悪魔憑き人形と心霊スポットで交霊実験! 涙を流した理由とは…/遠野そら
世界の超常現象ニュースをお届けする本コーナー。今回は、悪魔がとり憑いた人形……というだけでなく、その人形を伴って心霊スポットにいき、交霊実験を行った模様をお届け。人形が流した涙には、わけがあった?
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。今回は、災厄をもたらす無気味な飛行生物「モスマン」を取り上げる。
目次
「モスマン」(蛾人間の意味)は人のように2本の足と大きな翼をもち、空を飛ぶことのできるUMAである。
数々の目撃情報によれば、身長1.8メートルから2.1メートル。がっしりした体格で、灰色あるいは褐色の体毛で全身が覆われている。人間のように2本足で直立し、ひょこひょこと歩くが、差し渡し3メートルにも及ぶ大きな翼をもち、ヘリコプターのように垂直に上昇す
ることもできる。飛行するときは羽ばたきせず、時速160キロもの高速で飛行できる。
そして、ほとんどすべての目撃談に共通しているのが、暗闇で幻惑するように赤く光る、大きな目をもつということである。両手についてははっきりせず、首がなく頭から直接翼が生えているという証言もある。
頭から翼が生えているところは、永井豪原作の『デビルマン』に登場する妖鳥シレーヌを思わせるが、『デビルマン』の連載が始まったのは、モスマンが知られるようになった数年後、1972年のことである。
モスマンの存在は、1966年11月から翌年にかけて、アメリカのウエストバージニア州ポイントプレザントで集中的に目撃されたことで知られるようになったが、モスマンに似た2足歩行で翼のあるUMAは、1963年にすでにイギリスで目撃されている。
この年の11月16日、ケント州のサンドリングパークを歩いていた4人の男女が、金色の卵形のUFOが空から降りてくるのを目撃した。
着陸したUFOの中からは、人くらいの背丈で、全身真っ黒で頭はなく、コウモリのような翼をもつ生物らしきものが出てきた。怪物が4人のほうによろめきながら歩いてきたので、彼らは皆驚いて逃げだしたという。
モスマンという呼び名が生まれたのは、1966年11月15日に起きた、ポイントプレザントでの目撃事件がきっかけだった。
この日の夜11時半ころ、ロジャーとリンダのスカーベリー夫妻が、車にマレット夫妻を同乗させ、暇つぶしのためポイントプレザントの郊外にあるTNTエリアを走っていた。
TNTエリアとは、第2次世界大戦中、高性能爆薬の製造工場やコンクリート製のドーム型倉庫などが建設されていた場所で、戦後に工場や倉庫が閉鎖されてからもこう呼び習わされていたのだ。
4人の若者はひとしきりエリア内を走り回った後、エリアの入り口近くにある発電所跡まで戻ってきた。そのとき、暗闇に真っ赤に輝く円形のものがふたつ見えた。直径は5センチくらいで、互いに15センチくらい離れていた。
この2個の光が廃墟から次第に離れていくにつれて、それが人間のような形の生き物の目だということがわかった。身長は1.8メートルから2.1メートルくらい。全身灰色で、背中には大きな翼をたたんでおり、人間のような両足で歩いていた。
そいつはゆっくり向きを変えると、蝶番(ちょうつがい)が取れかけている旧発電所の開きっぱなしのドアのほうへ、足をひきずるようにして進んでいった。運転していたロジャーは驚いてアクセルを踏み込み、エリアを脱出すると、町に向かう62号道路に入った。そのとき、同じような生き物が道路近くの小高い丘の上に立っているのが見えた。
その脇を車で通り過ぎると、そいつはコウモリのような翼を大きく広げ、まっすぐ空中に飛び立ち、時速160キロで走る車の真上にぴたりとついてきた。翼の差し渡しは3メートルほどもあり、羽ばたきはしなかった。4人の頭上からは、ネズミのような「キーキー」という鳴き声らしき音も聞こえていた。
町の境界まで来ると、怪物は不意に4人の視界から消えたが、彼らはすぐに保安官事務所に急行した。事務所にいたハルステッド保安官代理は、一行ととも発電所跡に戻ったが、そこにはもう怪物の姿はなかった。
しかし、ハルステッド保安官代理が警察無線のスイッチを入れると、スピーカーからはレコードを早回しするような甲高い雑音ばかりが流れだし、本部からの指令は聞こえなくなってしまった。
この事件は、オハイオ州の地方紙「メッセンジャー」の通信員で、ポイントプレザントに住んでいるメアリー・ハイアーによって全米に報じられることとなり、あるテレビ局がアメコミのヒーロー、バットマンにならって、この怪物をモスマンと名づけたのである。
モスマンの跳梁はその後も続いた。
