UFOアブダクション「トラヴィス・ウォルトン事件」はデマだった!? 約50年ぶりの新証言で当時者の見解が分裂する
UFOに遭遇し、アブダクションされた男を複数人が目撃していた……あのUFO事件はデマだった? 新証言に揺れる真相とは?
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「妻がUFOにさらわれた!」ーー衝撃の体験談を聞いたというUFO研究家が残した謎の事件。しかし、そこには幾重もの疑惑があって……。
「アブダクション」という言葉を聞いたことがあるだろう。誘拐や拉致を意味する言葉だが、オカルト方面では主に宇宙人による誘拐のことを指し、UFOに連れ去られ人体実験を受けたり、エイリアンの子供を妊娠させられたという体験を持つものを「アブダクティー」と呼ぶ。
最も有名なアブダクション事件はやはりベティとバーニーのヒル夫妻の誘拐事件だろう。1961年9月19日の夜、アメリカのニューハンプシャー州をドライブ中だった2人は奇妙な光を目撃し、後に記憶を失っていることに気がつく。そして退行催眠によって、夫妻は宇宙人に誘拐され、検査を受けたことを思い出した。UFOの歴史において最重要とされる事件の一つである。
都市伝説的に語り継がれる話の中には、UFOや宇宙人にまつわるものも多い。
今回、奇妙ながら信憑性を感じさせ、意外な奥深さを見せる一つのアブダクション話を紹介したい。通称『トラッカーズ・ワイフ (The Trucker’s Wife) 』。細々と海外のネット上をたゆたうアーバンフォークロアだ。
事件が起きたのは2012年とされる。UFO研究家のスタン・ヘルナンデスがラスベガスで開催されたUFOにまつわる会議に参加した際、バルト海UFO調査チームのメンバーだったラッセル・テトラウルトという人物とホテルのロビーで話をしていた。そのとき、彼らをじっと見つめる奇妙な男の存在に気づいた。その奇妙な男はヘルナンデスに近づき、名前はスコット・マレーで48歳の長距離トラックドライバーだと語った。そして彼は涙ながらに自分とその妻に起きた悲劇について語りだしたのだという。
マレーには妻のエリザベスと3人の子供がいた。子供は結婚して全員が家を出ており、事件当時は妻とミシガン州で2人暮らしだったという。25年のキャリアを持つ長距離トラックドライバーだったマレーは、それを天職だと考えていた。
ある日、彼の仕事中に携帯電話が鳴った。それはパニック状態の妻からで、彼女は薬を盛られ、レイプされたかもしれないと強くマレーに訴えた。マレーはすぐにUターンして家に戻ったが、エリザベスはひどく取り乱したままだった。マレーは彼女を救急外来に連れて行ったが、レイプの痕跡は見つからなかった。だが、右肩に奇妙な火傷跡が残っており、エリザベスはその傷について説明ができなかったという。
マレーはエリザベスが悪夢を見ただけだろうと考えていた。
だが翌朝、庭の草刈りをしていると、そこには説明できない奇妙な4つの円形の焦げ跡が見かった。また、庭木や木柵にも焦げ目が残っていた。
妻エリザベスの右肩の火傷と、庭に焦げた跡。これらはいったい?
訝しんだマレーは彼女に退行催眠を受けさせた。するとエリザベスはUFOに連れて行かれた記憶を思い出し、語り始めた。彼女は庭でUFOにさらわれ、強引に身体検査をされていたというのだ。
エリザベスは精神を病んでいた。マレーはしばらく仕事を休み、エリザベスと共に過ごすことにしたが、いつまでも休むわけにはいかなかった。彼が仕事に戻ると決めた時、エリザベスは強く拒んだという。マレーは妻に護身用の銃を持たせ、仕事に復帰した。
その週、彼が家に戻ると、妻は死んでいた。拳銃自殺をしていたのだ。
マレーは庭の草を地元にある大学に送り、調査を依頼した。草からは放射線が検出されたが、後に大学はそれを翻したという。話を聞いたヘルナンデスが大学に直接電話で問い合わせたが、大学側はそのような話は知らないと主張した。
マレーはヘルナンデスに、この話を世間に広めて欲しいと語った。彼は妻がなぜ亡くなったのかという答えを、今も探し求めているのだ。
悲しい話である。理不尽で、マレーの立場であれば涙の理由もさもありなんである。
だがはたして、エリザベスは本当にアブダクションの被害者だったのだろうか?
