地球が太陽系から弾き飛ばされる!? 軌道が不安定化する仕組みと可能性を科学者が指摘
太陽の周りを揺らぐことのない正確無比な軌道で回っている地球だが、この先も永遠にこのまま公転し続けるのだろうか――。新たな研究によると、銀河系内のほかの恒星の動きによっては、地球は太陽系外に弾き飛ばされ
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太陽系には、まだ私たちが知らない惑星が存在するのか――? 天文学者たちを今も熱中させているこの問題について、新たな太陽系惑星の候補が示唆され「惑星Y」と名付けられている。
太陽系における9番目の惑星については、1世紀以上前から天文学者たちの間では「第9惑星」、「惑星X」、「エリス」、あるいは「ニビル」などが取り沙汰され、白熱した議論が交わされてきた。そして今、米プリンストン大学の研究チームが学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters」で発表した最新研究によると、別の新たな惑星――「惑星Y」が存在する可能性があるという。
論文主筆のアミール・シラージ氏は「このような発見が期待できる時代に生きているのは、本当に幸運だと思います」と米メディア「CNN」に語り、(これまでに議論されてきた)「第9惑星」らと今回の「惑星Y」は相互に排他的ではなく、両方存在する可能性もあると言及している。
同氏の「惑星Y」探査は、カイパーベルト(海王星の軌道の外側に位置する氷の天体群の環)の形状を調べようとした約1年前に始まった。太陽系の惑星の軌道はほぼ同じ平面上にあるが、海王星の向こう側にあるカイパーベルトの天体は約15度傾いていることが判明したのだ。
「地球と太陽の距離の約80倍を超えると、太陽系が突然傾いているように見えるという発見は非常に驚きでした。これが『惑星Y』仮説のきっかけとなりました。私たちは傾きを説明できる惑星以外の理由を考え出そうとしましたが、結局のところ別の惑星が必要であるとわかりました」(シラージ氏)
研究チームは、既知のすべての惑星に加えて、仮説上の惑星(惑星Y)1つを含むコンピューターシミュレーションを実行した。そしてパラメータを継続的に変更した結果、「第9惑星」のような従来の仮説はモデルに適合せず、新たなモデルが必要であることがわかったという。
「惑星Yの質量は、水星と地球の中間である可能性が高く、その位置は地球と太陽の距離の約100~200倍にあり、他の惑星に対して少なくとも10度傾いています」(シラージ氏)
カイパーベルトは観測が難しいため、シラージ氏は限られた数(約50)の天体の軌道を研究することで「惑星Y」の存在を推測している。統計的有意性は96〜98%の範囲だというが、まだ決定的なものではない。
とはいえ、間もなくカイパーベルトの詳細な観測が可能になると見込まれている。チリの標高2682メートルの山頂に設置された「ヴェラ・C・ルービン天文台」がついに主要ミッションを開始するのだ。この望遠鏡には、世界最大のデジタルカメラが搭載されている。
「これは本当に素晴らしい工学技術の偉業です。全天の動画を3日周期で見ることができ、これは太陽系の“国勢調査”ともいうべきに観測です。これで、まだ見つかっていない惑星を含む遠方の天体が見つけられる」(シラージ氏)
カリフォルニア工科大学の惑星科学教授で「第9惑星」に関する数多くの研究論文を執筆しているコンスタンティン・バティギン氏は、シラージ氏の研究は太陽系外縁部の微妙な歪みを探る興味深いアプローチだと述べている。
「今後数年間で、ヴェラ・ルービン天文台は、太陽系外縁部の力学的構造をかつてないほど詳しく明らかにしてくれるでしょう」と同氏は「CNN」に回答し、「ルービン天文台のデータが集まれば、天文学者たちはカイパーベルトの傾きと海王星のはるか彼方に潜む新たな惑星の存在について、より鮮明な情報を得ることができるはずだ」と指摘する。
一方、カナダ・レジャイナ大学の天文学准教授サマンサ・ローラー氏は、シラージ氏の研究について、「カイパーベルト天体の軌道を綿密に分析し、従来の研究とは少し異なる方法でパターンを探るものだ」としながらも「研究結果は興味深いが決定的なものではない」と評している。
「カイパーベルト軌道の集積を引き起こしていると考えられる、遠方の大きな惑星の存在を示す確かな証拠はないと思います。しかし、(カイパーベルトの)軌道を微妙に歪ませている、より小さな天体が存在する可能性はあると思います」(ローラー氏)
ローラー氏も、ルービン天文台がまもなく数千もの新たなカイパーベルト天体を発見し、これらの予測の一部を検証できることに期待をかけている。
また、近畿大学の惑星科学准教授、ソフィア・リカフィカ・パトリック氏は、この新たな研究は未だほとんど探査されていない遠方のカイパーベルト領域に踏み込む興味深い研究だと述べている。
「水星から地球クラスの惑星が、この歪みの原因であるという考えは妥当です」とリカフィカ氏は「CNN」に電子メールで回答した。
「太陽系のはるか外縁部に未発見の惑星が潜んでいる、という仮説を裏付けるものです。この研究は、太陽系全体が数十億年前にどのように形成されたのか理解するため、カイパーベルトの調査が極めて重要であることを示しています」(リカフィカ氏)
まもなく運用が開始されるヴェラ・C・ルービン天文台はどこまでカイパーベルトの実態に迫れるのか。そして太陽系の9番目の惑星が発見されるのか、今後の天文学研究に大いに注目が集まる。
【参考】
https://edition.cnn.com/2025/10/03/science/planet-y-solar-system-study
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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