意識とは脳と宇宙の「ゼロポイントフィールド」の共鳴によって生じる!? 謎を解く鍵は神経科学と量子電磁力学の融合

文=仲田しんじ

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    意識が生じるメカニズムをどう考えればよいのか。最先端の研究によると、それは脳と「ゼロポイントフィールド」の共鳴によって生じることが示唆されている。

    意識は脳とゼロポイントフィールドの共鳴現象

     神経細胞や皮質などの物質で構成され、電気的および化学的な反応により活動している脳から、どのようにして主観的な意識が生まれているのだろうか。

     起床時のわれわれに意識があることに疑いの余地はないが、意識がどのようなメカニズムで生じているのかについてはほとんどなにもわかっていないといえる。

     解明しようにも、どこから手をつけていいのかさえおぼつかない「意識のハードプロブレム」だが、われわれ個々人の脳は完全に独立したものではなく、インターネットのようにどこかに繋がっていると仮定してみると、意外なところに推論の足場を組めるようになるのかもしれない。

     過去の記事では、われわれの意識は宇宙の基本的な場を構成するブロックの一つであるとするマリア・ストローム氏の“意識の基本場理論”を紹介したが、同様の視点からの探究はまだほかにもある。

    vat loaiによるPixabayからの画像

     ドイツの理論物理学者、ヨアヒム・ケプラー氏が昨年12月に学術誌「Frontiers in Human Neuroscience」で発表した研究によると、意識状態は脳が量子真空――つまり宇宙全体――に浸透する「ゼロポイントフィールド(Zero Point Field、ZPF)」と共鳴する能力から生じている可能性があるという。

     ZPFとは、宇宙全体に遍在する微細なエネルギーの場であり、すべての情報(過去・現在・未来)が波動情報として記録されていると仮定する概念である。このZPFは絶対零度の真空空間でも満ちることができると考えられている。

     ケプラー氏によれば、われわれの頭の中ではマクロな量子効果が機能しており、脳の基本的な機能構成要素である皮質マイクロカラムがZPFと直接結びつき、意識プロセスに複雑なダイナミクスを始動させているということだ。

    ZPFの特定の周波数が脳内のグルタミン酸と共鳴

     神経科学者たちは長年、意識状態が脳活動におけるベータ波やガンマ波との同期と関連していることを観察してきた。これらのパターンは、脳が相転移の臨界点付近で機能する繊細なバランス、すなわち自己組織化臨界(Self-organized criticality、SOC)の特徴を示している。

     SOCとは複雑なシステムが外部からの精密な調整なしに、自ら臨界状態と呼ばれる「混沌と秩序の境界」に達する現象である。この状態では、小さなきっかけ(small perturbations)が予測不能なほど大きな結果(雪崩やバースト現象)を引き起こす等、さまざまなスケールの出来事が同時に発生し得る。

     睡眠や麻酔などにより意識が薄れると、この重要なバランスは失われるのだが、大きな疑問はわれわれの起床時の脳を、この重要な状態で維持しているメカニズムである。ケプラー氏によれば、その答えは電磁気学の基礎理論である量子電磁力学(quantum electrodynamics、QED)にあるという。

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     この理論では、真空は空っぽの状態ではなく、「電磁ゼロポイントエネルギー」と呼ばれる変動するエネルギーの海で満たされている。QEDに基づくモデル計算により、ZPFの特定の周波数(モード)が、脳内で最も豊富な神経伝達物質であるグルタミン酸と共鳴することが実証されているという。この共鳴相互作用は、グルタミン酸に浸された約100個のニューロンからなる皮質単位であるマイクロカラム内で起こっているという。そして、これこそがSOCにとって極めて重要であるという。

     一方で「共鳴グルタミン酸-ZPF結合(Resonant Glutamate-ZPF Coupling)」は、多数の分子が一斉に振動するコヒーレンス領域の形成をもたらし、これらの領域はエネルギーギャップによって保護されていることから、温かくノイズの多い脳内でも驚くほど安定しているという。

     この結合により、ZPFのモードが励起され、イオンチャネルやニューロンの発火率を微調整し、興奮性と抑制性のバランスを維持する「柱内マイクロ波場」が生成されるという。つまり、脳内でこのような量子現象が起きていることで意識が発生している、というわけだ。

    ZPFが意識を理解する鍵を握っている

     ケプラー氏のモデルが正しいと証明されれば、意識とは単なる電気化学的なシグナル伝達から生じているのではなく、脳とZPFの共鳴結合から生じていることになる。そして睡眠時や無意識状態とは、ZPFと脳との結合が中断され、一時的に解除された状態であることを意味する。

     ケプラー氏は、大脳皮質の状態を体系的かつ巧みに操作することで、脳がZPFを実際に利用しているかどうか、そして意識が本当に脳とZPFの共鳴的な相互作用に依存しているかどうか探究可能であると訴える。このような実験は神経科学と物理学を融合させるものであり、意識の本質に関する長年の疑問に光を当てる可能性があるということだ。

     意識は純粋に神経ネットワークから生じたものなのか、それともより根源的ななにかと繋がっているのか? 実に大胆で興味深いケプラー氏の知見だが、サイエンス的にはまずZPFの存在を証明することが先決のようにも思える。依然としてハードプロブレムである意識の謎に肉薄すべく、今後もさまざまな見地からの探究が続いていくことを期待しよう。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「Frontiers of Science」より

    【参考】
    https://phys.org/news/2025-12-quantum-clues-consciousness-brain-harness.html

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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