという見解が正式に発表されたことは、むしろ大きな前進であると筆者は考えたのである。

    画像は「University of Otago」より引用

     ところが、である。発言の一部が切り抜かれたニュースではなく、ニール・ゲメル教授が会見で語った全内容をチェックしてみると、そもそも「大ウナギがいるかもしれない」というのは、ジョークとしての発言であったことが分かった。

     DNA調査ではネス湖にウナギが大量にいることまでは分かっても、それがネッシーサイズの巨大ウナギであるかどうかまではわからないのだ。

    大型両生類説に説得力!?

     ネッシーが首長竜……つまり爬虫類だとしたら、呼吸のために何度も水中から顔を出さないとならない。それなのに頭部の目撃が少ないのはおかしいという視点から、大型両生類説を主張する研究者もいる。

     提唱したのはUMA研究の第一人者といわれたシカゴ大学生物学教授のロイ・マッカル博士。

     マッカル博士がネッシーの正体候補として考えたのは、数億年前に生息していた大型両生類の「エンボロメリ」と呼ばれる種類だ。

    エンボロメリ 画像は「Wikipedia」より引用

     水中で生息していた大型の両生類であり、現代人の目で見るとワニに近い外見をしているが、爬虫類ではない。

     ネッシーの目撃談は爬虫類を思わせるものが多いが、爬虫類に近い見た目の大型両生類が生き残っていたら、という仮説には説得力もある。

    その他の大型生物説も…!

     ネッシーの正体ではないかと名を挙げられた生物は、他にも無数に存在する。

     チョウザメ説、古代の無脊椎生物(タリモンストラム・グレガリウム)の生き残り説、クジラ説、巨大な亀説、首の長い新種アザラシ説……他にも、まだまだある。

     古代生物の生き残りから既存の生物、未発見の新種の生物に至るまで様々な可能性が考えられているが、実はネッシーの正体候補として、地球上の生物以外を挙げる人たちも大勢いるのだ。

     次回は、そんな奇説の数々についてご紹介したい。

    中沢健

    作家、UMA研究家。UMAのお土産を集めるのが最大の趣味で、町興しや観光に利用されているUMAが特に好き。

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