<体験談>トンネルでの怪異

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遥か昔、数十年前のお話ですが、当時の私は滋賀県の僻地で暮らしており、そこには手堀りのうえ、内外に不気味な鉄骨がヤグラの様に組んであるトンネルが存在しました。

全長は数百メートル以上と結構な距離があり、一応、自動車も通過可能ですが、狭路のために併走はできず、もしトンネル内で対向車と出くわした際は、一方が坑口まで延々バックしてやり過ごさなければならない、とても危険なとても小さな単線トンネルです。

そして、その峠のトンネルの麓に集落があり、そこに住む友人が言うのです。

「すぐ近くにお稲荷さんがあって、季節ごとに地域の皆で祭礼をしてるのよ」

また別の友人はこう言います。

「この辺りは昔からキツネがいて、化けて旅人に悪戯するんです。温泉と偽って冷たい川に沈めたり、お団子やお饅頭と思わせて汚物を食べさせたりと、とっても気を付けなければならない危険な場所なんです」

ある日、そのトンネルを何気なく通りました。

いつものように薄気味悪いトンネルですが、別段変わったこともなく普通に通過したと思った次の瞬間、バックミラーをチラッと見たら、すぐ後ろに黒色のプリメーラワゴンがいる……!

「さっきまで後ろに車はいなかったはず……! 気付かないうちに一気に追い付いた!?」

そう思い、驚いて振り返ると、そこは単なる真っ暗なトンネル坑口と静寂の峠道……。プリメーラワゴンは消えていました。

怪訝に思いながらも視線を戻して前を見ると、なんと麓からこちらに向かって猛スピードで真っ直ぐに向かって来る、さっきと同じ黒色のプリメーラワゴン……!!!!

本当に仰天しました。

しかし、前方から向かってくるワゴンは、木々に視界を遮られると同時に消え失せていたのです。

(断言しますが、超が付くクルマ好きの私が一瞬のチラ見でも車種車型を誤認するなんて絶対に絶対に有り得ません)

以前からキツネの話を耳にして気持ちが盛り上がってたのも事実だし、心のどこかに「悪戯されるかも?」なんて期待が少なからずありましたが、なぜいきなりプリメーラワゴンが出現したのか?

だって、プリメーラなんて欲しかった訳でもなく、興味があった訳でもなく、今まで考えたこともなかったクルマですよ。

幻覚としても全然納得がいかないし、もしこの現象がキツネの仕業なら、その悪戯もとほうもなく進歩したものです。

江戸時代ならニセの大名行列で人々を欺いたであろうに、21世紀はプリメーラだなんて!(笑)

未だに理解できない不思議な体験、かつ本当に素敵な素敵なファンタジーでした!

(imotty)