闇夜の森で「ビッグフット」の撮影に成功! トレイルカメラの普及がUMAを追いつめる!
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多くの日本人が知らないところで、時代は脳へと移っている。脳をハッキングし、脳を制御するブレインテックが次の時代の戦争の勝敗を決めるのだ。
脳を操作するテクノロジーをブレインテックという。ブレインテックのカバーする範囲は非常に広く、脳の外科手術から「ピンクノイズを聞くとよく眠れる」といった末梢神経への影響まで含まれる。ちなみに、ピンクノイズとは高音ほど音が弱くなるノイズのことで、自然の音が持つ1/fゆらぎの音であるため、聞くと安眠できるとされる。
今、このブレインテックに、米中が莫大な投資を行っている。2013年、アメリカのオバマ大統領(当時)によって『ブレイン・イニシアティブ』(脳に関する理解を国家戦略として進めるプロジェクト)がスタートした。DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency:国防高等研究計画局)をモデルにNIH(National Institutes of Health:国立衛生研究所)がARPA-H(Advanced Research Projects Agency for Health:医療高等研究計画局)を組織化した。このARPA-Hには、2023年度の概算要求で50億ドル(約6,000億円)というとんでもない額が投入されている。そしてDARPAには、ブレインテックに特化した機関、N3(Next-Generation Nonsurgical Neurotechnology)があり、アメリカでもっとも進んだ研究はここで行われている。
N3でやっている研究は大きく分けて6つある。
1.外部から電磁波で操作できるナノマシンを脳に注入、神経の情報をダイレクトに送信させる
2.超音波を使って脳を刺激、特定の細胞領域を活性化させる
3.脳がやり取りしている神経のデータをレーザーに変換して取り出す
4.超音波と磁場を使って脳を観測する
5.超音波と磁場を使って脳へ情報を書きこむ
6.超音波と磁場でニューロンに情報を書き加える
脳と通信できる着脱型脳神経インターフェースシステムの完成が目標なのだそうだ。こうなるとSFの世界であり、脳とネットがつながった攻殻機動隊の未来社会そのものだ。人間が脳で、肉体を介さずに機械を操作する世界。
ちまたの反ワクチン運動では、「ワクチンにナノマシンが入っていて、ワクチンを打つと脳がナノマシン侵食される」というデマ(!)が流れたが、イメージ自体はわからなくもない。デマなのだが。
一方の中国は、2006年にチャイナ・ブレイン・プロジェクトをスタートした。「国家中長期科学技術発展計画(2006~2020)」には、基礎研究における8つのフロンティアテーマとして脳科学と認知も挙げられている。
2018年には北京の中国脳科学研究所と上海の復旦大学脳科学フロンティア科学センターが設立され、2021年9月には科学技術部が「2021年科学技術イノベーション 2030年プロジェクト適用ガイドライン ― 脳科学と脳にヒントを得た知能研究主要プロジェクト」を発表した。
現状ではアルツハイマー病やうつ病などの脳神経疾患の治療とAIの開発が主軸で(彼らは「1つの体と2つの羽」と呼んでいる)、1,000億円規模の予算が注ぎ込まれている。
またイーロン・マスクがニューロリンク社を起ち上げ、ブレインテックに積極的な投資を行っているように、中国では検索サイト大手のBaiduのCEO、ロビン・リー・ヤンホンが軍事分野を含めたブレインテックと人工知能の研究に投資を行うと発表している。
中国がブレインテックに注力するのは、非対称戦が念頭にあるからだ。アメリカと中国の軍事力を正面から比較すると、比較にもならない。しかし、新しい技術の新しいパラダイムになれば、どうなるかはわからない。
たとえばドローンを使った戦争には、今までの軍事の常識が通用しない。同じように脳を使った戦争を彼らは考えている。人民解放軍は、それを「制脳権」と呼んでいる。
実は、中国は脳波タイピングのコンテストの世界記録ホルダーだ。脳波タイピングは、キーボードを使わずに脳波で文字入力を行う。国際大会で使用されるのは、中国が開発したSSVEP(定常状態視覚誘発電位)と呼ばれる脳波を利用するシステムだ。
画面にアルファベット文字の一覧が表示され、それぞれすべて違う周期で点滅している。画面上の入力したい文字を見つめると、脳波が点滅と同期したSSVEPが発生するのだという。ヘッドギアで脳波を読み取り、データベースと照合して文字を表示する。
トップの出場者は、毎分約140文字の入力を行った。標準的なキーボード入力が毎分100字なので、圧倒的に早い。
そんな脳の特殊な使い方をマスターした軍人による、脳波戦争を彼らは考えているらしい。「制脳権」を制することが彼らのミッションなのだ。
アメリカはブレインテックに莫大な投資を行い、世界中の優秀な脳科学者やAI研究者を引き抜いている。とても他国が太刀打ちできるとは思えないが、もしかしたら中国がこの分野で追い上げる可能性がある。
中国は欧米と違い、動物愛護運動や人権に対する制約がほぼない。欧米にはできない非倫理的な研究ができるのだ。このアドバンテージは大きい。
2021年4月、中国・昆明理工大学ではカニクイザルの初期胚盤胞にヒト多能性幹細胞25個をインストールし、成長させることに成功した。サルと人間の遺伝子を持つ胚は19日生存したという。
これができるのが中国である。
脳をハッキングするのは、中国かそれとも欧米か、すでに戦いは始まっているのだ。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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