田中史観で読む渡来ユダヤ人の活動「浦島伝説とユダヤ」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    浦島伝説とユダヤ

    田中英道 著

    浦島伝説は、日ユの対立と従属の史実に基づく

     著者の提唱する独自の史観によれば、日本列島には古代以来、ユダヤ系の人々が多く渡来し、日本に同化していた。著者・田中英道氏はこの史観に基づき、これまでに膨大な著書や学術論文を世に問うてこられた。
     本書もその史観に即したもので、「浦島伝説」という切り口から、渡来ユダヤ人の活動を跡づけていく。

     本書の主張によれば、浦島太郎のルーツは天孫降臨した邇ニ邇ニ芸ギ命の子・山幸彦にあり、この山幸彦が古代の琉球に渡った。そこにはすでに「海神」たる渡来ユダヤ人がおり、山幸彦は彼らと出会った。そしてこの琉球こそ、浦島伝説の「龍宮」にほかならないというのである。
     神話上では兄弟神である海幸彦・山幸彦だが、著者によれば山幸彦は縄文以来の日本列島の住人、そして海幸彦のほうは「海を渡ってやって来た渡来ユダヤ系の人々の象徴」。釣り針を巡って対立した後、海幸彦が弟に忠誠を誓うことになるという神話は、まさに日ユの対立と従属の史実に基づいている。

     著者の田中氏は美術史家であり、東北大学名誉教授。フランス、イタリア美術史研究の第一人者で、ローマ大学やボローニャ大学、ベルリン・フンベルト大学でも教鞭を執っておられる。現在、ユダヤ人渡来説は学界では異端の説のようだが、これほどの碩学が、ここまでの情熱と膨大な資料、そして精緻な推論を以て取り組んでおられる課題である以上、襟を正して謹聴すべきである。

    ワニブックス1870円(税込)

    (月刊ムー 2025年5月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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