カナダの救急隊員が11分30秒の臨死体験を激白! 体がバラバラに引き裂かれ、“宇宙の織物”になる感覚とは?
感電事故で11分30秒もの間、医学的に死んでいた男性がその臨死体験について口を開いている。そこは実に平穏な世界であったという――。
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臨死体験者たちが垣間見た死後の世界はどれもよく似ている。一部の科学者は、その理由について臨死体験とは生理学的現象であり、瀕死の事態に直面した生物の“最終奥義”だと考えているようだ。
一時的な心肺停止など、限りなく死に近づいた者が体験する臨死体験(NDE)では、幽体離脱して天上から自分の身体を見下ろしたり、真っ暗なトンネルを進んで出口で眩い光を見たり、亡くなった愛する人や慈悲深い存在に遭遇したり、言い表せないほどの深い安らぎの感覚に圧倒される体験などが生還者から詳細に語られている。
興味深いのは、個々の臨死体験者が語る話が似通っている点だ。ということは、誰にとっても同じ光景である“死後の世界”が存在しているということなのか?
しかし今、サイエンスの世界では臨死体験を完全な生理学的な現象として解明しようという試みが行われている。
ベルギー、リエージュ大学の研究チームが今年3月に学術誌『Nature Reviews Neurology』で発表した研究は、進化論的枠組みの中で同時進行する心理的および神経生理学的プロセスに基づいて臨死体験を解明することを試みている。
モデルを作成するため、研究チームは神経科学的な調査から心理学的アプローチまで、臨死体験に関するあらゆる既存の研究を徹底的に調査した。
臨死体験そのものは心肺停止などによって引き起こされるが、臨床的な死を迎えて劇的に変化した脳の環境において、特定の神経伝達物質を大量に生成するために、一部のニューロンネットワークが過剰に働いていると研究チームは考えた。人が死に近づくにつれて、大量に生成された特定の神経伝達物質が独特の精神的体験に寄与している可能性があるという仮説を立てたのだ。
人々が臨死体験をはっきりと覚えているのは、記憶、学習、注意力に関係する「アセチルコリン」、闘争・逃走反応、注意力、集中力、記憶力に重要な役割を果たす「ノルアドレナリン」、そしてニューロン同士のコミュニケーションを指示することで脳全体の機能を調整する役割も担う学習・記憶補助物質である「グルタミン酸」という、3つの主な神経伝達物質の働きによる可能性が高いと研究チームは言及している。
この三要素以外にも、多くの臨死体験の特徴である穏やかで平和な感覚は、セロトニンによる5-HT1A受容体の活性化によるもので、体内の天然鎮痛剤および気分向上剤であるエンドルフィンの一時的な増加や、ニューロンの活動を抑える神経伝達物質であるGABAも関連していると指摘している。
また、臨死体験にしばしば伴う鮮明な幻覚については、セロトニンによる5-HT2A受容体の過剰活性化を指摘し、ドーパミンも同様に視覚体験の変化に寄与し現実感を与えていると説明する。臨死体験は「現実よりもリアル」に感じたと話す臨死体験者は少なくない。
研究の主筆であるリエージュ大学病院の神経リハビリテーション臨床医兼研究者であるニコラス・ルジュヌ氏は「未知の神経化学物質の存在を想定するのではなく、臨死体験は生命を脅かす出来事に反応して自然に発生する混乱から生じるのではないか」と説明する。
現状、このモデルが臨死体験のあらゆる側面を説明しているわけではないことは研究チームも認識している。
特に臨死体験によって過去の記憶が蘇ったり、引き返せない地点に近づいているような感覚を抱いたりするとの報告について、説明は見つかっていない。研究チームはまだ特定されていない心理的プロセスまたは生物学的要因によって引き起こされている可能性があるという仮説を立てている。
しかし、そもそもなぜ、臨死体験という現象が引き起こされるのか。
研究チームは脳が臨死体験をするように進化した理由について、神経化学モデルに倣えば臨死体験は人間版の「死んだふり(擬死)」であると示唆している。
多くの生物種は闘争・逃走反応(fight-or-flight response)が失敗した後、致命的な危険に直面したときに、この最後の生存努力として死んだふりを行う。いわば生物としての“最終奥義”である。
死んだふりをすると、動物は力がなくなり、外部刺激に反応しなくなるが、周囲の状況を認識しているため、機会があれば逃げることができる。つまり、命の危機にあって、それをどうにかして回避しようとする最後の試みこそが臨死体験の根本であるというのだ。
そして臨死体験とは、起きていることに脳が意味を見出そうとする試みであるかもしれないということだ。神経伝達物質による夢や幻視に意味を見出そうとすることで、死後の世界や神を恣意的に見ているのかしれない。
「ある意味で、臨死体験は、命の危険にさらされた状況での生存率を高めるための受動的な対処メカニズムなのです」と研究チームのシャーロット・マーシャル氏は解説する。
研究チームは、この新しい考え方は生理学的データによって裏付けられる新たな枠組みを作るための第一歩に過ぎないと語る。臨死体験のさまざまな特徴について彼らが提示した仮説は、「より詳細まで踏み込んだ将来の実証研究のための」ロードマップになり得るものであるとのことだ。
さらに、人間が経験する極限状態を調査することで、将来的には意識のメカニズムの解明にも役立つ可能性もあるという。
臨死体験は死後の世界を垣間見る体験ではなく、完全に生理学的な現象として解明される日は近いのだろうか。蘇生医療の専門家で、臨死体験の研究者であるサム・パーニア博士の研究を含め、最先端の臨死体験研究にこれまで以上に注目が集まっている。
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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