モロッコの古代都市は「アトランティス」だった!? 諸条件が一致するスース=マッサ平原アトランティス説

文=遠野そら

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    諸説ある「アトランティスの場所」を解説するシリーズ記事、今回の舞台ははモロッコ。そもそも島ではなかった?

    アトランティスはモロッコ沿岸にあった

     数世紀にも渡り多くの人を魅了してやまない古代の超大国アトランティスの伝説。豊かな実りと高度な文明を誇りつつも、神の怒りにふれ、約1万2千年前に海の底へ沈んだという幻の超古代都市である。

     古代ギリシアの哲学者プラトンの著書『ティマイオス』『クリティアス』によるとアトランティスは「ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)の外側に位置するリビアと小アジアを合わせたよりも大きな島」とあることから、長きに渡り地中海または大西洋に存在していた可能性が高いと信じられてきた。

     だが、我々はもしかしたら、どこかで解釈を間違えていたのかもしれない。近年のコンピューターマッピング技術の結果、古代アトランティスが存在していた場所として、アフリカ大陸のモロッコ沿岸部が導き出されたというのである。

    画像=https://andrewgough.co.uk/was-atlantis-in-morocco/ より

     この大胆な説を提唱するのは、ドイツ出身のソフトウェア開発者ミハエル・ヒューブナーだ。氏は独自の統計分析方法「地理階層制約理論(GHCS)」を開発し、アトランティスに関する記述すべてを抽出しデータ化。アテネから3,100マイル(約4,800km)離れていることや、環状型の都市構造はもちろんのこと、北側に山々が連なり、ゾウなどの野生動物が生息していた等の手がかりを51の属性に分けると、それを格子状に分割した400のエリアに追加していったのである。

     これは特定の地理座標に、アトランティスに関するヒントとも言える属性を追加していくことで、プラトンの記述に最も近い場所が浮かび上がるという方法だ。この気が遠くなるような集計作業を繰り返した結果、アフリカ大陸モロッコ沿岸から約11キロの場所に位置する「スース=マッサ平原」が51の属性のうち44が一致する、と圧倒的比重で導き出されたのである。

    アトランティスは島でなくデルタ地帯

    アトランティスの首都ポセイドニアなのだろうか。同心円に囲まれたスース=マッサ平原。画像 https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2996804/Computer-expert-claims-ancient-civilisation-destroyed-tsunami-remains-hiding-plain-sight-Morocco.html# より

    「誤差は最大で0.00000000000279です。言い換えれば、スース=マッサがプラトンの記述した場所である確率は少なくとも99.999999999721%になります。これは歴史的に非常に重要な意味を持ちます」

     やや強引な主張だが、ヒューブナーはアトランティスは海の底に沈んだのではなく、津波に飲み込まれたと断言している。これまでの現地調査から、神殿のような遺跡や、アトランティスの環状型都市構造を示す隆起や円形の乾いた川床が見つかっていることなど数々の証拠を挙げ、スース=マッサ平原を調査することは、失われた超古代都市の謎を解く手がかりになると主張しているのだ。

    現地調査をするヒューブナー氏。中央に写っているのは石造建築物の遺跡だという。画像=https://andrewgough.co.uk/was-atlantis-in-morocco/ より

     事実、ヒューブナー氏が使用した51の属性は、アトランティスを裏付けるに十分説得力のあるものである。海と首都ポセイドニアをつなぐ水路の長さが50スタディオン(約13キロ)といった詳細な都市構造の数値の他、気候や資源、雄牛の儀式が存在していたか、など非常に細かいものであった。

     これらが44も一致していたとなると、スース=マッサ説が真実味を帯びてみえるが、この説が世界的に注目を集め始めた2013年、残念ながらヒューブナーは交通事故でこの世を去ってしまった。現在は、弟のセバスチャン・ヒューブナーが氏の意志を継いで研究を続けており、考古学さらには地質学からも調査を進めているそうだ。

    「ここがアトランティスの首都ポセイドニアだったという確信しかありません。多くの学者は古い意識を変える必要があります」

     弟のセバスチャンは、アトランティス=海に浮かぶ大きな島というのは”誤訳”であると指摘、プラトンがアトランティスを説明する際に使用した「ネソス」という単語は、”水に囲まれた島”ではなく、”三方を水に囲まれた陸地”または”デルタ地帯”を指していたと解釈できることが明らかになったのだという。

    現地調査で岩を割ったところ、中から水晶が出て来たそうだ。画像=https://andrewgough.co.uk/was-atlantis-in-morocco/

     これが事実であれば、さらにスース=マッサ説が有力となるのは間違いないだろう。しかしながら、驚異的な文明を築きながらも一昼夜にして滅んだアトランティスの伝説は世界各地で多くの痕跡を残しているのだ。今後とも彼らの研究に注視していきたいと思う。

    スース・マッサ平原の要塞の遺跡。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tighremt,_Agadir,_Region_Souss-Massa-Draa.jpg より

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

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