マレーが庭で見つけた焦げた草や木は、本当にUFOが原因だったのだろうか?
私はできる限りスコット・マレーとエリザベスの存在を追った。当時のミシガンで発行されていた地元新聞をあたり、エリザベスという女性の死亡記事を探した。また、墓地の検索サイトでエリザベス・マレーという人物を片っ端から調べた。
結果は徒労に終わり、完全に該当する人物を見つけることはできなかった。
本当にUFOによるアブダクションがあったのか、妻エリザベスが何を体験し、どう語ったのか、スコット・マレーが語り、訴えることは事実に基づくのか。疑問は残るが、どこか現実味を感じる話ではある。
個人的な解釈だが、エリザベスは自分が宇宙人にアブダクションされたとは思っていなかったのではないかと、感じるのだ。
もしやこれは、子供たちは家を出て自立し、旦那は仕事で留守がちという中で、孤独を募らせた女性が起こした悲しい事件だったのではないか? エリザベスは、単にマレーの気を引きたかっただけなのではないだろうか?
この話は、ともすれば仕事に執着し、家庭を顧みない男性への皮肉が込められたフォークロアなのかもしれない、と。このアブダクション物語が作り話であれ、なかなか良くできたものだと思う。
なお私が調べた限り、この物語の初出は『リングサイド・リポート』なるボクシングのニュースサイトであった。このサイトは現在、ボクシング以外の映画や政治についての記事も多く取り扱っている。
そして私が知る限り、スタン・ヘルナンデスなるUFO研究家は、このサイト以外では殆ど登場しないようだ。さらに調べると、スタン・ヘルナンデスという人物はおそらく、映画プロデューサーのジェノ・マクガヒーの変名である可能性が出てきた。マクガヒーはB級ホラー映画を多く撮ってきた人物だ。彼はUFOへの造詣が深く、そしてボクシングファンでリングサイド・リポートの関係者でもあった (余談だがスコット・マレーという同名のボクシングプロモーターも存在する。何らかの関係があるのかも知れない) 。
この話が全て、映画人マクガヒーの作り話である……のかどうかは分からない。だがしかし、この『トラッカーズ・ワイフ』なる短い都市伝説は、映画のプロットと考えれば申し分ないように思える。もし作り話であるならば、彼の才能を称えるべきだろう。
そして、最後にこの話が真実を含んでいる可能性にも触れておきたい。
私は調査の段階で、ある団体に所属するスコット・マレーという同名の元トラックドライバーを見つけることが出来た。彼の年齢や経歴などは話の中に出てくるスコット・マレーと矛盾はしない。だが彼が事件の当人なのか、無関係であるかは、現時点では断言は出来ない。
真実はすぐそこにあるのだが、捕まえようとすれば逃げてしまう。
どこまでが本当で、どこまでが作り話なのか? マレーが妻の死因を追い求め続けたように、私もこの『トラッカーズ・ワイフ』という都市伝説の真実を、まだ追い続けなければならないようだ。
ネットロアに共通する、どこか人を食ったような感もある都市伝説だが、魅力的で、私はこの話をマレーの意思を継ぎ世間に広めることにした。そしてこの調査結果である本稿は全て作り話ではなく、真実であることを強調しておきたい。……などと言うと、むしろ嘘っぽく聞こえてしまうだろうか?
参照
https://www.thenightskyii.org/trucker.html
https://whatculture.com/offbeat/10-creepiest-ufo-abduction-stories?page=2
https://bloodonthegrindstone.com/2012/05/03/an-interview-with-geno-mcgahee/
オオタケン
イーグルリバー事件のパンケーキを自作したこともあるユーフォロジスト。2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」が年一回発行している同人誌『UFO手帖』の寄稿者。
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