<体験談>山間に住む老人を訪問して以降、みるみる運気が向上した
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◆鈴木悠矢 愛知県
20年近く前のことです。家庭の事情で会社を辞め、武道家としての道を歩みはじめてすぐのころでした。
私が大学生のときに父が道場を開いたのですが、まだ創設1年足らず。そのため生徒も少なく、実入りもなく、あるのは時間ばかりです。
やりたかったことをすべて諦めて父の道場を手伝いはじめたので、絶望を感じる日々でした。
代々、受けつがれてきた道場ではなく、父がやりたくて始めた道場だったので、ノウハウがありません。私は苦悩の日々を過ごしていました。
ある日のこと、会社勤めをしていたころの同期から連絡がありました。
「最近、どうしてる?」
優しく問いかけてくれる友人に、開口一番、愚痴が出てしまいました。
「辛い。でも、俺がいないと道場は成りたないから……」
さらに、
「俺、なんのために生きてるのかな」
と、泣き言を重ねながらも、自分の存在を消してしまいたい気持ちを必死で抑えていました。
そんな私を見かねたのか、友人がある提案をしてくれました。
「俺の知りあいにいろいろわかる人がいるから、見てもらわない?」
今、思えば、友人の知りあいは、霊能力的なものがある人だったのではないでしょうか。
友人に誘われ、その人を訪ねることになりました。
「お土産もお金も受けとらない人だから、手ぶらで来て」
そういわれ、そのとおり何も持たず、友人と、友人の母親、そして友人の姉とともに、東海地区のある山奥に出向きました。
秘境のような山間の集落の外れにある民家に友人の知りあいはいました。高齢の男性です。
男性のお宅にお邪魔すると、さっそくいろいろ見てくれました。
まず、紙に私の名前を書くと、ぼそぼそと話しはじめました。
「名前が悪い……」
当時の私の名前は、姓名判断上、どこでも完璧だといってもらえるような名前だったのですが、それとは違う見方をしているようでした。
「見えない……」
友人の母が、心配そうな様子で教えてくれました。
「こんなことは滅多にないんだけどね。あなたは特別なのかもしれない」
しばらく男性は目を閉じながら、何か考えごとをしているようでした。
「あんたのお尻のあたりから何かが出とる。龍じゃな。龍はよいこともあれば悪いこともある」
しばらく間を置いて、さらに言葉を続けます。
「でも、大丈夫。なんとかなる」
私はその言葉に安心し、気持ちが晴れてきたことに気づきました。
帰り際、高齢の男性は、
「またおいで。いろいろ話をしよう」
そういって見送ってくれました。それを聞いた友人の母親が、
「“またおいで”なんて言葉は、今まであの方から一度も聞いたことがない。ぜひまた行ってみるといいよ」
と、いってくれました。
やがて武道家としての仕事が忙しくなり、各地へ空手指導に出かけることが増えました。忙しさにかまけているうちに、あの高齢の男性は亡くなってしまったそうです。寸暇を惜しんででもあの老人と会い、再度、きちんと見てもらいたかったと後悔しています。
(本投稿は月刊『ムー』2025年3月号より転載したものです)
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