古代信仰から近代ペイガニズムまでを俯瞰する「Pagans 多神教表象大全」/ムー民のためのブックガイド

文=星野太朗

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    Pagans 多神教表象大全/ムー民のためのブックガイド

    イーサン・ドイル・ホワイト 著

    全世界の歴史における、ペイガンの活動を俯瞰

     標題の「pagans」とは、辞書的には「キリスト教・イスラム・ユダヤ教以外の宗教の信徒」のことで、特に古代ギリシアやローマの多神教徒を表す。日本語では、一般には「異教徒」と訳されるが、本書によれば「ペイガンはペイガンなのです」。つまり「そういったアイデンティティをもって、宗教あるいは信仰として携わっている人たちが世界各地に沢山」いるというのである。

     本書は、そんなペイガンのルーツともいうべき古代世界の宗教や神話に始まり、アフリカやアジア、ネイティヴ・アメリカンやオセアニアなど各地の宗教、そして近代のペイガニズムの思想や動向まで、広く全世界の歴史における、ペイガンたちの活動の展開を俯瞰する、百科全書である。
     全世界、ということで、この種の本には珍しく、日本についてもかなりの記述が見られるのも興味深い。
     聖地信仰、魔女術、神託と占い、そして祝祭等々、ペイガンに関するありとあらゆる情報が網羅されているので、本書一冊が手許にあれば、とりあえずペイガンに関しては大丈夫。じっくり読み込めば「人間経験の複雑さについてより深い洞察が得られ」よう。
     迫力ある絵画や彫刻から、儀式、護符、呪具まで、全頁フルカラーで美しく豊富な図版が満載されている。特に珍しい図版も多数収録されているので、この図版を眺めるだけでも買いである。

    東京書籍/4180円(税込)

    (月刊ムー 2024年11月号掲載)

    星野太朗

    書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。

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