切っても焼いても死なない魚たちーー「スズキ」の伝説/妖怪補遺々々
ホラー小説家にして屈指の妖怪研究家・黒史郎が、記録には残されながらも人々から“忘れ去られた妖怪”を発掘する、それが「妖怪補遺々々」! 今回は、死なない、死んでも甦る魚の伝承から補遺々々します。
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YouTuber、オカルトコレクターとしても活動する田中俊行氏が、京都の骨董品店から譲り受けたという“鵺ぬえの手のミイラ”。はたして、このミイラは“縁起物”なのか、それとも……?
YouTubeチャンネル「不思議大百科」や実話怪談イベントなどで活動するオカルトコレクター・田中俊行氏。数多くの呪物を収集する田中氏のもとに、京都のある骨董品店から一本の連絡が入った。
なんでも“鵺の手のミイラ”が発見されたという。
「とある屋敷から出てきたが、これがなんなのかわからない」と渡されたその箱には、確かに“鵺之仔之手”と記されている。
実物を手に持つと、完全に乾ききっており、軽い。大きさは10センチ弱だろうか。爪も残っており、なにかの小動物のものであることは間違いないように思える。
京都の鵺というと、『平家物語』における鵺伝説だろう。平安時代末期、天皇の住む御所に、夜ごと黒煙とともに「ヒョーヒョー」という無気味な鳴き声が響き渡り、それに恐怖した天皇はやがて病に伏したという。
それではなぜ、この“鵺のミイラ”が現代になって見つかったのだろうか。
鵺のミイラを発見したのは、住む人がいなくなり、途絶えてしまった家屋の解体を行っていた不動産関係者だという。
京都市内のとある名家の屋敷をまるごと買い取り、遺留品を整理していたところ、件のミイラが見つかったそうだ。発見者によると、屋敷の一室に祭壇のような場所があり、そこにはこの鵺のミイラとロウソクが安置されていたそう。ロウソクの様子からしても、その様はまるで「祀っている」かのようだったという! 一族は鵺を信仰していたとでもいうのだろうか?
しかし、前述のとおり、かつて都を脅かした鵺という存在は、表立って祀られるものとは考えにくい。ましてや、これが発見された場所は京都市内だ。それでは、なんの目的で一族は鵺のミイラを保有していたのか。
そんな取材のなかで、田中氏が鵺の箱を覆っていた木箱に、不自然なスペースがあることに気がついた。外箱の下部分、何かを塞ぐように木の板が釘で留められている。叩いた音の反響からして、中はどうやら空洞のようだが、なにか入っているのでは?
田中氏に釘を外してもらい、わずかな隙間から中を確認すると……なんと一枚の紙切れが出てきたではないか!
そこには……「KSさん予約」とある。なんてことのない紙切れに、ボールペンで書かれたかのような文字。年代はそう古くないように見受けられる。
一見、商品の成約ずみの札のように見えなくもないが、廃屋から見つかりそのまま骨董品店に流れ、すぐに田中氏の手に渡った経緯を考えると、鵺の手のミイラが店頭に並べられていた期間はない。
であれば、「K S さん予約」が示す意味とはいったい……?
平安時代末期、京の都に現れ、天皇に病をもたらした鵺。これは、特定の人物に災いや不幸をもたらす一種の“呪い”の象徴ともとれるのではないだろうか。そうすると、この一家の“鵺信仰”のそれは、呪物に対しての信仰だったように思えてくる。
もしや、この予約票は呪殺や呪いの儀式の予定を書き置いたものだったのか? そして、その筆致の新しさから見ても、一族は近年まで呪術の依頼を請け負っていたのではないだろうか。
また、田中氏は鵺の手のミイラを覆う外箱の奥に貼られた御札のようなものの存在を指摘する。文字自体は解読できないが、スリランカのシンハラ文字に近いもののように見える。スリランカでは現代でも呪術師による悪魔祓いが行われているように、まさに呪術大国といえる。
一族が途絶えたいま、事実を確認する術はないが、もしかすると、鵺の手のミイラと何か深い関係があるのかもしれない。
★ムー2023年1月号では「呪物特集」を掲載。この「鵺の仔の手」について呪術師の見解も含めて紹介している。お楽しみに。
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