スカーベリー夫妻とマレット夫妻による目撃の翌日、11月16 日には、TNTエリアに住むトーマス家の近くでモスマンが目撃された。
この日の夜、ベネット夫人とワムズリー夫妻がトーマス家を訪れたのだが、毎晩のように教会に出かける信心深い夫妻はあいにく不在で、3人の子どもたちが留守番をしていた。そこで、一同は少しばかり話をした後、車に戻ったが、突然停めていた車の陰で何かが動いた。
そいつは大きな灰色の体で、ゆっくり地面から立ち上がったところを見ると、背丈は人間より大きく、らんらんと輝く赤い大きな目をしていた。一行は慌ててトーマス家に戻り、中から鍵をかけたが、怪物は外からのぞき込んでいた。彼らは慌てて警察に連絡したが、警察が現場に急行するころには、すでに怪物は消えていた。
さらに17日にも、ポイントプレザント対岸のオハイオ州で、17歳の少年の車が巨大な鳥に襲われるという事件が発生し、18日にはポイントプレザントの消防士ふたりが、TNT工場跡地で大きな赤い目の巨大な鳥に遭遇した。
以後、オハイオ州のリンカーン、メーソン、ローガン、カナワ、ニコラスの諸郡で奇妙な鳥の目撃が相次ぎ、目撃者の総数はその年の11月と12月だけで100人以上にのぼったという。
では、このモスマンとはいったい何だったのだろう。
ウエストバージニア州立大学生物学部のロバート・スミス博士は、カナダヅルという鳥の誤認だと主張する。
確かに、スケプティック(懐疑的)な観点からすれば、モスマンは背の高いツルやフクロウなど、大型鳥類の誤認ということになるだろう。また、暗闇で目が赤く光るのは野生動物の特徴でもある。しかしモスマンは、垂直に上昇したり、人間のような2本足で歩くなど、鳥類とは異なる行動を示している。
イギリスのデーヴィッド・アイクなどは、モスマンは竜座から来た、「ドラコ」と呼ばれる王族のレプティリアンとする。アイクは、レプティリアンに関する独自の観点からこのように主張するが、モスマンとUFOとを関連づける研究者はほかにも大勢いる。
じつはモスマン事件の前年、1965年から1977年までは、アメリカで「ウェイヴ」と呼ばれるUFOの集中目撃が発生しており、ポイントプレザント周辺でも、モスマンに加えて多くのUFO事件が報告されているのだ。
1963年のイギリスでの目撃においても、モスマンに似た生物はUFOから出てきており、ベネット夫人とワムズリー夫妻も、トーマス家を訪れる前に奇妙な光点を空に目撃している。
さらに、1967年5月19日午後10時30分ころには、TNTエリアを車で通過していたブレンダ・ストーンらふたりの主婦が、木立の上を旋回するモスマンと同時に、空中に浮かぶ大きな赤い光球を目撃している。このときモスマンは、木立に接近した光球に吸い込まれるように上昇してその中に消え、光球はそのまま飛び去ったという。
アメリカの奇現象研究家ジョン・キールは、1966年12月以来ポイントプレザントを訪問し、モスマンに関する調査を続けてきたが、彼はポイントプレザントのモスマン騒動と、1967年12月に発生したシルバーブリッジ崩落事件とを関連づけている。
シルバーブリッジはオハイオ川にかかる全長210メートルの吊り橋で、ポイントプレザントと対岸のオハイオ州を結んでいたが、1967年12月15日、ポイントプレザントにおいて最後にモスマンが目撃された日に突然崩落し、46人の犠牲者を出している。
キールは、UFOやUMA、ポルターガイストなど、世界中で発生する奇現象の背後に、このような現象を自由に起こすことのできる「超地球人」なるものの存在を想定しているが、当時ポイントプレザントでは、モスマンやUFOの目撃多発以外にも、モスマンの目撃者や事件を報じたメアリー・ハイアーの周辺で、奇怪な人物の訪問やポルターガイストの発生といった奇妙な現象が起きている。キールによれば、超地球人が一連の奇怪な現象を通じて、シルバーブリッジの崩落を予告していたということらしい。
ポイントプレザントでのモスマンの目撃は、シルバーブリッジの崩落とともに終息したが、モスマンらしき怪物はその後も各地で目撃されている。
たとえば、1976年にはテキサス州リオグランデバレーで翼のあるUMAの目撃が続き、1978年にはドイツのフライブルクで、2006年にはウィスコンシン州ラクロスでもモスマンに似たUMAが目撃されたほか、2017年にはシカゴ周辺で59件の目撃が記録されている。
(ムー2020年2月号掲載)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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