逆説の未来人ジョン・タイター大予言/MUTube&特集紹介  2025年11月号

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    最新「アトラクターフィールド理論」が解き明かすタイムトラベルの真実。この記事を三上編集長がMUTubeで解説。

    ジョン・タイターとIBM5100

     インターネット上でもっとも有名な「未来人」といったとき、本誌読者ならだれもが真っ先にその名を出すであろう人物がいる。
     ジョン・タイターだ。
     じつは今年は、彼が「タイムトラベラー0」としてアメリカのネット掲示板に書き込みを始めてから、ちょうど25周年にあたる。四半世紀もすぎたわけだが、彼をテーマにしたYouTube上の動画は跡を絶たず、しかも彼以は定期的に未来人を名乗る人物がネットに登場するようになった。
     これほどまでに彼が有名になったのは、提示した「予言」が当たったからではない。現代人では知り得ないはずの情報を公表したからなのだ。そのひとつが、「IBM5100」というコンピューターに関する秘密である。
     冷戦時代のことだ。
     他国の軍事機密・政治機密に関するコンピュータープログラムを分析するために、一部の型番のコンピューター(IBM5100)にだけ、極秘裏りにある
    機能が仕込まれていた。それは、あらゆるプログラムを読みこみ、ベーシックインカムでそのプログラムを完全に再現する機能だった。つまりIBM5100が使われていれば、世界のどこの国の機密プログラムでも自由に検証可能だったのだ。
     ジョン・タイターはこのIBM5100の機能を正確に知っていた。その情報をもたらしたこと──それこそが彼が、ほかの「自称未来人」と決定的に異なる点だったのだ。
     IBMは当初、その機能を否定した。ところがいくつものエミュレーターによって成功例が報告されたことで──目的について明言は避けたが──その存在を認め、数年後にはパソコン事業から撤退までしている。陰謀論者たちの間では、それ以上の情報が出てしまう前にパソコン事業を解体し、資料をすべて破棄したのではないかと噂されたのだ。

    未来人が語った暗黒な世界線

     ジョン・タイターはこうしたテクノロジーだけでなく、物理学や地政学においても、専門家でさえ知り得ない情報を語っていた。しかも彼が去ってから数年後、発言内容が証明されるということが繰り返されたのだ。
     もちろんこの手の話に、懐疑論はつきものである。
     しっかりと調べ、きちんと設定を作ってさえいれば、彼と同じようなことはできたと主張する者も少なくはない。
     だが、ジョン・タイターという存在に、否定派であれ肯定派であれ、人を惹きつける魅力があったことは事実だ。日本のアニメやゲームを見ても、多くの作品に彼が語った時空間理論、つまり「アトラクターフィールドとダイバージェンス」「世界線」という設定が用いられるようになったことからもよくわかる。
     懐疑論者のなかには、巨額の費用を投じて複数の探偵を雇い、ジョン・タイターの正体を探る者まで登場した。
     今では違法になっている方法でIPアドレスを取得し、そのアクセスポイントの近くを片っ端から捜索するという手法が用いられたが、それでもジョン・タイターが書きこみを行っていた地域の割りだしはできなかった。
     というのも彼は、当時としては画期的なVPIシステムを使用しており、ネット用語でいう「踏み台」として使用されたITまでしか辿ることができなかったのだ。この時点でただの愉快犯説は消えていくことになった。
     そのころIT業界をけん引していたのは、いまでは「氷河期世代」と呼ばれる若者たちだった。彼らはほぼ例外なくジョン・タイターの資料を読み、思い思いの方向性で明るい未来に思いを馳せていた。
     2000年代はまだ、「未来」という言葉が希望とともに語られていた。一方、ジョン・タイターが語る未来は戦争と分断、管理というディストピアそのものだった。それでも彼らはそれを完全なファンタジー、他人事としてとらえることができた。
     ところが四半世紀が過ぎた今、ジョン・タイターの予言は別な意味合いにおいて再評価されている。
    「戦争と暴力で持たざる者が一攫千金できるかもしれない」という、持たざるものにとってのユートピアがやってくる、という文脈においてである。
     もちろん、ジョン・タイターにとって本意ではないだろう。だからこそいま、改めてジョン・タイター予言を整理し、本物の彼の言葉を検証する必要があると筆者は考える。
     それによって、彼が何をしたかったのかが、浮き彫りになってくるはずだからだ。そしてそれは、われわれの想像より、より恐ろしい未来になるかもしれない……。

    (文=嵩夜ゆう イラストレーション=久保田晃司)

    続きは本誌(電子版)で。

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    webムー編集部

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