実体ある人工知能「フィジカルAI」がもたらす革命的変化とは? 人間の思考や感性もAIが再現する近未来へ
これまで人間との接点がディスプレイとキーボードだけだった生成AIに新たな動きが起きている。人間との共存に最適化させ、現実世界に降りてきた「フィジカルAI」はどのように私たちの生活を変えるのか!?
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AIブームで盛り上がるシリコンバレーの頭脳集団に、いったいなにが起きているのか!? 6人が死亡した一連の犯行に関与しているカルトグループ「ジジアン」とは?
世界中から優秀な頭脳が集まる米カリフォルニア州サンフランシスコのシリコンバレーでは、ベイエリアを中心に、巨大IT企業に勤める従業員らによるテクノロジー・コミュニティが形成されている。
このコミュニティが標榜するのは、もちろんテクノロジー至上主義と徹底した合理主義だ。全人類が認知バイアスを克服できる明確な思考法を開発し、より合理的になることで、来たるべきAIのシンギュラリティがもたらしかねない人類滅亡を回避することが大義名分の1つとされる。
2019年、同州オクシデンタルで合理主義団体が主催するイベントの最中、会場の外で抗議活動を行っていた若者数名が逮捕された。若者グループの中心人物はジズ・ラソタという当時29歳のトランスジェンダー女性で、後に一連の凶行に及ぶカルト教団「ジジアン(Zizian)」のリーダー格であった。
過激化・カルト化した合理主義者コミュニティの分派に位置づけられる「ジジアン」のイデオロギーは、アナキズム、ビーガニズム、トランスヒューマニズム、合理主義と効果的利他主義(EA)の急進的解釈を組み合わせたものと考えられている。メンバーの多くはトランスジェンダーまたはノンバイナリーであり、彼らは「ビーガン・アナルコ・トランスヒューマニスト」を自称するとともに、人々を社会的束縛から解放し、AIという脅威から生命を保護することを使命としている。
また「ジジアン」は、右脳と左脳が異なる性別や相反する考えをもったり、片半球睡眠(UHS)が可能だと主張している。ちなみに、2019年にメンバーの1人が自ら命を絶ったが、ジズはブログを更新し、「UHSを正しく行わなかったからだ」と言い捨てた。
なお、「ジジアン」の教団名はグループ自らによる命名ではなく、合理主義者たちのコミュニティで便宜的につけられた呼称がそのまま定着したものであり、グループ自体も高度に組織化された集団というわけでもないようだ。とはいえ、現地大手メディアは「ジジアン」をれっきとした終末カルトの一種、またはそのような集団と認定している。
では、「ジジアン」を率いるジズは、どのような経緯でこの現代ならではと言えるカルト教団を作り上げたのだろうか?
ジズのブログによると、彼女は2013年にアラスカ大学フェアバンクス校でコンピューターサイエンスの学位を取得。その3年後にサンフランシスコ地域に引っ越すと、NASAでの短期インターンシップなどを経て合理主義者たちと交流するようになったという。
その後、徐々に独自の思想を深めていった彼女は合理主義者のコミュニティに幻滅し、決別。しかしジズの周囲には、彼女に賛同する一部の合理主義者たちが集まりはじめ、グループを形成するとともに過激化。警察や治安部隊とも対立し、数々のトラブルを起こすようになった。
すると、ジズらは米国内各地を転々とする旅に出る。数年間にわたり、一時はスクラップに近いタグボートで水上生活したり、車中泊や野外キャンプなどを行っていたようだ。
そして2022年、ジズが法廷審問に出廷しなかったために逮捕状が発行された。ところが彼女の弁護士は、「ジズはサンフランシスコ湾岸地域でのボート事故で死亡した」と発表。実際にアラスカの新聞には死亡記事まで掲載されているのだが……全ては嘘だった。ジズはまだ生きていたのだ。
ジズはこの時、サンフランシスコ北部のヴァレーホにいた。カーティス・リンド氏が所有する土地にバンやトラックを停め、メンバーとともに暮らしていたのだ。
しかし、コロナ禍をきっかけに「ジジアン」は家賃(駐車代)の支払いを拒否しており、不法占拠の状態が続いていた。そして業を煮やしたリンド氏は、ついに彼らを立ち退かせるために訴訟を起こすことを決めたのだった。
これを境にリンド氏と「ジジアン」との対立は決定的となり、次第に争いはエスカレート。2022年11月、ついに両者は武力衝突に至る。リンド氏は襲撃され、50か所以上も刺されたうえに片目を失明する が一命をとりとめた。そして、リンド氏の発砲により「ジジアン」のメンバーである元Google社員、エマ・ボルハニアンが死亡した。警察は後にこれは正当防衛であると断定している。
この事件で2人のメンバー、アレクサンダー・リーサムとマクシミリアン・スナイダーが逮捕・起訴されたが、ジズの罪状は問われていない。
しかし事件から2年以上が過ぎた2025年1月17日、リンド氏は自宅の門付近で喉を切り裂かれて殺害された。警察はメンバーの1人、マクシミリアン・スナイダーを殺人罪で告発。スナイダーは、リンド氏の殺害について殺人未遂裁判で証言するのを阻止するためだったと供述している。
なお、2023年1月には「ジジアン」のメンバーであるミシェル・ザイコの両親が殺害されているのだが、 ミシェルは警察に一時的に拘留されたものの、罪を問われていない。
カルトグループの犯行はさらに続く。前述のリンド氏が殺害されたわずか3日後の2025年1月20日、バーモント州のカナダ国境付近で、「ジジアン」の2人のメンバーであるテレサ・ヤングブラットとフェリックス・バウクホルトは、国境警備隊のデビッド・マランド捜査官に呼び止められた。
するとその直後、「ジジアン」側が発砲したことで銃撃戦に発展。ドイツ国籍のバウクホルトと、マランド捜査官が死亡した。ヤングブラットは負傷したが生き延び、逮捕されている。
なお、この事件の時にマランド捜査官殺害に使用された銃は、前述のミシェル・ザイコ容疑者が購入したものだと後に警察が発表している。
この時点でジズは幾多の法廷に出廷しなかったとして指名手配されていたのだが、2025年2月16日にミシェル・ザイコ、ダニエル・ブランクとともにメリーランド州で逮捕された。
警察の報告によると、ワシントンD.C.の北西約260キロに位置するフロストバーグの住民が、自分の土地で1か月間キャンプをしたいと申し出た3人の不審人物がいると警察に通報したことが逮捕に繋がったという。
各地で凶悪犯罪を繰り返してきた「ジジアン」。シリコンバレーの若き英才たちがカルト化し、奇妙な主張を掲げて引き起こした一連の凶行は、米国社会に多大な衝撃をもたらしている。現在も捜査は続いており、公判で全ての真実が判明するのはまだまだ先のことになりそうだ。
【参考】
https://www.rollingstone.com/culture/culture-features/ziz-lasota-zizians-ai-cult-1235468289/
https://www.bbc.com/news/articles/cy83958r2d0o
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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