意識は生命よりも前に存在した!? 小惑星「ベンヌ」の地表サンプルに“意識の種”が含まれる可能性も

文=仲田しんじ

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    われわれの意識とは、実は生命よりも先にあるものかもしれない――。いや、むしろ意識こそが生命を形作ったのだとする最新の科学理論を紹介する。

    意識とは“宇宙の音楽”と脳の共鳴現象

     熟睡時や失神時、あるいは全身麻酔時の自分とは主観的には存在していないも同然だが、起床時のわれわれには意識があり、意図に基づく行動が可能である。

     意識に関する一般的な理論は、人間が脳内で作り出しているというもので、メカニズムはまだ解明できていないが、複雑な脳内現象であると考えられている。

     しかし元麻酔科医で意識に関する世界有数の専門家であるスチュアート・ハメロフ博士と、彼の協力者でもあるノーベル賞受賞者で物理学者のロジャー・ペンローズ氏は、意識が世界を作り出したのであって、その逆ではないと何十年も主張している。

     意識は脳内だけで作られるのではなく、宇宙を駆けめぐる量子波動関数と脳の神経細胞内の微小なタンパク質チューブ(マイクロチューブル)との相互作用こそが意識を発生させているというのだ。

     両氏と彼らの協力者である物理学者で腫瘍学者のジャック・トゥシンスキー氏は、2023年に脳内の量子活動がこれらの微小管で起こり得ることを実証した。「統合された客観収縮理論(Orchestrated Objective Reduction)」として知られるこの考え方によれば、量子波動関数が崩壊するにつれて意識の瞬間が絶えず発生し、意識的な認識の瞬間が作り出される。ハメロフ氏はこの量子波動関数を原始意識、あるいは「夢の状態(dream state)」と名づけた。

    alexmogoproによるPixabayからの画像

     もう一人の共同研究者である量子力学の専門家、アニルバン・バンディオパダヤイエ博士は、量子波動関数を“宇宙の音楽”と呼んでいる。宇宙それ自体の意識とでも言うべき“宇宙の音楽”が、微小管と共鳴することで個々の生命に意識が発生しているというのだ。

     バンディオパダヤイエ氏と国立研究開発法人物質・材料研究機構の研究チームは、ニューロンレベルで電気を伝導する周波数帯域を3つ、微小管レベルでより高い周波数帯域が3つ、そして微小管を構成する物質であるチューブリンレベルでさらに高い周波数帯域が3つ、存在することを突き止めた。それぞれの周波数帯域内には、さらに3つの周波数帯域が機能しており、いわゆる「三重線の三重線(a triplet of triplets)」状態にあるという。

     バンディオパダヤイエ氏のチームは、認知・知覚・感情のバーストのほとんどは200~700ナノ秒付近で発生すると結論づけ、この「三重線の三重線」の共鳴パターンが“宇宙の音楽”であると考えている。そして、これにわれわれの脳が共鳴することで個々の意識が発生しているというのである。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「The Institute of Art and Ideas」より

    ベンヌの地表サンプルに意識の“種”がある!?

     6年に一度、「ベンヌ」という小惑星が地球に接近する。ベンヌは約46億年前に形成された、緩く圧縮された直径500メートルほどの黒い岩石だ。2023年、NASAの探査機「オシリス・レックス(OSIRIS-REx)」が、ベンヌの地表の物質を地球に持ち帰ったことは大きなニュースとなった。

     ベンヌの地表サンプルからは、含水粘土鉱物、硫化物、磁鉄鉱、炭酸塩などの鉱物が見つかっているのだが、それらは生命誕生の条件が揃った「原始スープ」であることが示唆されている。

     研究者たちは、サンプルに地球上の生命がタンパク質を作るために用いる20種類のアミノ酸のうち14種類が含まれていることを特定。しかもそこには、DNAやRNAに遺伝的指令を保存・伝達するために用いられる5種類の核酸塩基すべてに加え、塩まで含まれていた。ベンヌが分離したより大きな天体は、40億年前の地球と同じく「原始スープ」で満ちた、生命の前駆体の宝庫だった可能性が高い。

    ※ベンヌ(Bennu) 画像は「NASA」より

     しかし、発見はそれだけではない。ベンヌのサンプルには、意識発生の鍵と考えられる量子共鳴を可能にする結晶構造も含まれているかもしれないという。これらは「多環芳香族分子(polyaromatic ring molecules)」などの有機環状分子で、余分な電子が電子雲を形成して光子を交換する。それらが特定の周期的な結晶構造(配列や格子など)を形成すると、意識を支える量子振動子になるということだ。

     つまり、生命よりも前にベンヌの地表に意識の“種”が存在し、その後に現れる生命の最初期の意思決定と自己組織化を可能にしたかもしれないというのだ。

     ハメロフ氏は、最初期のクオリア(意識体験)はランダムであったものの、意識の閃きの快感を体験した生物は、より多くのものを求めただろうと仮説を立てている。生命はそのような体験を再び生み出す可能性を最大化するように、試行錯誤を繰り返して自らを組織化していったというのだ。ハメロフ氏は、意識的な量子体験の機会を増やすために多環芳香族分子が自らを組織化した可能性まで指摘する。

    「これら(多環芳香族分子)は有機化学、そして生命の基礎となる分子と同じものです。そこで起きた量子振動こそが意識の兆候である可能性に気づき、ベンヌのサンプルで検証できるかもしれないと考えました」(ハメロフ氏)

     はたして、生命は“宇宙の音楽”とのより良い共鳴を目指して進化を続け、われわれ人間のように複雑な意識をもつまでに至ったのか? 肉体があって意識があるのではなく、まずはじめに意識があり、それを最大化するために肉体が進化したのか? 研究の今後の進展に期待したい。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「exo-Sci」より

    【参考】
    https://www.popularmechanics.com/science/a70025741/asteroid-bennu-consciousness-life/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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