体調不調の異星人から頼まれた「頭の取り替え」作業の謎/ハイ・ストレンジネスUFO事件FILE 5

文=羽仁 礼 イラストレーション=久保田晃司

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    世界中から無数に報告されるUFO事件。単なる目撃情報から、異星人との直接的なコンタクトまで、その内容は実にさまざまだ。中でも、特に奇妙で不可解な遭遇事件を「ハイ・ストレンジネス事例」と呼ぶ。奇想天外な7つの接近遭遇事例を紹介する!

    異星人が頼んできたのは頭の取り替え作業!?

     日本でも、ハイ・ストレンジネス事例の報告がいくつかある。中でも、世界的に例を見ないほど奇妙なものは、静岡市のトラック運転手・福田雅治の体験であろう。

     事件が起きた1974年当時、彼はトラックの運転手を務めて9年になるベテランで、これまで月に何回も、静岡から四国の高松まで、深夜便で家具を運んでいた。
     1974年9月3日の未明にも、いつものようにトラックに満載した家具を運んで、ひとりで夜通し走りつづけていた。高松には宇野港からカーフェリーで渡るので、7時にはフェリー乗り場に着く予定だった。
     午前5時ごろ、道路の両側が岩に覆われた小さな峠道に差しかかった。すると突然、左手前方にある岩山のほうから銀色の光が現れ、こちらに近づいてきた。やがて異様な光体は左手前方10メートルくらいの場所にある岩山の上の平たい岩に、ゆっくりと音もなく降り立った。
     それはアルミニウムのように鈍く光り輝く物体で、直径は8メートルくらい、窓らしいものはなかったが、土星のような輪が周囲を囲んでいた。岩に降り立つときには、何本かの着陸脚を下に伸ばしていた。
     この突然の出来事に遭遇した福田は、思わず物体を見つづけた。その後、車を止めたという記憶はないが、気がつくと彼の隣の助手席には、髪の毛が肩まで垂れた人物が無言のまま座っていた。
     座高から判断して、その人物の身長は160センチ前後と思われた。男女の別ははっきりしなかったが、髪の毛が長いことから、福田は女と判断した。
     頭のてっぺんからは角のようなアンテナが突きでていて、顔の目以外の部分はマスクで覆われていたようだ。身体を包んでいる衣服はゴムのように肌と密着している。靴を履いていたかどうかなど、その他の細かい部分は思いだせない。

     驚いた福田が恐怖とショックで放心したように見つめていると、女が次のように話しはじめた。その声はテレビ番組に登場するコンピューターのような声だったという。

    「私はこの星へ来てイチルイになるが、頭の調子がおかしいので、代わりの頭と取り替えてほしい」

    「イチルイ」というのは、彼らの時間の単位らしいが、正確なところは不明である。もちろん、頭を取り替えてくれといわれても、福田にはどうしたらよいかわからない。
    「どうやって?」と訊ねると、女は「私の首の少し下のところと、首と肩の中間あたりの両方に点が3か所あります。そこへこの金属針金を直線的に通し、首の下の点を押してください。そして、代わりにこれを逆の方法でつけ替えてほしい」といって、まったく同じようなもうひとつの顔を差しだした。
     狭い車内でお互い座ったままだったので、お互いに身体をよじるようにしながら、福田はいわれた通り胸にある3つのボタンを順番に押した。するとガチャンという金属的な音がして首が外れた。新しい頭を取りつけるときは、逆の順番でボタンを押していった。このとき、首の接続部分から内部を見たかどうかも記憶にない。

    惑星衝突で母星を失い地球へ身を寄せる異星人

     だが、このとき福田は、女=異星人と以下のような簡単な会話も交わしている。まず異星人がいった。

    「私たちは、この星を征服しにきたのではありません。私たちの星が他の星と衝突してなくなってしまい、その直前に宇宙船に乗った仲間だけがこの星へやってきて、住みついているのです」

     福田が「仲間たちとどこに住んでいるのか」と訊ねると、「今はいえません。私たちをこの星の人々が理解してくれたときに、私たちの代表がこの星の代表と話し合い、住む場所を決めてもらいます」と答えた。
    「私たちの星の言葉とあなたたちの星の言葉で、なぜ話し合えるのですか?」と福田が質問すると、「私たちの星はすべてにおいてこの星より進んでおり、私の頭の中はコンピューターが詰まって造られた機械なのです。私たちのひとりひとりがこの星のすべてのことを知るだけの能力を持っているのです」という答えが返ってきた。
     さらに福田が「今まで何人もの人が円盤を見たといっていますが、それはあなた方のものですか?」と訊ねると、「そうです」と答えた。
     異星人は「私たちの住んでいた星は、わずかな明るさの星でした。だからこの星のように強いエネルギーを持った星では、太陽光線の弱い夜でなければ行動できないのです。私たちの宇宙船は光エネルギーで動きます。私たちがこの星へ来たばかりのころ、強いエネルギーのために仲間の宇宙船がいくつも燃えて落ちました。私たちは弱いエネルギーのところでなければ滅びてしまうのです」と述べた。

     要するに、彼らのUFOは何度も墜落しているということになる。
     そして異星人は「私たちは一度会った人とは、必ず再び会うことにしています。またいつか必ずあなたの前へ姿を現します」とつけ加えた。

     異星人がこの後、どうやって姿を消したのか、円盤に乗って飛び去ったのかどうかは、まったく福田の記憶にない。福田が次にわれに返ったのは、フェリー乗り場のすぐ近くだった。
     福田は、異星人とは20分ほど一緒にいたように感じたが、フェリー乗り場に着いたのは予定通りの時間だった。つまり、異星人の首をすげ替え、対話した時間がすっぽりと抜け落ちてしまっているのだ。
     もしかしたら、異星人との対話や首のすげ替えは、3次元の時間の流れの外、時間の谷間のような空間で起きたことなのかもしれない。

    トラック運転手の福田雅治に首のすげ替えを手伝わせた謎の異星人(「UFOと宇宙」第18号より)。

    ●参考資料=「宇宙人大図鑑』(中村省三著/グリーンアロー出版社)、「UFOと宇宙」第18号/64号/66号/67号(ユニバース出版社)、『FLYING SANCER REVIEW』1994年8月号(FSR Publications)

    (月刊ムー 2025年1月号掲載)

    羽仁 礼

    ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
    ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。

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