<体験談>タクシー運転手から聞いた「墓地で消えた女性客」の話

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◆斉藤直美 山口県

 これから紹介する奇妙な話は、タクシー運転手を生業としている知人から聞いた話です。ちなみにその知人は女性です。 
 11月の肌寒くなったある日のこと、ドライバーである彼女は、とある人気のない場所でひとりの女性客を乗せました。髪はセミロングで、体つきは小柄。非常に無口な女性客だったそうです。
 その女性客が乗車した時刻は深夜0時を少しまわったころでした。車内に設置されている時計を確認したので、間違いないそうです。
“こんな真夜中に女性がひとりでこんな場所から乗車するなんて、いったいどうしたんだろう”
 そんなことを思いながら車をゆっくりと走らせました。じつはこの時点では、女性客は目的地を指示してくれていないそうです。
 やがて心配になった知人が、
「どちらまで行かれますか?」
 と、聞いてみました。
 さらに、
「お客さん、終電にでも乗りおくれたんですか?」
 とも聞いてみたそうです。
 しかし、女性客はただのひと言も言葉を発しません。
 どれくらいの時間が経過したころでしょうか。ようやく、
「○○○○(目的地)へ行ってください」
 と、まるで蚊の鳴くようなかぼそく弱々しい声で目的地を伝えてきました。
 やがてタクシーは指定された場所へ到着。
 そこまでの運賃をいただいた後、降車する女性客を見送るため、知人は後部座席を振りむきました。
 が、だれもいません。それまでいたはずの女性客が、跡形もなく消えうせてしまったというのです! !
 知人の運転手はどれほど動揺したことでしょう。
 なお、余談ですが、女性客が指定した目的地は、霊が出没することで有名な墓地だったそうです。
 女性運転手が乗せた女性客は、その墓地に眠る霊だったのでしょうか。

(本投稿は月刊『ムー』2025年2月号より転載したものです)

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