プーケットの津波現場に現れる霊は”生きている”/髙田胤臣・タイ現地レポート
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世の神々を否定し、宗教に縛られる人間の解放を目指す「サタン教会」を三上編集長がMUTubeで解説。
1970年代のウエストコースト・サウンドを代表するバンド、イーグルスの5作目のアルバム『ホテル・カリフォルニア』がリリースされたのは1976年12月8日。直後から『ビルボード』誌のアルバムチャートで8週連続ナンバー1にランクされ、全世界で3200万枚以上のセールスを記録した。
このアルバムが、ちょっと変わった理由でも記憶されていることをご存じだろうか。リリース後しばらくして、見開きのジャケットにあしらわれたホテルのロビーの写真に、多くの人々の関心が集まった。2階のテラス部分に、スキンヘッドに特徴のある形のひげを生やした人物がしゃがむような姿勢で写っている。これはアントン・ザンドール・ラヴェイ──ザ・チャーチ・オブ・サタン=サタン教会の創設者──ではないかという話が一気に盛り上がったのだ。
ラヴェイは、1966年4月30日にサンフランシスコでサタン教会を設立し、1997年に亡くなるまで司祭長の座に就いていた。教会の教義については、今もアクティブな状態にあるホームページに次のような文章が示されている。
〝アントン・ザンドール・ラヴェイによって設立されたサタン教会は、人間の本性を受け入れることに公然たる献身を史上初めて誓った組織である。人間の本性とは、人間の存在には無関心な肉欲の獣の本性にほかならない。生まれながらに肉欲を持ちながら理性と感情の間で激化する戦いを感じないサタンは、肉体に幽閉された魂という概念を受け入れない私たちの本質を最も端的に語るシンボルである。サタンはプライド、自由、個人主義を象徴する存在であるが、外的な神々を崇拝し、理性と感情の間で繰り広げられる戦いを感じる人々によって、しばしば悪とされる〞
ラヴェイは著書『悪魔の聖書』の中で「人間が自分の脳ですべての神々を生み出した」と書いている。すべての神格は外在化した形であり、人間が自ら考え出した創造主の本質を拡大投影したもので、かつ宇宙を擬人化したものである。
したがって、神を崇拝することはその神を発明した存在である人間を代理崇拝することにつながる。その一方、すべての神格が人間による作り物であることを理解しているサタン崇拝者は神話的存在に憧れたり、親しみや一体感の対象にしたりはしない。最高の価値を持つ存在として主観的宇宙の中核に据えるのは、自分自身である。
ラヴェイは、幼いころからドラキュラ伝説やフランケンシュタインの物語などの暗黒文学に親しみ、カリオストロ伯爵やラスプーチンといったオカルト要素を強く感じさせる人物に心を奪われた。
同じくらい魅力を感じていたのが音楽だ。天才的な音感で、一度しか聞いたことがない曲でもキーボードで奏でることができた。この才能は、後にサタン教会の設立に大きな役割を果たすことになる。
周囲とまったく馴染めないまま高校を卒業したラヴェイは、サンフランシスコで警察署のカメラマンとして働きながら市内の大学で犯罪学を学んだが、アレイスター・クロウリーの著作を読み漁ることにより多くの時間を費やした。同じ時期、警察署に電話をかけてくる〝いかれた奴ら〞の対処を任されるようになる。迷惑な人々の話を毎日のように聞くという経験を通し、世の中には平凡な原因の現象であっても超自然的な説明を求めるタイプの人間が存在することを知った。
1956年、ラヴェイはサンフランシスコ市内にビクトリア様式の家を購入した。後にサタン教会の本部となるこの建物から近いライブハウスやスタジオでキーボードプレイヤーとして活動し、地元でちょっとした有名人となった。頻繁にパーティーを開き、人類学者マイケル・ハーナーやアメリカ大統領の孫チェスター・A・アーサー3世、SF専門家のフォレスト・アッカーマン、アングラ映画の監督ケネス・アンガーといった著名人と親しくなり、着々と人脈を作っていった。
そして前述のとおり、1966年4月30日にサタン教会を設立する。警察署で得たノウハウを言語化し、アイン・ランドやニーチェといった哲学者からの影響を自らの思想と融合させ、1969年の終わりに『悪魔の聖書』を書きあげた。サタン教会の哲学と儀式の実践について詳しく触れられたこの本は、現代サタニズムの礎と呼ばれるようになった。
サタン教会の普及におけるトレードマークとなったのが、ヘブライ語で「リヴァイアサン」を意味する文字で囲まれた五芒星の中のヤギの頭を描いた、悪魔バフォメットの紋章だ。
この紋章に関しては数多くの逸話や主張がある。悪魔崇拝のシンボルには、キリスト教芸術を冒瀆的にパロディ化した図画や逆さ十字が使われることが普通だ。しかし、バフォメットの紋章はラヴェイの存在そのものの象徴として認識されるようになった。ラヴェイと悪魔崇拝を直接的に結びつける紋章が大衆の意識に強烈なイメージを刷り込む役割を果たし、70年代初頭のアメリカ文化におけるオカルト思想の核の部分が、ラヴェイのカリスマ性とサタン教会の教義によって形作られていったのだろう。
ラヴェイが亡くなった1997年以降、サタン教会で大司祭を務めていた娘カーラが組織を引き継ぎ、第一サタン教会という名称で現代アメリカにおけるサタニズムのフロントマンとして活動を続けている。悪魔崇拝のライブ・イベントやショー、コンサートを企画・運営し、サンフランシスコのラジオ局にレギュラー番組を持っている。こうした活動が、新しい世代の信者の掘り起こしにつながったようだ。
(文=宇佐和通)
続きは本誌(電子版)で。
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