観客を宇宙の果てまでぶっ飛ばす! 修行者たちが対決し、その意識を別世界に飛翔させる映画「次元を超える」監督インタビュー
修験の山から宇宙までつながる、前代未聞の映画が公開中! 特異な世界の背景を監督に聞いた。
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高校生YouTuberが神にストーキングされる!? 奇妙でユーモラスな神霊映画が1月16日より公開。
*インタビューには作品内容に触れた部分があります。ネタバレにご注意してお読みください。
古来日本人は、神話や民間伝承の神様はもちろん、歴史的な事件を起こした人たちも神として祀ってきた。また、山や岩などの自然物に神が宿ると信じ、神の使いとしてキツネやカラスといった動物たちも崇めてきた。
こうして無数の神様が信仰されるようになった日本には、人々に忘れられた不運な神様も存在することだろう。そのような正体不明の神様に、現代の女子高校生が取り憑かれたら、どんな事態になるのだろうか?
そんな斬新な設定のホラー映画が誕生した。人気YouTubeチャンネル『kouichitv』を手がける動画クリエイターのコウイチが長編映画監督デビューをはたした『とれ!』だ。
舞台はある地方都市。高校3年生になった美咲は、シングルマザーの母親にこれ以上負担をかけたくないため、進学はせず、地元で就職しようと思い、変わらずバイトに励んでいた。ある日、親友の皐月にすすめられ、スマホでVlog(ビデオブログ)を始めたところ、背後に霊のような人影が映り、一気にバズってしまう。そこでふたりは、心霊フェイク動画を撮影、投稿してお金を稼ごうと思い、森の中の廃墟へ向かった。すると、帰宅後、美咲は、お面をかぶった和服の男がついてきていることに気づく。無言でいつもそばにいるが、その姿は美咲にしか見えない。困り果てた美咲は、ネットで皐月が見つけた霊能者の浅野に助けを求めるが、憑いているのは神様のような存在なので祓う必要はないと言われてしまう。それより皐月に悪霊が憑いていると告げられるのだった……。
こうして映画は、神様に憑かれた美咲、悪霊に憑かれた皐月のふたりに次々と降りかかる怪異を描いていく。脚本も自ら書いたコウイチ監督にユニークな物語の秘密を聞いた。
──何より、神様がストーカーのように女子高校生につきまとうというアイデアがすごくおもしろかったのですが、思いついた経緯を教えて下さい。
コウイチ監督 まず、神様がいるとすれば、ひとつ次元が上の存在だろうと思っています。僕は、以前から、そんな神様が自分に何か影響を及ぼしてきたら怖いなと思っていました。ネットに『キリスト教圏の人たちは神に見捨てられることを恐れるが、日本人は神に見つかることを恐れる』という言説があったのですが、その感覚はわかるなと思いましたね。僕も、神様がいたら、見つけてほしくないので、そこをホラー映画にできたら面白いかなと思いました。自分たちの常識や理屈が通用しない謎の神様がいたら怖いでしょ?

──その神様をかたどった小さな石像のデザインが興味深かったのですが、何か参考にしたものはあったのですか?
コウイチ監督 撮影に使えそうな廃墟を捜していたとき、同祖神とか、お地蔵様とか、いろんなものを見にいきました。あと、ゲームやアニメで使われている石像の神様とかを見て、全体の雰囲気を考え、オリジナルで作りました。美咲が、ちょっと違うけど、お地蔵様のように感じて自然に手を合わせてしまう雰囲気ですね。
──石像の顔と神様のお面の顔を、似ているけど少し変えたのは、なぜですか?
コウイチ監督 あの石像からお面の神様が現れたとわかってもらうため、似せはしましたが、僕たちがイメージする神様とは違う異質感も出したかったからです。お面は、人の顔ぽくしたくなかったし、表情のように見えるものにもしたくなかった。理解できない感じにしようとした結果、あの模様のようなものになりました。

