<体験談>あの世からおばあちゃんがお父さんをお迎えに……

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◆上田美千代/千葉県

 お父さん、そちらの世界の居心地はどうですか? あのとき伝えることができなかったことを、今、話しますね。
 お父さんが旅立ったのは2022年5月18日。じつは私はその4か月前から、お父さんがもうすぐ死んでこの世からいなくなってしまうのではないかと感じていました。
 1月末に実家に顔を出したときは、お父さん、とても元気でしたね。その姿にすごく安堵しました。じつはお父さんが元気かどうか、不安で、心配で、確かめるのが怖くてならなかったんです。
 なぜかといえば、遡って1月中旬にある夢を見たからです。それは新年が始まって初めて見た夢でした。内容はすでに亡くなっている美代おばあちゃんの夢です。
 美代おばあちゃんと私は、ふたりで実家の玄関ドアの前に立っています。そして家の中にいるお父さんに向かい、私が、
「お父さん! 美代おばあちゃんが“迎えに”きたよ!!」
 と、声をかけたところで夢から目覚めました。
 私はしょっちゅう夢を見ますが、この夢はあまりにも鮮明でした。そのため目が覚めたあともずっと記憶に残っていました。
 具体的にどうとはいえませんが、普段、見る夢とは感覚的に違ったので、もしかするとこれは予知夢なのではないか、そんな気がしてなりませんでした。
 このような経緯があったため、1月に実家に顔を出した際、お父さんの元気な姿を確認することができて、すごく安心したんです。
“夢でよかった! きちんと会話ができて本当によかった!!”
 心からホッとしました。
 そのとき、お父さんに夢の話をしようかと思いましたが、
「お父さんを迎えに美代おばあちゃんがここに来る夢をみたよ」
 などといえるわけがありません。そのため、あのときはだれにもいわず黙っていました。
 2月に入り、お母さんから電話がかかってきました。
「お父さんが入院したから。危ない状態らしい……」
 そう知らされた私は、
「お見舞いにいく!」
 と、いったものの、コロナ禍で面会はできないといわれました。
 お母さんでさえ着替えを持っていったときや、書類を書く必要があるときなど、必要最低限のときしか面会させてもらえなかったそうです。
 そのとき、私が見た夢の話をお母さんにしたところ、
「おまえは子供のときから霊感があったよね……」
 と、いわれました。
 その後、5月までお父さんは頑張ってくれたけれど、ついに5月18日、美代おばあちゃんがお迎えにきたんですね。
 夢の話、お父さんには伝えていないままだったから、今、ここで話しました。生前はいえなかったけれど、今ならお父さんも、
“そうだったのか”
 と、受け入れることができるんではないでしょうか。
 美代おばあちゃんの夢のお陰で、お父さんが亡くなっても私の動揺は少なくてすみました。美代おばあちゃん、ありがとう。
 自分を産んでくれた母親が迎えにきてくれるなんて、お父さんは最期のときまで本当に幸せな人生でしたね。

(本投稿は月刊『ムー』2025年8月号より転載したものです)

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