〈オピニオン〉娘への読み聞かせで甦る絵本の記憶

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マリモ

 今から10年前、当時私は40歳、4歳の長女のために、よく絵本の読み聞かせをしていました。
 ある日、図書館で『もこ もこもこ』という絵本を借り、長女に読んであげました。読み進めていくと、突然、ある記憶が甦りました。

 小学5年生のときの教室の記憶です。
 担任の若い女性のU先生が教壇に立ち、この絵本を児童が見えるように持っていました。

(これは、かつてU先生が読み聞かせしてくれた本や!!)

 U先生は「面白い本がある」といい、読んでくれたという記憶が蘇ったのです。

 私が感慨に耽っていると、急に理性がブレーキをかけました。

(待てよ。そんなに古いか? 小学5年生の時、1985年に出版されていたとは思えんぞ。この記憶、間違いでは?)

 そこで本の発行年を確認しようと裏表紙をめくりましたが、貸し出し用カバーを貼る都合で、出版された年が記された箇所は見ることができませんでした。

 その後、調べてみると、『もこ もこもこ』は1977年に出版されていました。私の勘違いで、世代を越えて読み継がれている名作だと、そのとき初めて知りました。

 あまりにも斬新な内容ゆえ、そんな昔に出版されていたとは思えなかったのです。
 名作の持つ力と人間の記憶の不思議を感じた出来事でした。

(本投稿は月刊『ムー』2025年7月号より転載したものです)

〈編集部より〉
谷川俊太郎さん作と元永定正さん絵の名作ですね! 時代を超えた絵本が、記憶が甦るスイッチになったのですね。

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