<体験談>運命が入れ替わった? 落ちた花瓶と割れた鏡

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◆徳川あおい

我が家には神棚があり、毎朝夕、手を合わせている。
ある朝、いつもと同じように神棚の前に立ったとき、榊を挿した花瓶が突然、落ちた。
高さは二メートルほどある。
フローリングの固い床に落ちたにもかかわらず、花瓶は割れなかった。
拾い上げながら、「よく割れなかったな」と思った。
そのとき、玄関のチャイムが鳴った。
出てみると、見知らぬ若い男性が立っていた。
バイクで走行中、道の端に寄りすぎて、うちのガレージの出入り口に取り付けてあったミラーを割ってしまったという。
そのミラーは、亡くなった父が昔取り付けたものだった。
古いものなので気にしなくていいと伝え、道路に散った破片だけ掃除してもらうようお願いした。
玄関を閉めてから、さきほどの花瓶のことを思い出した。
花瓶が落ちた時刻と、父が取り付けたミラーが割れた時刻が、ほとんど同じだったことに気づいた。
花瓶は安定して置いてあり、揺れるような場所でもない。
ミラーも、父が取り付けてから何十年も、割れることなくそこにあった。
偶然と言えば、偶然なのだろう。
けれど、花瓶が落ちた音と、玄関チャイムの音が、ひとつの出来事のように思えてならなかった。
父のことを思い出したわけではない。
何か特別な気配を感じたわけでもない。
ただ、あの朝の空気の中で起きた二つの出来事が、どこかでつながっているような気がした。
理由はわからない。
説明もできない。
ただ、思い返すたびに、あの二つの音のあいだに流れていた“間”だけは、今も言葉にならずに残っている。

<編集部より>
割れる・割れないの世界線が交錯したような、不思議な体験感覚ですね。

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