──それで、この神様がお面をずらすと、とんでもないことが起こるのですが、あのアイデアはどのようにして生まれたのですか?
コウイチ監督 お面をはずす瞬間を作りたかったんです。お面をかぶっている者がいたら、そのお面の奥が気になるじゃないですか。そこに、顔じゃない何か別なものがあったらおもしろいなと思って。そこが何か異界との入り口というか、ゲートになっていたら、想像が膨らむなと思ったんです。
──そればかりではない。神様がお面をずらして事を起こした後、神様の身にもある変化が生じ、驚かされる。その狙いは?
コウイチ監督 神様の形態に、第〇形態みたいなものがあるとおもしろいなと思ったのです。ゲームのラスボスとか、ある程度ダメージを受けると別の形状に変化するものがありますよね。神様にも、そうした特徴を取り入れようと思ったのです。この神様は、以後、どんな感じに変わっていくのかなって、想像しながら映画を見てほしいですね。

──さて、仲のいいふたりの少女がいて、美咲には、美咲本人と霊能者には見える神様が憑き、皐月には、霊能者にしか見えない悪霊が憑いてしまう。そうしたふたりの対比が味わい深かったのですが、その狙いは?
コウイチ監督 1本の映画で、まったく別物の怪異に巻き込まれるということをやりたかったんです。そこで、家庭環境から美咲と皐月の対比構造を作りました。美咲は母子家庭で裕福ではないが、母娘の仲はいい。一方の皐月は、家庭は裕福だけど、両親との関係性は浅い。そんなふたりが、片方は御利益がありそうな神様、片方は恐ろしい悪霊に取り憑かれるという対比も描きたくて……。構成も「60分のドラマ、プラス30分」みたいなイメージで作りましたね。

──前半60分のドラマからの転換は、先が読めなくて楽しみました。「えっ、ここから先どうなるんだ」と思ったら、気持ちの良い転がり方をして、後味もさわやかでした。
コウイチ監督 予想を裏切るじゃないですけど、ちょっとずらすみたいなことを考えました。普通のホラーだと「悪霊の件が片付いたから、次は神様を何とかしよう」となりがちですが、この映画の軸は、美咲の成長物語です。だから、神様自体は何の解決もしていないんですよね。
──でも、神様について、色々と考えさせられます。神様は、ただ自分を見守っていてくれるだけの存在ではないか、とか……。
コウイチ監督 そうですね。神様は、基本的には見守っている存在ではないかと思って作りました。ですから、極力、美咲が映っているときには後ろに神様が立っているようにしました。

──あと、悪霊はスマホに映るけど、神様はスマホには映らない、という違いもありましたね。
コウイチ監督 スマホのデジタル映像が普及してからは、テレビやネットで見かける心霊映像は、フェイクではないか、合成ではないか、と思われるようになってしまった。でも、ビデオカメラのテープ録画のアナログ感では、霊の姿が本当に焼き付いているように思えてしまう。『リング』の貞子が怖かったのも、ビデオテープだったことが大きかったと思うんですよ。だから、この映画では、神様はビデオテープにしか映らないことにしました。女子高校生の成長を描いた青春ホラー映画『とれ!』には、多種多彩な日本の神様や異なる次元の世界についてイマジネーションを駆り立てる仕掛けがいくつもあります。ぜひ映画館で楽しんで下さい。


コウイチ監督/プロフィール
1996年、北海道生まれ。高校1年生のときにYouTubeチャンネル「kouichitv」で動画投稿を開始した。独自のユーモアと映像表現によるショートコメディを発信し、シュールな世界観の作品が支持を集める。2018年に製作した短編映画『最悪な一日』が、札幌国際短編映画祭で特別賞を受賞。2021年に発表した短編ホラー映画『消えない』はすぐさま約400万回の再生を記録した。著書に『最悪な一日』、『計画書』などがある。

映画『とれ!』
1月16日(金)よりテアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
配給:KADOKAWA
https://tore-movie.jp/
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