<体験>夜釣りに興じていたところ何ものかに憑依された!?
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◆瀧 次郎/大分県臼杵市
社用で乗ったタクシーの運転手さんから聞いた話です。運転手さんの年齢は66歳。仮にその運転手さんを“松さん”としておきます。
「私は釣りが好きでね。同僚とか近所の人といっしょに、毎年、12月31日の夜から元旦にかけて夜釣りに行くんですよ。皆、65歳そこらです」
こんなふうに話が始まりました。
私は、年末年始やお盆などは釣りをしたり海辺に近づいたりしないほうがいいのではないかと思いましたが、黙って話を聞いていました。
「2年前、えらい目に遭いましてね。5人で釣り船に乗っていたんです。その日は波も穏やかで、わずかに夜風が吹いていました」
しばらく釣り糸を垂れていると、釣り船の後ろの海上から、
「よーい、よーい」
と、呼ぶ声がします。
近所から参加の“ごっさん”が最初に声に気づき、叫びました。
「船尾にいた“タカやん”がいないぞ」
大騒ぎになり、大きなライトで海面を照らしながら、皆で口々に、
「おーい! タカやん! ! どこだ!?」
と、声をかけます。
「よーい、ここじゃ! 上げてくり! !」
釣り船の5メートル後方の海上で漂う “タカやん”の姿が見えました。
“松さん”が救助ロープを投げ、釣り船を岸壁に近づけ、ロープが緩まないように岸壁の角にロープを引っかけます。そして鉄柱に巻きつけ、綱引きのように引っぱりました。
人間が海水に浸かると岩のように重くなります。助けたあとロープを見ると、ちぎれる寸前でした。
どうして海に落ちたのかと、みんなが“タカやん”に聞きました。
「それがよくわからないんだ。船から降りても安全だと思い、自分から海に入った……」
これが答えでした。
そこまでは無言で話を聞いていましたが、つい声が出てしまいました。
「それってやばい話じゃないですか!? 憑かれたとか……」
間髪入れず“松さん”は、
「そう、それよ。しかも、今度は“ごっさん”がおかしくなって……」
そういいながらタクシー運転手の“松さん”は話を続けます。
釣り船を降りて、みんなで駐車場まで戻ってきました。だれもが疲れはてて脱力しています。
それでも“タカやん”から目を離しません。“タカやん”がまだふつうの状態ではなかったからです。
やがて新聞紙の上に持ちよったお菓子やらお茶やらを広げて、たわいもない話に興じていました。
そのときです。“ごっさん”が豆菓子の個包装になっている小袋を、食べもしないのにバリバリ、バリバリと乱暴に開けはじめました。
驚いたみんなが“ごっさん”に声をかけますが、まったく耳に届いていない様子です。
駐車場に豆が散乱するのもお構いなしに、“ごっさん”は豆菓子を開けまくり、そこいらに散らばった豆を乱暴に食べはじめました。その姿はまるでゴリラそのものでした。
たまらなくなった“松さん”が、
「ごっさーーん! !」
と、叫びながらごっさんの肩をガシッと鷲づかみにしました。
「あれが憑依するというやつなのかねえ。でも、一番大変だったのは、荒縄のロープで手の皮が剥けたまま“ごっさん”の肩を力一杯、鷲づかみした俺だったりして」
タクシーの運転手の“松さん”は照れ笑いしていました。
(本投稿は月刊『ムー』2026年02月号より転載したものです)
<編集部より>
強烈な心霊体験を、笑い話で語れる運転手さんがすごい。
夜の海でしかも年をまたぐ日というのは、異界にひょこっとつながっていそうです。
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