インフルエンサーを操る情報源を疑え! 語りたい本質が揺れる大配信者時代/シークエンスはやとも 噂のホウダン 第10回
霊界と芸能界、そして都市伝説界隈から世界を見る芸人が、気になる噂のヴェールをめくる。今回のテーマは「インフルエンサーと陰謀論」。その情報、どこのだれから入ってきたの?
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文=シークエンスはやとも 構成=倉本菜生 イラスト=ネルノダイスキ

霊界と芸能界、そして都市伝説界隈から世界を見る芸人が、気になる噂のヴェールをめくる。今回のテーマは「情念」。愛と性と欲が絡む世界は、人間らしい場といえるのだが……。
都市伝説を愛してやまない吉本興業所属の霊能者、シークエンスはやともです。今回は「夜の街に渦巻く男と女の情念」について語っていきます。
SNSが発達してから、キャバクラやホストといった夜の仕事……いわば夜職の人たちが表舞台にどんどん顔を出すようになりました。今では東京ガールズコレクションのランウェイにキャバ嬢が出演したり、ホストがテレビやYouTubeで人気者になったり。昔は「人にはいいにくい職業」だったのに、今は「キラキラした仕事」として扱われている。
でも、その華やかさの裏には、目に見えない「念」が渦巻いています。
実は僕自身、都内のキャバクラでボーイとして働いていた時期があります。歌舞伎町のような大きな繁華街ではなく、蒲田というローカルな街にある店舗でしたが、人の情念が入り混じる独特の気配がありました。
僕が見てきた範囲では「霊感がある」というキャバ嬢の多くが、お客さんにエネルギーを吸い取られている状態でした。「この店、何かいる。私、憑りつかれている」なんて話を何度も聞いたけれど、それは本物の霊ではなく、人の念が溜まりすぎて形を持ちはじめたものなんです。これは生き霊とも違っていて、思念や欲の集合体のようなものです。
店で働く女の子は、毎晩お客さんや同僚からさまざまな感情を浴びています。嫉妬、支配欲、恋愛感情、恨み。とくにキャバクラは、女性にマウントを取りたい男性が集まる場所でもあります。お金を払ってお酒を注がせる。軽くボディタッチをして、「俺のほうが上だ」と安心したい。
さらにいえば、夜の世界では「上下関係」や「評価」がはっきりしています。売上、指名本数、シャンパンの数……。目に見える数字に追われ、みんな心がすり減っていく。お客さんの強い感情や、店内でのストレス、そして自分自身への不安。それらが複雑に絡み合い、目に見えないエネルギーが視える状態になってしまう。それを霊だと錯覚してしまう子が、僕の周りには少なくありませんでした。
一方で僕の主観だと、本物の霊や生き霊が多いのはホストクラブのほうです。これにはキャバとホストでの「性行為に対する意識の違い」が関係しています。世間では勘違いされがちですが、キャバクラでは「枕営業」をする子がほとんどいません。「お客さんとセックスするくらいなら、最初から風俗で働く」という子が多いからです。一方のホストは、本命の彼女と思わせる「本カノ営業」や「同棲営業」など、性接待が身近です。
男性は「気になる相手と一度やれたら、興味がなくなる」という傾向が強いですが、女性の場合は逆です。身体をつなげることで、強い執着が生まれます。ホスト側が「客としてつなぎとめられたらラッキー」くらいの感覚でいたとしても、女性側には「私たちの関係は特別なもの」という意識が芽生える。そして「この人と結ばれたい」「自分のものにしたい」という呪いに近い感情を、生き霊として飛ばしてしまう。
僕自身、何度かホストクラブで撮影や取材で入ったことがありますが、キャバクラとはまったく違う空気を感じました。女性たちがホストに向けて放つ生き霊や情念が、まるで煙のように部屋の中に滞留している。
ただ不思議なことに、「霊を視た」というホストさんたちにも多く出会いましたが、彼らは霊的な現象を気にしていませんでした。男女で「念の受け止め方」の違いがあるのでしょう。
夜職の世界は、「情念の地獄」といえます。お金、承認欲求、性欲が同時に動き、とんでもない速さでやり取りされる。快楽と破滅の境目で働くのは、寿命を削っている感覚さえあるはずなのに、今の時代では夜職が憧れの職業になっている。キャバ嬢に至っては、「華やかで、自立した女性の象徴」として持ち上げる風潮すらありますよね。でも実際には、働くうちに壊れていく人のほうが多い。だから僕は、今の夜職を肯定する世の中に少し違和感を覚えています。
SNSの普及によって、「シャンパンタワー」「ブランド品」「ナイトプール」といった、キラキラした生活が簡単に拡散されるようになりました。地方から東京に出て、「自分もあんなふうに輝きたい」「自立した裕福な人間になりたい」と思う人が増えたのは当然です。
でも現実には、東京で満足に食べていける仕事なんて、男女関係なく少ない。だから簡単に大金を稼げるように見える夜職に魅力を感じてしまう。
「昼の仕事では十分な生活ができない」という社会の課題を無視して「夜職は素晴らしい」「夢を叶える仕事」と語るのは、ある種の呪いのような気もします。労働環境を整えるより、「夜職でも稼げる、輝ける」と正当化するほうが、世の中にとって都合がいい。職業差別をなくすという名目で、結果的に「消耗の現場」を美化している。
こうして夜の世界は、ドーパミンが渦巻く快楽産業として肥大化しました。
本来、性はもっと神聖なエネルギーのはずです。先日、フランスのストリップ劇場に行く機会があったのですが、カップルや家族連れなど、日本では考えられないような組み合わせの人たちがたくさん来ていました。
一方で日本の性産業は、「エロい」「恥ずかしい」といった感情と結びついてしまっている。性が芸術として昇華されず、ただのドーパミン装置になってしまった。ホストやキャバクラの世界も同じで、現実と幻想のあいだに漂う「性の空間」になっています。だからこそ、生き霊や情念が溜まりやすいのでしょう。
けれど、そうした世界も少しずつ変わりはじめています。今やAIが恋愛やポルノを作る時代になり、「恋人になってくれるなら機械でもかまわない」「抜けるならAIでもいい」という人が増えてきました。性産業に限らず、音楽やお笑いなど、さまざまな分野で「その人じゃないとダメだ」という感覚がどんどん薄くなっている。AIによって「欲」までもが個人に合わせて最適化され、研ぎ澄まされていく時代が来ています。
このまま技術が進めば、「生き霊や情念が憑く人」は減っていくかもしれません。
AIがどこまで人間の欲望や執着を受け止めるものになるのか。一周まわって、AIを動かす人の個性、つまり魂が求められる流れがくるはず。そこは最後の最後まで、人間の領域だろうと思います。

(2025年 月刊ムー12月号)
シークエンスはやとも
1991年7月8日、東京生まれ。吉本興業所属の〝霊が視えすぎる〞芸人。芸能界から実業界、政財界にも通じる交友があり、世相の表も都市伝説も覗いている。主な著書に『近づいてはいけない いい人』(ヨシモトブックス)、『霊視ができるようになる本』(サンマーク出版)など。
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