「超音波による脳操作」研究の最前線! 医療に革命か、最悪の洗脳技術か?/久野友萬
超音波で脳を操る、そういうことが研究されている。超音波を使って、脳を遠隔操作するのだ。なんだかよくわからない話だが、超音波がどういうものか知れば、理解できる。
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食に関心のある人は、白い食べ物は体に悪い、砂糖は毒、無農薬じゃない野菜は食べちゃいけない、など「〇〇を食べてはいけない」という話ばかりする。しかし、よく聞いてみると、科学的な根拠に乏しい話が多いことに気づく。いったい、なにが理由で「〇〇を食べてはいけない」「〇〇は危険だ」となるのか、その一因は易経にあったようだ。
食べ物と易がどう関係するのか。
マクロビオテックをご存じだろうか。食事で健康になる「食養」という理論を広めた思想で、創始者は桜沢如一(さくらざわ ゆきかず、1893~1966)という人物だ。
病弱だった桜沢は石塚左玄と出会い、その食養法で健康を回復する。陸軍の軍医も務めた石塚左玄は、現在の地産地消の考え方を先取りし、運動や教育と同じぐらい食事は人を作るのだと説いた「食育の祖」とも呼ばれる人物だ。
石塚の食養には2つの柱がある。
「身土不二」……仏教用語で、人間のすることと環境は切っても切れないとする考え方。因果応報の言い換えのような言葉だが、食養では「人間は食べるものからできている」と解釈。石塚は「その土地にあるものを食べること(地産地消)が、その土地で暮らすときにもっとも健康的な体を作る」と説いた。軍医らしい考え方だが、それを桜沢は身土不二と言い換えた。
「一物全体」……食べ物は丸ごと食べるのが正しいとする考え方。植物は実、花、茎、根が揃って生命であり、その全体をいただくことで生命を取り入れることになる。精米よりも玄米がいい理由は、植物の外皮には外敵から身を守るための栄養分が含まれ(今でいうファイティングケミカル)、それが人間に薬効として働くから。同様に砂糖も黒砂糖の方がいい。食べ物は黒いものを食べた方が栄養が取れる。
このような石塚の理論は、サプリメントも薬品もなく、栄養貧困だった明治時代なら一理ある考え方だろう。ところが、石塚の理論が桜沢の手にかかると、奇妙にイデオロギー色を帯びはじめる。
石塚に心酔した桜沢は、やがて独自理論の「無双原理」を発表する。これは、食養に漢方の陰陽の考え方をわかりやすく生かしたもので、やがてマクロビオテックへと発展していく。そしてマクロビオテックは、食事というよりは食事を通して桜沢の思想を普及させるものとなり、今どきのエコやスピリチュアルにも多大な影響を与えているのだ。
石塚の食養にはナトリウム・カリウム論がある。食べ物にはナトリウムとカリウムが含まれているから、同じだけ摂るように食べなさいというものだ。
桜沢は、石塚のナトリウム・カリウム論を易経の陰陽に読み替え、「陰陽調和」という考え方を加えた。食べ物には陰性と陽性があり、肉、魚、人参、卵など赤・茶・黄色系統の食べ物は人間を陽性にして気を短くするのだという。
「麻疹、肝臓病、てんかん、暴力犯、精神異常、殺人犯、親殺しなどは、子供のころにこれらを多く摂取した人がなりやすい」(『マクロビオティック創始者・桜沢如一物語』宮武和平/『桜沢如一のマクロビと無双原理』光祥社)
また、砂糖を毎日とると体が陰性になるそうで、「根気がない、気が短い、意志が弱い、記憶力が弱く物忘れが激しい、取り越し苦労ばかりする人間」になってしまうという。
うーん、製糖メーカーが激怒しそうだ。
石塚の理論を発展させて無双原理を生み出した桜沢は、食養に留まらず、夫婦関係や親子関係、社会なども陰陽で説明するようになる。
数字の7は陰性で女性の数字、8は陽性で男性の数字であるとし、それぞれ7の倍数、8の倍数の周期があるという。女性であれば、28才から性欲が強くなり、35才で落ち着き、閉経は49才、といった具合に。
また、健康状態は耳の形に現れ、「耳の垂珠(耳たぶのふくらみ)がなくて、ことに上がとがって、下がアゴの方にのびている人や、ことに細い脚のようなものが耳のツケネから出ている人々は、必ず肉体的にも精神的にも、非常にやっかいなものがあるのが普通です」(『食養人生読本』桜沢如一)などと語った。
台所を「生命の薬局」、家庭を「幸福の工場」と呼び、妻であり母でもある女性は、食養を通して家庭を健康かつ円満にする文化の設計者であり、ひいては世界を良くする世界革命の担い手だという。
……とりあえずマクロビオテックが科学ではないことはわかると思う。栄養学っぽいことを言っているだけで、桜沢氏の考えた健康論を述べているに過ぎない。
玄米と、その土地でとれた無農薬野菜を食べ、果物や砂糖のような陰性の食べ物はとらず、肉や魚のような極端な陽性の食べ物もとらない、というのが基本的なマクロビオテックの食事だ。
完全に不健康な食事であれば、マクロビオテックが世間に受け入れられることはなかったはずだ。では、マクロビオテックな食事を続けると本当に不調が回復し、健康になるのだろうか?
