<体験談>畑から聞こえるうめき声は大叔父の無念の声か?
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◆新村/静岡県浜松市
母から聞いた、今から3〜4年前の出来事です。
わが家はもともと農業を営んでおり、祖母の実家は商売を生業としていました。
祖母の実家が商売する様を子供のころから目にしていた父は、大きくなったら自分も商売をしたいという願いを持っていたそうです。
実際、成長した父は家業である農業を継がずに、農業高校卒業とともに親の反対を押しきり、商売の道に進みました。
しばらくして祖父が亡くなりました。死因は膵臓がんです。
これをきっかけに、祖母だけでは広い農地を維持するのが難しくなり、考えぬいた結果、祖母の弟に当たる大叔父に農地を貸すことにしました。
大叔父は、当時、会社役員をしていましたが、そのかたわら農業にも従事していたのです。
以後、30年の月日が流れ、父の商売を手伝っている母が、仕事の合間に農作業をするようになりました。
借りた農地で、長年、農業を営んでいた大叔父も、年を取り、傍は目ら見て農作業をするのがしんどそうに見えたため、
「そろそろ大叔父から農地を返してもらったらどうだろう?」
と、父に提案し、貸していた農地を大叔父から返してもらうことになりました。
数年後、大叔父が逝去。それ以後、なんとも奇妙な怪奇現象が起こりはじめたのです。
まだ日も昇らない暗い時間帯から、大叔父から返却された農地で母が農作業をしていると、どこからともなく男性のうめき声のような声が聞こえてきたといいます。
“いったいだれのうめき声だろう。気持ち悪いな”
と、思ったものの、予定した時間内に畑仕事を終わらせなければならず、作業を続けました。
「人間ではなく、ねずみか何かが鳴いているのかもしれない」
そんな思いに至った瞬間、うめき声がする方角に石を投げてみました。
するとうめき声が鳴りやんだのです。
ところが、しばらくするとまた男性がうめいているような声が聞こえてきます。
しかし、不思議なことに朝日が昇りはじめると、いつの間にか声が聞こえなくなったといいます。
この謎の現象は2週間ほど続きました。ところが、ある日を境にパタリと聞こえなくなったそうです。
神道を信仰していた大叔父の葬式の際、神職が、
「お亡くなりになった方は、生前、思い入れのある場所にしばらく現れることがあります。その際は怖がらずに、温かく見まもってあげてください」
と、いわれたのを思いだしたと、母がいっていました。
さらには、
「長年、あの畑に携わっていたんだもの、思いいれのある場所として来ていても不思議ない」
ともいっていました。
そうはいっても、うめき声でなくてもと、つい思ってしまいます。
半ば強制的に農地を返却することになったため、そのことを大叔父は根に持っていたのでしょうか。
年を取り、農作業をするのが辛そうそうに見えたからといって、大叔父にとっては愛着のある場所には違いなかったのでしょう……。
(本投稿は月刊『ムー』2025年6月号より転載したものです)
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