「UFOは未来人の乗ったタイムマシン」とスピルバーグ監督が主張! 情報公開を求める「真実の示唆」なのか?
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今自分がいる現実とは別に存在する“異世界”や“パラレルワールド”に足を踏み入れることができるのだろうか――。夢や妄想やSFではもはやありふれた物語設定かもしれないが、驚くべきことに科学的にもわずかであれその可能性は残されているという。
今やパラレルワールド(平行宇宙)はSF作品における定番の物語設定だが、実際にその実在をサポートする科学理論もいくつかある。では、仮にパラレルワールドが存在するとして、そこを旅することはできるのだろうか?
その可能性について検討してみると、物理学的にパラレルワールドは大まかに2つの理論に登場することがわかる。
1つは「インフレーション」の概念が適用される初期宇宙の進化モデルである。誕生期に多くの宇宙が同時に一斉に膨張し、膨大な数の個別の宇宙に分岐し、それぞれが独自の物理法則と物質を持っている可能性があるという。今、我々がいる宇宙と似ていたり、あるいはまったく違う宇宙がパラレルワールドとして今も無数に存在していることになる。
しかし、別の宇宙への旅行は簡単ではない。なぜなら、それらは我々が観測できる地平線をはるかに超えており、光速よりも速く移動しながら今も離れ続けているからだ。もし超光速で移動できる手段を見つけたとしても途方もない距離が空いてしまっており、すでに“時遅し”になりそうだ。
もう1つのパラレルワールドは、量子力学の「多世界解釈」だ。今この瞬間にも、世界はすべての可能性の数だけ分岐を続けており、我々のいるこの世界の隣には別の可能性を選んだパラレルワールドが無数に存在していると考えるのが多世界解釈である。
そして驚くべきことに、この多世界解釈モデルでのパラレルワールドには足を踏み入れられる可能性があるという。
実はその方法はシンプルで、要するにタイムマシンを作って過去に戻ればよい(そして、分岐した別の世界を選び取る)のである。
アメリカの理論物理学者、キップ・ソーンは宇宙空間の2つの別々の領域をショートカットして繋ぐ「ワームホール」は横断可能であるとの結論に達し、タイムトラベルも可能であると説明している。
しかし、タイムトラベルが可能になったとしても、そこには別の厄介な問題が持ち上がってくる。有名な「祖父のパラドックス」をはじめとする過去の改変の問題である。タイムマシンで過去に戻って、もしも自分を生む前の親を殺害したらいったいどうなるのか。
「車椅子の天才物理学者」こと故スティーヴン・ホーキング博士(1942~2018)は1990年に「時間順序保護仮説」という仮説を立て、実際にはワームホールを通るには無限大のエネルギーが必要であり、それはすなわち不可能であると説明している。そして「量子論がタイムパトロールの役割を果たすに違いない」と発言し、過去を改変するようなタイムトラベルは不可能であるとの持説を展開していた。
また、1964年にはソ連(現ロシア)の天文学者イゴール・ノヴィコフが「自己一貫性の原則」の概念を提起した。原因が結果を生み、それが原因となって新たな結果が生じーーと、全てがリング状に繋がるのであれば、過去へのタイムトラベルにおいて“祖父のパラドックス”などの問題は生じないと説明している。
ノヴィコフによれば、この世界ではすべてが決定されており自由意志は存在しないので、仮に過去に行ったとしても何かを“改変”することなどできないというのである。この理論に従えば、人間はタイムマシンを作って過去へ行こうという意欲を結果的にどこかの時点で捨て去るのかもしれない。
では、やはりタイムトラベルは不可能ということになるのだろうか。
考えられる答えの1つは、タイムマシンで自分の世界の過去に行くのではなく、多世界解釈におけるパラレルワールドの過去に行くことである。
もし過去に戻ってヒトラーを殺害しようと意図した場合、それは自分の世界の過去のヒトラーを殺すのではなく、パラレルワールドのヒトラーを殺すことになる。そのパラレルワールドではヒトラーはタイムトラベラーの暗殺者によって殺された歴史が新たに綴られていくことになるが、自分の世界に戻れば歴史上のヒトラーは何も変わっていないのだ。
多世界解釈は、こうした代替の新たな歴史を作り出すためのプラットフォームを提供することになる。宇宙が常に分裂し、分岐しているのであれば、タイムトラベルとは単にそれらの分岐の1つから別の分岐に移動することであり、すなわちタイムトラベルとはパラレルワールドへの旅行と実質的に変わらないということになる。したがって、タイムマシンで行った先で祖父や親を殺そうが何をしようが、その後に戻ってきた自分の世界は何も変わっていないのだ。
タイムトラベルとはパラレルワールドへの旅であるという話もまたにわかには信じられないかもしれないが、いずれにせよタイムマシンが完成した時にタイムトラベルにまつわることの白黒もはっきりする。
完成したタイムマシンで過去に行った際、その世界で自分が何の行動もできなかったり、さらに極端なことを言えば、タイムマシンを降りたものの地面に足を着けることさえできなかったとすれば、そこは自分がいた世界の本当の過去である。そして、そもそもこの本当の過去にはタイムマシンでは訪れることができないかもしれない。ホーキング博士によれば、ワームホールは実際には通り抜けられないのだから。
一方、タイムマシンで任意の過去の世界に到着し、何の制約もなく自由に行動できるとすれば、そこはパラレルワールドの過去であることはおそらく間違いない。そこで何をしようが、戻ってきた世界の歴史は何も変わっていないのだ。そして、実はタイムマシンはパラレルワールドにしか行けない装置である可能性も大いにあり得る。
豪クイーンズランド大学の物理学者、ジャメイン・トバー氏は2020年に発表した研究で、出来事とは過去と未来の両方に同時に存在しつつ、互いに独立しており、過去と未来を包む時空は「祖父のパラドックス」を回避するために過去と未来の間にある矛盾を常に解消していると説明している。
トバー氏によれば、この世界に“もしも”は存在しないことになり、きわめてハードな決定論に行き着いてしまうのだが、時空が矛盾を解消しているというよりも、訪れた先がパラレルワールドであったと考えるほうが理解しやすいともいえる。
これらの考察は現状ではいずれも思考実験の域を出ないものではあるが、タイムマシンの完成がますます待ち遠しくなる話題であることは間違いない。
【参考】
https://anomalien.com/how-to-get-to-a-parallel-universe-the-answer-from-physicists-may-surprise/
https://www.space.com/the-universe/could-we-travel-to-parallel-universes
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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