<体験談>深夜の部室内で、私の問いに答えてくれたのはだれ!?
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◆アンナマリア
大学3年生のときの出来事です。
当時、私はロシア関係のサークルで副部長をやっていたこともあり、忙しい毎日を送っていました。
サークルというと規模が小さく感じられがちですが、100人以上が所属する大所帯です。
毎年、新学期が始まり新入生が入部すると、サークルメンバーの名簿を作るという大仕事があります。私は副部長でしたので、夜遅くまで部員の名簿作りに取りくんでいました。 その日は部室内に私以外にも数人の部員がいたように記憶しています。「田村」という2年生の部員の下の名前を記載すれば、あとはもう印刷するだけという段階までこぎつけました。ところが、「田村」という部員の下の名前がわかりません。
彼はバスケ部にも所属しているため、こちらのサークルにはあまり顔を出すことがなく、私は話をしたことがないかもしれません。
「ねえ、2年の田村君の下の名前ってなんだっけ?」
部員に質問を投げかけてみました。
しかし、だれも答えてくれません。
「知らない? 田村君の下の名前」
部室の雰囲気が、なんだか異常です。静まりかえって、みんなが私のことを無視しているような……。
「ミサキだよ」
と、どこからか、はっきりとした声でそう答えるのが聞こえました。
「どういう字を書くの?」
すかさず聞きかえしましたが、私の問いに答えてくれる人はいません。
「仕方ないわね」
結局、田村という部員の下の名前を書きこむことができないまま、私は家に帰ることにしました。
翌朝、名簿の進捗が気になって、朝早くに部室へ向かいました。
するとどうでしょう、空欄だった田村君の下の名前が書きこまれています。しかも、印刷までされいて、名簿が完成していました。
気になっていた2年生の部員、田村君の欄に目をやると、「田村克己」と、印刷されていました。
“カツミ? おかしいな、ミサキじゃないの?”
違和感を感じながらもサークルのイベントや授業で忙しく、やがてそのことはすっかり忘れていました。
4年生に進級し、サークルには新入生が入ってきて、再び名簿作成の時期がやってきました。
私はすでに副部長を引退し、名簿作成にもかかわっていません。
できあがった名簿を見ると、新入生の中に「田村美沙琴」という名前の部員がいました。
「この人の下の名前、なんて読むの?」
部室内で尋ねてみました。
「ミサキだよ」
と、部員が答えました。
それを聞いた瞬間、私は鳥肌が立ちました。1年前、だれかが私に、「ミサキだよ」
といったのは、1年後に入ってくる新入生のことを予言していたのでしょうか?
バスケ部にも所属している田村君は、実際に存在します。新入生の田村さんとは、偶然、名字が同じなだけで、なんの関係もありません。
私が不思議に思うのは、1年前の深夜、部室で私に、
「ミサキだよ」
と、伝えてきたのはだれだったのかということです。そして、その目的は? 不思議でなりません。
<編集部より>
歴代の名簿をチェックしたくなります。ロシア語でも「岬」は「ミス」に近い発音ですね。
(本投稿は月刊『ムー』2025年4月号より転載したものです)
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