<体験談>没後30年でも感じる亡くなった父の気配
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◆草野千早 岩手県
私が19歳の年の秋に、父が事故で亡くなりました。
和室に父の棺を置いていたのですが、父ひとりでは寂しいと思い、家族全員でその部屋で眠ることにしました。
夜中、目が覚めた私は、畳の上をすり足で歩く人の気配を感じました。棺のある側から私が寝ているほうへ、ゆっくりと歩いてきます。まだ起きていた母が、眠るため、これから布団に入ろうとしているのでしょう。そう思い、母の布団を見たところ、すでに母はぐっすり眠っていました。
姉や兄もすでに布団の中で眠っています。部屋の中を見まわしましたが、もちろんだれもいません。
"もしかすると、お父さん!?"
あれが父だったのだと思うと、恐怖心はありませんでした。
早いもので、父が亡くなって30年がたちます。あの夜以降も父の姿を見ることはありません。しかし、たまに家の廊下で父が吸っていたタバコの匂いを感じることがあります。そんなときは、父が家に帰ってきているのかなぁと、嬉しく思っています。
(本投稿は月刊『ムー』2025年3月号より転載したものです)
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