<体験談>墓地の跡地に地鎮祭もせず家を建てた夫婦に起こったこと

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◆瀧 次郎 大分県臼杵市

  7年前の出来事です。
 仕事から帰宅すると、わが家の前の空き地に、白いビニール紐で戸建ての部屋の区割りがされていました。
 通常、家を建てるにあたり、着工前に地鎮祭をするのが一般的かと思います。しかし家族に聞いても、
「何もしていなかったよ」
 との返答です。なるほど地鎮祭のお札も立っていません。
 そこはもともと小麦畑で、その端に7~8基の古いお墓がありました。1基に「立妙童子」と彫ってあります。つまり水子供養のお墓です。
 子どものころ祖父からお墓のいわれを聞いたことがあります。
 小麦畑の中央に土道があり、そこは隣村からやってくる人たちの通り道でした。お墓は、道中、行きだおれた人たちの無縁墓なのだそうです。
 水子供養の墓は、お遍路の途中で生まれたものの、まもなく亡くなった幼い子供を弔とむらうためのもの。あとで引きとりにくるからといって、親がその土地の地主に子供の亡骸を預け、結局、引きとられなかった哀れな子供のお墓だそうです。
 このようないわれのある場所に家を建てたのは、公務員のOさんご夫婦です。
 建物には明かりとりの天窓があり、全体のカラーはグレー。シンプルな平屋建ての家です。
 日当たりのいい建物の裏側にはバルコニーとバーベキューセットがあり、建物の手前には15×4メートルほどの畑があります。
 引っ越してきた当初、嬉々としてその広い畑でOさんは作物を作っていました。ところが1年ほどたつと、耕作を止めてしまったのです。
 畑には雑草が伸び放題。草刈り機を自前で持っているにもかかわらず、Oさんは草刈りすら業者に頼むようになりました。
 夜になってもカーテンを引かず、煌々と家中の明かりが外に漏れています。さしずめ光りかがやく屋形船といったところでしょうか。
 入居してしばらくは、いうまでもなくカーテンを引いていました。
 朝、私が庭でストレッチをしていたときのこと、Oさんの家の玄関から勝手口までの7メートルほどの距離を、人影がシュッと移動していきました。驚くことにその人物は地面から足が浮いています。
 さらに、Oさんの家の車庫の前でも、黒いガスのようなモワモワしたものを見たことがあります。縦が1メートルほどの大きさだったでしょうか。どうやらOさんご夫婦も気づいたらしく、しばらくふたりで検分していました。
 このときの様子から、特にOさんの奥さんが神経を擦りへらしている様子が見てとれました。
“霊が嫌がるように夜間でも家のライトを照らしているのかな?”
 と、このときふと思ったものです。
 ある冬の日のこと、ダウンジャケットを着た大柄な男の人がふたりやってきて、四方からOさんの家をカメラで撮影していました。
 泥棒かもしれないと、Oさんが相談したことが発端らしいのですが、詳細はわかりません。
 MさんはOさんの裏庭の横に住んでいます。
 夜間、Oさんの家の裏庭で、白や緑色のオーブと、縦に光る筋を数本見たことがあるそうです。
「陽当たりはいいのに、Oさんの家ってなんか寒々しいのよね」
 と、Mさんはいっていました。
 現在、Oさんの奥さんは風水に凝りだしたそうです。
 何より私が気になるのは、7~8基あったお墓を、業者がどこにやったのかという点です。まさか山奥に捨てたりなどしていなければいいのですが……。

(本投稿は月刊『ムー』2025年11月号より転載したものです)

<編集部より>
なにかあってからの風水よりも、事前の手続きが重要だった気がしてなりません。

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