現代の予言書なのか? 都市伝説になった陰謀論カードゲーム「イルミナティ ニューワールドオーダー」に日本語版登場!

文=宇佐和通

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    現代の予言書「イルミナティカード」を日本語で解読できる時代が到来!

    陰謀論を題材とし、予言の土壌となったカードゲーム

    『The Illuminati Card Game』というカードゲームがリリースされたのは、今から40年ほど前、1982年のことだ。プレイシステムがかなり複雑だったため、発売と同時に大ヒットというわけにはいかなかったようだが、1994年のアップデート版『Illuminati: New World Order』(INWO)とあわせ、コアなファンに支持され続けているカードゲームとして知られている。
     ゲームとしての魅力が高いことは間違いないのだが、テーマが陰謀論や都市伝説であることから、ゲームファン以外の人たちからも注目されることになった。認知層の絶対的な大きさからいうなら、こちらの方がマジョリティーかもしれない。

     イルミナティ・カードゲーム(2作合わせて)の魅力は予言的要素、そして「知っている人なら思わずニヤリとしてしまう」ところだと思う。サブカルチャー分野で取り上げられることが多い、いや、取り上げざるを得ない、そんな要素がさまざまな形でちりばめられているのだ。

    ゲームであり、陰謀論者に活用されるライブラリにもなっているが……。

    偶然の一致にしては予言の精度が高すぎる

     筆者はこのほど、訳者として『Illuminati: New World Order』日本語版の出版に関わらせていただくというチャンスに恵まれた。この原稿は、イルミナティ・カードゲームのファンとして、そして日本語化の現場に身を置かせていただいた者として書かせていただくことにする。

    『INWO』の第一義はもちろんゲームだ。しかしほかのより一般的なゲームと比べて、1枚1枚のカードに持たされた意味がまるで違う。どう違うのか。最も目立つ要素を挙げるなら、それは予言性だ。

     イルミナティ・カードゲームの全シリーズを通じて、「Enough is Enough」というカードはとくに有名だろう。ひと目みてトランプ元大統領にそっくりな男性が描かれていると察する。2016年の大統領選挙では、それだけで話題になった。しかし、このカードにはさらなる予言的な意味合いが込められていたようだ。イラストの左側、ちょうど男性の右耳があるあたりに赤い三角形が描き込まれている。そうなのだ。2024年7月13日にペンシルバニア州バトラー近郊で行われていた選挙集会中、トランプ候補の右耳を銃弾がかすめた事件を想起させる。
     このカードは、2016年の大統領選挙の結果と2024年の暗殺未遂事件のダブルミーニング的な予言性を備えていたのかという話がネットで盛り上がっている。

    『INWO』でいうなら、アメリカ同時多発テロ関連の「テロリストの核兵器」と「ペンタゴン」のカードが挙げられるだろう。どちらのカードのイラストも、テレビや動画サイトで見た記憶がある構図だ。特に「テロリストの核兵器」は、航空機の激突で炎上し、折れ曲がった世界貿易センタービールのツインタワーを描いているとしか思えない。

    アメリカ同時多発テロの予言として話題になったのが、この2枚のカード。

     都市伝説や陰謀論といった要素を含めてカードをデザインするうえで、未来の陰謀的事件の予想が含まれることは当然といえる。しかしここまで具体的に、しかもかなりニッチなイメージやシンボルが一致してくるのは驚きだ。ここまで予見したカードが作られた理由は何なのか。

    『INWO』がサブカルチャーの中で長く存在し、話題になり続けてきた理由は、現実世界で起きる出来事をあたかも「予測」しているかのような仕上がりにある。ゲームのファンや陰謀論者は、特定のカードのイラストと実際の出来事の間に禍々しい共通点があることを指摘してきた。例を挙げるなら、パンデミックを連想させる「悪魔の疫病」といったカードがある。

    これはつまり、あのパンデミックなのか。

    『INWO』は単なるカードゲームではなく、予測プログラミングのようなものの一種なのではないか? そんなことを考える人もいる。版元のスティーブ・ジャクソン・ゲームズ社がそれぞれの出来事を予知していた可能性を指摘する意見もあるが、解釈の方向性としてはこれ自体が陰謀論になってしまいかねない。ただ、「偶然の一致」というひと言で片付けてしまうには的中率が高すぎる。

    カードに見いだした未来が実現してしまう

     さまざまな意味合いから過去40年にわたって英語圏のカードゲーム・プレイヤーたちのサブカルチャースピリットを刺激し続けてきた『INWO』。その日本語化の作業過程を通して、初めてわかった魅力がある。

     イラストというきわめてわかりやすいビジュアルな形で特定の事象について見せられると、強いインパクトを感じざるを得ない。筆者なりの言葉で『INWO』を形容するなら、「予言的要素がきわめて強い年代記的なもの」だ。とある時代区分において誰でも聞いたことがある都市伝説から、かなりニッチな陰謀論に関する情報まで、ポップカルチャー/サブカルチャー的要素が網羅されている。

     版元のスティーブ・ジャクソン・ゲームズ社は、企画段階ですでに定番、古典的と呼ぶことができた陰謀論とそこからスピンオフして拡散する都市伝説を可能な限り盛り込んだ。その結果、決して意図はしていなかっただろう予定調和が起きて将来の出来事とオーバーラップし、それが予言として解釈されているーーというのが現状なのかもしれない。

    あらゆるメッセージが並列になってしまう、眩惑的なカード構成。

     だからこそ、『INWO』を予言書的に“活用”する人たちの間でも、その流れの話が多くなるのは必然なのだ。
     その裏側には、「こうなってほしくはない」という願望と隣り合わせの「ひょっとして」というもうひとつの正反対の願望めいた気持ちがある。不特定多数の人々が抱く将来への予測や願望が、地球意識的なメカニズムでものごとの現実化に結びついているのかもしれない。そんな気までしている。

     だからこそ、『INWO』はごく普通のカードゲームという視点では解釈しきれない。陰謀論と都市伝説の年代記であり、予言書であり、地球意識的な概念のモデレーターでもあるのだ。

     この原稿を書くためにもう一度すべてのカードを見返していたら、見つけてしまった。

    「フランス」のカードのイラストだが、エッフェル塔の中央部が光り輝いていて、その中に人影が見える。これって、パリオリンピック開会式のフィナーレでセリーヌ・ディオンが『愛の賛歌』を歌っていた場面そのものじゃないか! 『INWO』って、一体何なんだ!?

    2024パリ五輪の開会式も予言されていたのか?

     日本語版となった450枚のカードを通じて、また新たな予言が発見され、認識された未来がモデレートされていくーー。そんな未来を予言しておこう。

    商品概要
    「イルミナティ ニューワールドオーダー 日本語版」
    本体価格12,000円(税込13,200円)/飛鳥新社/2024年12月7日発売予定
    https://www.amazon.co.jp/dp/4868010379
    スティーブ・ジャクソン(ゲームデザイン)、宇佐和通(翻訳)
    箔押し豪華BOX+カード450 枚+ゲームルールブック
    <カード種類の内訳>
     ・イルミナティカード 27枚(9種×各3枚)
     ・グループカード 167枚
     ・リソースカード 36枚
     ・プロットカード 175枚
     ・ニューワールドオーダーカード 15枚
     ・ゴールカード 10枚
     ・空白カード  20枚
    ※この商品は1994年米国STEVE JACKSON GAMES社より発売された『ILLUMINATI New World Order -FACTORY SET-』の日本語版です。ILLUMINATI New World Orderの増補セットである『ASSASSINS』のカードは含まれません。

    宇佐和通

    翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。

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