江戸川乱歩もきっと絶賛! 〝早すぎた埋葬〟シミュレーターゲーム『Buried』/ムー通

文=藤川Q

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    死と隣り合わせ、生き埋め疑似体験

     冬が近づくと、動物は死を予感するもの。そんなときにこそ、前もって死についてのさまざまな観想を巡らせたいところである。そうした心持ちにぴったりの作品が、今回ご紹介する『Buried』。
     かのエドガー・アラン・ポーは『早すぎた埋葬』という作品で、仮死状態を死亡と勘違いされ棺桶に入れられて埋葬された男が味わった、筆舌に尽くしがたき恐怖を見事に筆舌を尽くして描いてみせた。この作品に影響を受けた江戸川乱歩も、同様のテーマの変奏として『白髪鬼』を描いた。

     生きたままで埋葬されるなんて、いったいどんな体験なのか?
     それはおそらく最も死に肉薄できる体験なのではないだろうか。本作では、そんなシチュエーションをゲームで疑似体験できるのである。

     あなたは棺桶のなか。板は打ち付けられており、土中にいる。心細いが、希望の光として100円ライターの明かりを灯すことができる。だが、じつはさらに強力な希望の光――スマートフォンも持っていたりする。なので棺桶のなかだが意外と快適だ。物理的に闇を照らす灯りもあるし、情報という無知蒙昧の暗闇を啓蒙の光で切り裂く最先端のデバイスだってある、というわけだ。しかし、次第に空気は薄くなり、飢えもにじり寄ってくるだろう。なんとかして息が続き、ライターの油が残っていてスマホの充電が切れてしまう前に、冷静になってこの棺桶から脱出するすべを捜さねば……。

     ポーや乱歩の設定した状況よりは幾分かましなので、がんばれそう? そう思う幻想文学の大家の世界を味わいたく感じておられるムー民の方ならば、ぜひこの小品にして逸品であるところの『Buried』をプレイしてみていただきたい。脱出ゲームのような知的な楽しみとスリルが楽しめること請け合い。
     ただし……死とぴったり背中合わせのこの閉塞した空間は、もしかすると冥府とも近いのかもしれない。それに、あなたが入れられた棺桶の周りもまた、死者が埋葬されている墓地、その冷たい土の下。もしかしたら、棺桶に寝た状態で見下ろすあなたの足先の奥の暗がりから……身の毛もよだつ"何か"が、足にしがみつきながら現れるかもしれない。

    (本作のムー民度  ★★★☆☆)

    © AuthoginMU
    Steam 235円(税込) 配信中

    (月刊ムー 2025年1月号)

    藤川Q

    ファミ通の怪人編集者。妖怪・オカルト担当という謎のポジションで、ムーにも協力。

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