国勢調査で悪魔崇拝者の多さが判明した話など/南山宏のちょっと不思議な話

文=南山宏 絵=下谷二助

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    「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2026年4月号、第504回目の内容です。

    失敗は成功の元

     カナダ・オンタリオ州の名門公立大・ゲルフ大学の生物研究者たちは、実験に失敗したおかげで成功した!
     彼らの研究チームはマルハナバチ(蜜蜂に近いが、性質はずっと温厚)の冬眠中の女王蜂をついうっかり水中に1週間も浸しつづけ、実験失敗に気づいて慌てて水中から掬い上げたが、それでも依然として生きていると知って驚いた。
     同大環境科学部の主任研究員ナイジェル・レイン教授は、「まったく信じがたい事実だ!」と首をひねる。「彼らは本来、陸上の生物で、水中で生きるようには設計されていないはずだが……」
     そこでこの大発見をもっと詳しく調べようと、東半球に棲息する143種のマルハナバチのうち入手可能な女王蜂をすべて、最長7日まで水中に沈めてみた。
     その結果突き止めたのは、マルハナバチの女王の生存率が、陸上でも水中でもまったく変わらないという驚くべき新事実だった!
     実際にも寒冷な季節になると、マルハナバチの女王たちはしばしば、川土手に掘られた濡れた小溝の中で冬眠して越冬するのだ。
     レイン教授の研究チームは、水中に沈んだ時の女王蜂たちのこのような耐久力は、進化の過程で獲得した洪水環境に対する適応能力にほかならないと推理している。

    空砲一発

     米ネブラスカ州ランカスターの結婚式司会業マイケル・ガードナーさんは、とある結婚式でお祝いの号砲を鳴らして出席者の注目を集めようとしたばかりに、危うく犯罪者扱いされそうになった。
     ふところから号砲を取りだして引き金を引いたつもりが、手が滑ってそばに立っていた少年の肩を射ってしまったのだ!
     幸い、弾丸が本人手作りの空砲だったため、少年の怪我はほんの擦り傷ですみ、居合わせた一同はほっと胸を撫で下ろした。

    悪魔崇拝の町

     国勢調査は文明国ならどこでも定期的に実施されているが、さすがにこれはちょっと異例だろう。

     5年前の2021年、原則10年ごとに実施されるイギリスの国勢調査では、なんと〝悪魔崇拝〟が調査テーマになった。
     その結果判明したのは、美しい田園風景で知られる一見のどかなサフォーク州内の小さな町バンゲイが、住民8500人中なんと121人にひとり、つまり合計で70人強がサタニスト(悪魔崇拝者)を名乗る、同国一悪魔崇拝人口が大きい町という新事実だった。
     もともとこの町には1577年の昔、激しい雷雨が襲った深夜、悪魔が黒犬の姿で教会に出現し、礼拝に寄り集う民衆に襲いかかったという恐怖の伝説がある。

    シャーッ!

     スウェーデンの首都ストックホルムにあるスカンセン野外レジャー博物館で、スタッフが館内を清掃中に〝シャーッ卿〟なる仇名の猛毒キングコブラが、棲み家の水槽から逃げだしてしまった。
     館員たちは鼠の死骸を餌にした粘着トラップを用意したり、床に小麦粉を撒いて逃亡の痕跡を捜したり、壁の窪みに自動カメラを設置して映像をチェックしたりと、毒蛇の追跡と捕獲に大わらわになったものの、結局、あらゆる努力は徒労に帰した。
     最後には借りてきたX線走査装置で天井裏を調べ、ついにシャーッ卿の所在を捜し当てたものの、いざ電動工具を使って天井裏に突入を図るや、またもやどこかに雲隠れしてしまった。
     結局、キングコブラは館内探検にも飽きたのか、いつのまにか棲み家の水槽に舞い戻っていた。

    人捜し異聞

     2014年7月、中国貴州省安順市のとある老人ホームから、卓康国(仮名)という男が逃げだした。その数か月後、近くで交通事故があり、年恰好がよく似た男性が車に轢かれて死亡した。
     男の家族も轢かれたのは卓康国で間違いないと認め、男は検死解剖もないまま火葬に付された。
     それから9年後、巨大直轄市の重慶で、当局は市内で奇妙な振る舞いをする怪しい人物に手を焼いていた。身元を確認したくても返答を拒むので、強制的にDNA検査をしたところ、卓康国の弟のDNAに近いことが判明した。
     卓康国の孫も、交通事故の犠牲者の手配写真が祖父そっくりなことを認めた。重慶で奇妙に振る舞っていた男は、その孫に出会うとどっと涙を溢れさせた。
     2023年2月27日付「デイリーメール」紙によれば、2014年に轢死して埋葬された(卓康国によく似た)男性はいったいどこのだれなのか、再び新たな人捜しが始まっている。

    火球落下

     イタリアのマテーラで、ジャンフランコ&ピーニョ・ロシニョーレ兄弟とその両親が住む家のベランダに隕石が落下した時、彼らは当初そうとは気づかなかった。
    「母さんはその時地下室にいて、ドカンという大きな音を聞きつけた。ちょっと心配はしたけど、とても風の強い日だったんで、庭の木の枝でも折れて落ちたんだろうと思ったそうだ」
     ジャンフランコは説明した。
    「まさか、隕石が落ちてきただなんて、まったく思いもしなかったよ!」
     ロシニョーレ兄弟が太陽電池パネルを点検し、1枚が破損してベランダ中に灰色の破片が散らばっているのに気がついたのは、3日も経ってからだ。
     一方、当地在住の天文学者たちも、この隕石が火球として大気圏内に突入してくるのを追跡していたので、どの付近に落下したか、おおよその見当はついていた。
     彼らが隕石の破片をその付近で捜している最中に、ロシニョーレ兄弟の家族から通報があった。
     とどのつまり、イタリア国立天体物理学研究所が隕石70グラムを回収して、この隕石をロシニョーレ兄弟の名前で呼ぶことにした。
     天体物理学者カルメロ・ファルコ博士は、兄弟にこう感謝する。
    「ベランダに落ちたおかげで、隕石がまるで宇宙の真空中で発見されたかのように、地球の水分や土壌にほとんど汚染されない状態で回収できた!」

    南山宏

    作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。

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