ムー的ゲーム考察:狐面の男と最強の陰陽師・安倍晴明の関係は? 『サイレントヒル f』/ムー通

文=藤川Q

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    話題のゲームキャラ「狐面の男」とは?

     いま大きな話題となっているのが、1960年代の昭和を舞台としたサイコロジカルホラー最新作『サイレントヒル f』に登場する、"狐面の男"。白い羽織袴姿、狐の半面で顔を隠した端正なこの謎めいた男は、ただひたすらに主人公・雛子への愛を注ぐ人物として人気を博している。彼の面の奥に隠されたその正体は、ぜひともゲームをプレイして看破していただきたいところなので、まず本稿ではあえて狐面の男の解像度を高めるために、彼に付随して描かれる"狐"の表現に注目してみたい。というのも、そもそも『サイレントヒル f』のfはfox=狐? などと妄想してしまうほど、本作の狐描写は驚くほど日本人の信仰に根付いた狐伝承に忠実なのだ。
     天気の日に降る雨を狐の嫁入りというが、異類婚姻譚すなわち狐と人間の婚姻伝承といえば、やはり思い浮かぶのは、平安時代最強の陰陽師である安倍晴明のエピソードだろう。十二天将と呼ばれる式神を使役し、数多の鬼を祓ったという晴明の呪力の源――それは、彼が単なる人間ではなく、人と狐の子であるが故。彼の母親は信太の森に棲む葛葉狐なのである。

    見え隠れする最強陰陽師の影

     狐面の男が闇の社殿内に侵入した咲子を祓う際に、"急急に律令の如くに行うがいい!"と唱えているのも気になるところ。
    "急急如律令"は、道教由来の陰陽道の呪文として知られるものなので、彼が陰陽道に通じている人物であることもうかがえるだろう。さらに意味深いのは、闇の社殿や狐面の男の羽織にもみられる"紋所"。3枚の葉が並ぶこの文様は、どこか過去のサイレントヒルシリーズで登場した教団の紋章も彷彿とさせるものの、そもそもこの葉は"葛葉"だと思われる。
     狐面の男には陰陽師的な要素が目立っていることからも、彼のルーツには、なんらか安倍晴明に通じる陰陽道のスペシャリストとしての血筋が関連しているのではないか……などと、キャラクターの衣装やちょっとしたセリフの端々からも妄想に浸れてしまうくらいに、本作の設定は丹念に織り成されている。

     次回では、さらに狐面の男のルーツと、謎の稲荷神社信仰との関連について妄想を深めていきたい。

    (本作のムー民度 ★★★★☆)

    サイレントヒル f
    PS5 Xbox Series X/S Steam 
    スタンダードエディション8,580円(税込) 
    デラックスエディション※ダウンロード版のみ 9,790円(税込)
    発売・配信中
    ©2025 Konami Digital Entertainment

    (月刊ムー 2025年12月号)

    藤川Q

    ファミ通の怪人編集者。妖怪・オカルト担当という謎のポジションで、ムーにも協力。

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