<体験談>交通事故で亡くなった子供が娘を道づれにしようとした!?

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◆吉田 浩/佐賀県伊万里市

  私が5歳のときに母が体験した出来事です。
 当時、私たちが住んでいた家は、今から50年ほど前、交通事故で子供が亡くなった場所の近くにありました。
 それと関連があるのかはわかりませんが、だれもいないのに廊下を歩くようなミシッ、ミシッという音がしたり、金縛りに遭ったりと、しばしば怪奇現象に見舞われました。
 特に母がそのような現象を頻繁に体験していました。
 私には2歳年下の双子の妹と弟がいます。妹が先に生まれたので、小さいころ、弟は妹のことを、
「お姉ちゃん」
 と、呼んでいました。
 私たち家族は四畳半の部屋を寝室とし、皆で寝起きしていました。双子の妹と弟は、枠つきのベビーベッドの中で仲よく寝ています。
 ある日、父と私が父の実家に泊まりにいったため、その日は母と妹と弟の3人で寝ることになりました。 妹も弟も、普段、夜泣きはめったにしないのですが、どういうわけかその夜は、眠っていた弟が、
「お姉ちゃん、だめ! 行っちゃだめ!!」
 と、突然、寝言で叫んだそうです。
 目を覚ました母がベッドを覗いたところ、妹はスヤスヤ眠っています。
 弟を起こし、
「お姉ちゃんは隣にいるよ。どうしたの?」
 母が尋ねると、
「お姉ちゃんが行っちゃう!」
 といい、泣いていたそうです。
 母は笑いながら、
「怖い夢を見ただけだよ。でも、もう大丈夫」
 といって、弟をあやしました。
 直後、隣の居間に繋がる襖ふすまがスーッと開いて、だれもいないはずの居間からウルトラマンのおもちゃが急に音を鳴らしはじめたそうです。背中にあるボタンを押すと、シュワッチと音が出るおもちゃです。
 恐ろしくなった母は、とっさに、
「だれかいるの?」
 と、叫びましたが、人の気配はありません。
 母は襖を急いで閉め、弟と妹を自分の布団に移し、抱きしめながら、
「もう大丈夫よ」
 と、いいきかせていたそうです。
 しばらくするとおもちゃの音が止み、ホッとしたものの、母は一睡もできずに朝を迎えました。
 母は弟に、昨夜、起きたことを聞いてみましたが、弟はまったく覚えていなかったそうです。妹も、「おかあさん、夢を見たの?」
 と、笑っていたそうです。
 その日を境にして、母がこのような怪奇現象を体験することはなくなりました。
 母は、
「昔、交通事故で亡くなった子供が妹と遊びたくて、あちらの世界へ連れていこうとしたんじゃないかしら。でも、それを察知した弟が、連れていかれないように泣いて自分を起こしてくれたのでは……」
 と、話しています。
 数年後、私たちは引っ越すことになりました。引っ越し先では、不思議な物音を耳にしたり、金縛りに遭うことはありません。
 早いもので20年以上がたちましたが、あのときの母の推測は正しかったのでしょうか? ふと、そんなことを思ったりします。

(本投稿は月刊『ムー』2025年6月号より転載したものです)

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