「肺結核第三期の末期から一、二ヵ月で健康を奪回された長野県県会議員・和合恒雄先生、三十年のライ病を征服された堤学真先生、永年の大腸カタルをわずか三週間で退治られた松井大将等等……五十年来の喘息と皮膚病を一ヵ月で全治された人、子宮癌、乳癌、神経痛、リューマチス、結膜炎で失明した眼、小児マヒ、物を言わなかった少年、禿頭の少女、不妊症の夫人、子宮脱出症の夫人、白内障や網膜剥離の少年、カリエスの青年、腎臓結核夫人、テンカン氏、脳梅毒の村長夫人、もの忘れ夫人、結婚生活十六年の闘病生活で子のなかった山下夫人、胃ガンで胃を取った市長」(『食養人生読本』桜沢如一)
といった回復例があるそうだ。マジかよ。実際、桜沢自身までもが
「不思議だ! 実に不思議だ! 全く、これは奇跡である!」(同)
などと述べている。そして、
「正しい食物は神のみこころであり、神のめぐみ」であって、「神様は宇宙全体に、虚空全体に充ちみなぎる生命」(同)
なのだとか。いやはや。
桜沢いわく、マクロビオテックに切り替えると大抵の病気は1~2カ月で良くなるそうだ。人間は文明化する前、化学肥料も使わず、その土地の物を食べて暮らし、それで健康だった。化学を信じるな、ビタミンの適量など誰も知らない、人間は自然に生きるのが正しく幸せだ――このあたりの考え方が現在の反化学調味料や反農薬、有機農法推進の原点なのだろう。
マクロビオテックを続けるうちに、桜沢は不思議な体験をするようになる。訃報が届く前に、その人物の姿を見るようになったのだ。病床の友人を見舞いに行った夜、友人が夢枕に立ち、言葉を交わした。目が覚めると訃報が届いたといった具合だ。
食べ物によって肉体を健全に正しくすることで、大自然の神秘に深く入り、精神世界の全体を知ることができるからだという。
宗教の定義はさまざまだろうが、ひとつには生き方の指南がある。指南というより教則だ。これをしたらダメ、あれをしたらダメという約束事を教え、それによって不幸を避け、病気を避ける方法を身につける。もう一つが世界の神秘を知ることだ。カルト宗教も教祖が世界の謎を教えるといい、人を集める。最後に世直し。宗教にとって、現在は常に間違っている。だから正さなくてはならない。桜沢はマクロビオテックを説く教室の壁に「セカイセイフ」と書いていた。
生き方と生きる理由、そして生きる目的。これを担保するというのは宗教の宗教たる存在理由だ。マクロビオテックが世界に広がったのは、こうした宗教の条件を満たしていたからだと思う。そうじゃなきゃ、玄米食べたら死人に会えるとは、なかなか口にはできない。
無農薬や反化学調味料に入れ込む人たちが極めて熱心なのも、それが宗教と同じ性質のものだからだ。セカイセイフのための、自分たちのミッションなのだ。
玄米だけの食事は「七号食」と呼ばれ、ダイエット法として広がってきている。無双原理はともかく、七号食ダイエットならありかも? と玄米を炊き始めた最近だ。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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