武田崇元、熱談!! 「68年革命」と新左翼系対抗文化から”大陸”的通俗オカルトの勃興へ/ムー前夜譚(1)
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「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。
武田崇元/横山茂雄 著
オカルト界の大重鎮がオカルト・シーンの舞台裏から、オカルトの神髄までを語り尽くす対談書
武田祟元氏。あの「八幡書店」の社主であり、本誌「ムー」の創刊から顧問として参画する人物。
そして横山茂雄氏。今から30年以上前に、今なお他の追随を許さぬ、珠玉の名著にして、文字通り「オカルト研究の金字塔」たる『聖別された肉体』を上梓した文学博士である。
本書は、半世紀も前から、つねにオカルト界の最前線に立ちつづけた大重鎮たるふたりが、1960年代以降の日本のオカルト・シーンの舞台裏から、日本と西洋の近代オカルトの流れ、Qアノンと陰謀論、そしてオカルトの神髄までを語り尽くす対談書。 ともかく、対談者の知識とオカルト愛が濃すぎて、他の凡百の対談本など歯牙にもかけぬほど、レイヤーが何十次元もぶっちぎりで天元突破してしまっている。
もはや、単なる「対談」というよりも、浩瀚・緻密な霊的知識の応酬による格闘技、それも本物の達人同士の、研ぎ澄まされた真剣勝負の様相を呈しているのだ。
普通に、学術論文レベルの知識と情報が、湯水のようにすらすらと両氏の口頭からあふれ出るさまを、読者たるわれわれは、ただ茫然と見守るしかない。しかも、武田氏は当たりの柔らかい関西弁でそれをやるものだから、もはや何を見せられているのかわからなくなる。
何しろ武田氏の手にかかると、オカルト界のどんな偉人も、ただの関西のオッサンにされてしまうのだ。あのルドルフ・シュタイナーですら「うっとこは他の神智学協会傘下の支部とはちょっと違うんやで」などといわされている。形なしである。
しかし、もしもこの膨大かつ正確無比な情報による殴り合いを、まったくのアドリブでやっているとしたら、両氏の記憶力・口述力はまさに出口王仁三郎に匹敵するといわざるを得ない。思わず「これホンマにアドリブで喋ってはるんですか?」と問い詰めたくなる。
往年の『世界神秘学事典』(平河出版社、1981年)の内容を、素でしゃべっている感じといえば、わかる人にはわかるだろうか。実は横山氏は同書にも携わっておられたので、この両書のテイストが(関西弁以外)似ているのも、当然かもしれない。 いずれにせよ本書は、今後50年、100年にわたって読み継がれていく、正真正銘の名著である。
だが本誌読者には、ぜひともこれを今、リアルタイムで読むという格別な愉悦を、思う存分堪能していただきたい。
(月刊ムー 2025年1月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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