恐竜絶滅を引き起こした元凶は木星だった!? 崩壊した“木星は地球の守り神”説

文=仲田しんじ

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    木星は地球にとって天使か悪魔か――!? 小惑星や彗星の衝突から地球を守っていると考えられていた木星が、実は約6500万年前に地球上で大量絶滅をもたらした小惑星衝突の“犯人”であるかもしれないという。

    木星は地球を守っているのか否か?

     太陽系で最も大きい惑星である木星は、その大きさ故に小惑星や彗星、隕石が頻繁に衝突している。

     17世紀に望遠鏡が天文観測に使われるようになり、1690年に木星への小惑星衝突の兆候が観測され、1979年のボイジャー1号による木星への初フライバイでも木星に衝突する火球がカメラで捉えられた。1994年にはシューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突している。

     一方、地球がこれほどまでに多様な生命を育んでこられたのも、地球の外側の軌道を公転する木星が小惑星や彗星の衝突を引き受けてくれているおかげだと考えられてきた。

     たしかに、木星が地球から遠ざけくれている天体は数多く存在するという。たとえば木星の前方または後方を周回するトロヤ群天体はすべて、木星の存在によって地球から安全に遠ざけられており、5000個以上存在するヒルダ群と呼ばれる小惑星群もまた木星によって太陽から約6億キロメートル(地球と太陽の間の距離の4倍)という安定した距離で地球から隔離されている。

     こうしたことを念頭に置くと、木星の重力が地球に対して保護効果をもたらしていることは明らかだ。しかし、この保護効果は、木星が存在することで地球に及ぶ危険なリスクを相殺するほどのものなのだろうか。

     小惑星衝突などの破局的な出来事が頻繁に起こる惑星では、地球の多様な生物活動は起こり得ないと推測できる。したがって木星の保護がなければ、進化の果てに我々人類が存在しなかったのではないかと考えるのもある意味では尤もなことだ。

     しかし結局のところ、重力を及ぼすあらゆる物体は、惑星、衛星、小惑星、そしてより小さな質量をもつ物体であっても、本来は安定していて無害な軌道を乱す力をもっている。問題は木星のような惑星が近くになくても知的生命体が存在する可能性があるかどうかではなく、木星が系内の他の惑星に対して実際に保護的か破壊的か、つまり我々にとって天使なのか悪魔なのかということだ。

    DeeによるPixabayからの画像

    木星が存在しないほうが地球は安全だった!?

     木星が地球にとって保護的なのか破壊的なのか、これを検討する方法は太陽系全体のさまざまな物体をモデル化し、巨大惑星の有無などのパラメータを変えたとき、その惑星の特性がどのように変化するかを確認することだ。

     2008年、ジョンティ・ホーナー氏とバリー・ジョーンズ氏の研究チームは、木星の質量を変化させて(木星が完全に消滅した場合も含めて)、小惑星帯内で擾乱を受けた天体が時間経過とともに地球に衝突する回数を調査するシミュレーションを行った。

     彼らはその後、2009年に木星がケンタウルス族の天体群にどのような影響を与えるか検討した研究を行い、さらに2011年には木星型惑星の質量だけでなく、軌道の離心率と傾斜角の変化も考慮した研究を行った。これらの研究から得られた知見は、我々のこれまでの想定を覆す驚くべきものであった。

     シミュレーションの結果、長期的には木星が総合的に保護効果をもたらすシナリオもあった一方、木星が存在することでより危険な状況をもたらすシナリオも多数判明。つまり、木星が存在しないほうが地球は安全である可能性が浮かび上がったのである。

     あるシナリオでは、地球を横切る小惑星と地球に衝突する小惑星の70%以上が、木星がなければ発生しなかったことが導き出された。木星が小惑星や彗星などを引き寄せていることで、地球に危険を及ぼしているというのだ。

     また、ケンタウロス族や彗星のような天体を太陽系外から太陽系内へと引き寄せる上では、土星のほうが木星よりもはるかに重要であり、小惑星帯を摂動させる大きな役割を果たしている可能性も浮上してきた。つまり、木星も危険だが、土星はそれよりさらに地球にとっって危険な性質を帯びていることになる。

    Norberto Navarro ValienteによるPixabayからの画像

    恐竜絶滅は木星のせいなのか?

     長年の通説に反して、木星は地球を守る盾として機能しているどころかむしろその逆で、太陽からの距離と質量を考えると木星のような惑星の存在は地球にとって脅威であり、小惑星帯からの衝突率は木星がない場合の3倍以上に増加することを示した今回の研究。

     そして、太陽系の巨大ガス惑星はすべて、太陽系の外縁部から物質を運び込む役割を担っており、初期には若い地球の地表に水や有機分子をもたらしたが、後期には小惑星衝突という絶滅レベルのイベントの発生率を高める因子となってしまった。

    Gerd AltmannによるPixabayからの画像

     約6550万年前、メキシコのユカタン半島付近に直径約10kmの巨大隕石(チクシュルーブ衝突体)が落下したことで、恐竜などの大型爬虫類やアンモナイトなどの大量絶滅が起きたとされている。

     地球上の生物の75%を葬ったとされるこの巨大隕石の地球衝突は、木星の影響がなければ起らなかったと考えるのも妥当であるという。巨大な木星には物体を引き寄せる性質があり、地球に破壊的な影響をもたらす小惑星の衝突率を大幅に高めているのだ。木星が地球に総合的な保護効果をもたらすという考えは神話であり、徹底的な科学的調査によって否定されることになったと言える。

     しかし、木星が地球を危険に晒しているからこそ、系外から水や有機物が地球にもたらされ、生命の形成と進化を促した側面もある。恐竜を絶滅させた衝突は木星のせいかもしれないが、そもそも地球に生命が誕生し、われわれが今こうして生きているのも木星のおかげということになるのだ。

     ともあれ、それが木星のせいであろうとなかろうと、地球上で次の大量絶滅を引き起こす小惑星衝突がいつか必ず起きることを覚悟せねばならないのだろう。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「Insane Curiosity」より

    【参考】
    https://bigthink.com/starts-with-a-bang/jupiter-extinct-dinosaurs/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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