インドネシアには小さな古代人類「ホビット」が今も生きている!? 学者も信じる数々の目撃証言

文=仲田しんじ

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    映画『ロード・オブザ・リング』に登場する「ホビット」によく似た古代人類は、今も生き永らえているのだろうか? ある人類学者は、住民による目撃証言を軽視すべきではないと訴える。

    フローレス島の“ホビット”

     2004年10月、英ニューイングランド大学とインドネシア考古学研究センターの合同研究チームが学術誌「Nature」で発表した研究では、インドネシアのフローレス島にあるリアン・ブアと呼ばれる洞窟で、身長約1メートルで頭蓋内容積が約380立方センチメートルの初期人類の遺骸が発見されたことが報告されている。

    「ホモ・フローレシエンシス」と命名されたこの初期人類は、小柄な体格に似つかわしくない大きな足で直立歩行していたことから、研究者たちは小説『指輪物語』に登場する小柄な人々にちなんで「ホビット」の愛称で呼ぶことにした。

     その後、同じ洞窟内で12体のホビットの骨と道具が発掘され、彼らが生きていた時代も後期更新世と特定された。この時代はホモ・ネアンデルターレンシスやホモ・サピエンス(現生人類)を含むほかの人類種と重なる。ホモ属のほかの種と同様に、フローレス島に生息していた種も石器を使用していたことが証拠から示されている。

     しかし、ほかのホモ属に比してホビットの身体の小ささは際立っており、研究チームは約100万年前にフローレス島に到達したヒト属が数千年の間に低身長症を発症してホビットとなり、最終的に約5万年前に絶滅したと考えている。

    画像はYouTubeチャンネル「Ancient Animal Atlas」より

     この研究には関わっていない人類学者、グレゴリー・フォース氏は2000年代初頭にフローレス島でフィールドワークを行い、島の山岳地帯であるリオ地区に住む地元住民と頻繁に話をしていた。そして、「背が低く毛深い、一種の“猿人”とも言える小さな人型動物を時折見かけることがある」との証言を得ていたことを、2023年2月のインタビューで明かしている。

     フォース氏によると、リオ地区の人々はその猿人を「ライホア」と呼んでおり、身体の特徴がホモ・フローレシエンシスと驚くほど似ているという。ということは、ホビット=ライホアであり、今も生き永らえているのだろうか。

     フォース氏はフローレス島民から学んだことをまとめた著書『Between Ape and Human: An Anthropologist on the Trail of a Hidden Hominoid(類人猿と人類の間:隠された人類種の足跡を辿る人類学者)』を2022年に出版している。

    「『Nature』のレポートが発表されたとき、古人類学者の話に大変驚きました。それは、前年の夏にリオの人々から説明されていたものと非常によく似ていたのです」(フォース氏)

    画像はYouTubeチャンネル「Ancient Animal Atlas」より

    「ライホア」の目撃証言

     社会人類学を専門とし、引退前はカナダ・アルバータ大学の教授を務めていたフォース氏は、ライホアがこの孤立した地域で今も生き延びており、その痕跡もまだ見つかる可能性があると主張する。

    「ライホアは、フローレス島の他地域でも目撃されている。しかしライホアの謎をさらに深めているのは、フローレス島のほかの地域で目撃され、地元の人々が絶滅したと考えている類似の生物とは異なり、この猿人は現在まで生き残っているとされている事実だ」(著書より)

     リオ族の間では、少なくとも少数のライホアが現代まで生き延びていると信じられており、1960年代から2019年にかけてのライホア目撃報告も数件残されている。フォース氏が特に説得力があると考えている事例は3つだ。

    「いずれのケースでも、2人以上の人間によって同時に目撃されました。また3件のうち2件では標本が死んでいたため、人々は近づいて間近で見ることができたといいます」(フォース氏)

     そのうち一件は、1972年の事例だ。リオ族の男性グループがフローレス島の森林地帯を車で走行していた時、1匹の生き物が土手から車に向かって降りてきたという。そしてもう一件は、2010年の事例だ。とある男性がライホアの死骸を発見し、家族とともにかなり細部まで観察したという。

    「地元の人たちは、こうしたものを現実のものとして捉えています。そして同時に、とても不気味だと感じているのです」(フォース氏)

    画像はYouTubeチャンネル「Ancient Animal Atlas」より

    新たな目撃情報に期待

     フォース氏の著書は「原始的人類種が生存している可能性について迫った、一流人類学者による唯一の直接調査」と評されている。著書では島での調査が詳述されているが、そのユニークな主題ゆえに(ある意味では当然だが)専門家の間で論争を巻き起こしている。物的証拠が欠如しているため、ライホアの存在を強く主張することは依然として困難であり、フォース氏もその困難さを認識している。

     スミソニアン協会、人類起源イニシアチブのマシュー・トチェリ氏は、ホモ・フローレシエンシスが今も生きている可能性はきわめて低いと科学メディア「Popular Mechanics」に断言。トチェリ氏は「ホモ・フローレシエンシスが種として存続しているなら、相応の個体数がいるはずで、もっと普通に目撃されているはずだ」と指摘した上で、現地の人々の精神に深く根付いた文化の一部のようなものだと述べる。

     フォース氏自身、ホモ・フローレシエンシスの遺骨の発掘を、ホビット(ライホア)が今も生存しているという結論と安易に結びつけてはいないが、その可能性は今も否定していない。

     はたして、フローレス島に今もホビットが生き永らえているのか? そしてそれは、地元民がライホアと呼ぶ存在なのだろうか。新たな目撃情報にも期待したい。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「Ancient Animal Atlas」より

    【参考】
    https://www.popularmechanics.com/science/a69647077/tiny-apelike-human-ancestor/
    https://thedebrief.org/a-humanlike-living-fossil-could-still-be-alive-in-indonesia-this-anthropologist-says/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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