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セ氏2万度という超高温を発生し、物質を瞬時に原子レベルに分解する。しかもそのエネルギー源は、水から生まれる「水プラズマ」だという。はたしてその原理はいかなるものなのか? そして近未来に期待される活用法とは?
目次
あらゆる物質を原子レベルまで分解する! そんなSFのような技術が誕生した。
今回、紹介するのは最新のプラズマ技術で「水プラズマ」という。水を使って発生させるから水プラズマだ。ちなみに間違えやすい技術として、水中プラズマがある。こちらは文字通り、水中でプラズマを発生させる技術でまったくの別物だ。水プラズマは、水が生みだすプラズマの炎で、ありとあらゆるものを微粒子に分解し、無害化しようとするものだ。
本誌読者なら、プラズマという言葉には馴染(なじ)みが深いだろう。気象兵器のHAARPや人工地震に使われていると噂されるのがプラズマ兵器で、未知の技術というイメージがある。だが実際のところ、プラズマは未知の技術でも何でもなく、核融合技術や工業製品の製造加工に欠かせないものだ。
水から炎が生まれるというだけでも信じがたいのだが、発生した水プラズマに触れると、金属だろうが何だろうが、一瞬にして原子レベルに分解されて消滅するという。極端な話、まるで1950年代の古いSFに出てくる原子分解光線そのものなのだ。
そんなことが本当にあるのかと思いつつ、株式会社HELIX(へリックス)に話を聞きにいった。
「鉄は、セ氏2000度で溶けますよね? 水プラズマの温度はセ氏2万度です。このくらいの温度になると、鉄は分解されます。では分解された鉄はどこに行くのかというと、気化してしまいます。見えないけれど、空気中に漂っているわけです」
と、同社代表取締役社長の島俊浩氏は語る。
消滅するわけではないのだ。超高温のプラズマによって金属が一瞬で気化し、ナノレベルの粒子となって空気中に四散するのである。そのため、あたかも金属が瞬時に消滅したかのように見えるらしい。
現在は数多くの会社がプラズマ技術を所有しているが、水プラズマという名称で特許を持っているのは同社だけだ。その独自性はどこにあるのか。
同社代表取締役会長の矢口博文氏は、次のように説明する。
「水蒸気をプラズマ化する技術は以前からあるのですが、まずお湯を沸かすのも大変なんですよ。仮に産業廃棄物の処理に使おうとすると、最低でも何百リットル単位で必要になりますから。だからうちは、水からどうやってプラズマを作るかを考えたんです」
基本的なプラズマトーチ(炎の柱状のプラズマを作る。超高速で噴きだすため、プラズマジェットとも呼ぶ)は、高圧電流を流した電極にガスを通し、ガスをプラズマ化して高温を得る。あるいは電極からのアーク放電で、直接、金属を溶かしてプラズマ化してしまう。これに対して、水プラズマは文字通りに水をプラズマ化する。
通常は気体に電圧をかけてプラズマ化するわけだが(金属をプラズマ化する場合も、溶けた金属が気化してプラズマになる)、同社は液体である水に電圧をかけて、プラズマを発生させるというのである。
「水を渦(うず)にして、水のトンネルを作るのです。そのなかにアーク放電を通すと、水がプラズマに変わるんです」(矢口氏)
水が水蒸気にならずにそのままプラズマになる。社名のHELIXは、旋回という意味だ。水が回転するからHELIX。
「プラズマトーチを発生させる管の内部を真空ポンプを使って真空にし、管の内側に沿って高圧で水流を流すとプラズマが発生する」(矢口氏)
特許も取得した渦水流発生器を使い、水の渦巻きを作ってその中心に高電圧を通すのだ。発生するプラズマトーチによって電極は加熱されるが、水流によって冷却されるために溶けずにすむ。
非常に変わった、聞いたことのないプラズマトーチの生成方法だが、基本技術を開発したのはチェコスロバキアの会社なのだそうだ。
「共産圏が崩壊したときに、水プラズマ発生装置を購入できたんです。ただ、購入はしたものの動かなかったので、どんどん改良していまに至るという感じですね」(矢口氏)
最初の購入目的は溶射(溶かした金属粒子を吹きつけて、部材に皮膜を作る加工方法)だった。
「アルゴンガスの溶射はパワーが小さいので、皮膜も薄いし面積も小さい。これがうまくいけば、かなりの厚膜の溶射ができるんじゃないかと思って始めたんですよ」(矢口氏)
実際、厚膜の溶射ができれば、ロケットのフェアリングや戦闘機の塗装、大型建材など応用範囲は広い。
しかしうまくいかない。
「少し前に進んだと思っても、また失敗する。ぜんぜんうまくいかない。機械はあるものの、完全に直すには莫大な費用がかかる。高電圧を引いてコンデンサーを用意してなんて、到底できない。電気の基本料金だけで100万
円はいっちゃいますからね」(矢口氏)
そこで思いついたのが、トラックを利用することだった。
トラックのエンジンで発電すれば、電気代がかからないからである。
しかも使うのは水だけなので、ボンベのようなものでガスを外部から供給する必要もない。トラックで運搬可能なのだ。
そんなときに矢口氏は、九州大学・大学院工学研究院化学工学部門の渡辺隆行氏と知り合った。
「渡辺先生に話をしたら、彼はプラズマを使ったゴミ処理を考えていたので、じゃあトラックでどこか行ってゴミ処理もできるよね、と」(矢口氏)
「これなら発電コストを抑えて、どこへでも移動ができる。まさに一石二鳥ですよね」(島氏)
実際に、水プラズマの発生装置を見せてもらうことになった。
敷地内に停められたトラックが、装置の設置場所だ。本体部分と発電ユニット、廃棄物の投入装置などに分かれて、トラックの荷台にセットされたコンテナに収められている。
装置が起動すると、ものすごい音が響いた。トラックのなかで水が循環し、壁から滝のように落ちている。プラズマによるトラック本体の加熱を防ぐために、プラズマの放出方向が水で冷却されているのだ。
「プラズマの特性として、熱があまり広がらないということがあります。プラズマ自体の温度はセ氏2万度ですが、10センチ離れただけで、セ氏1万度は温度が下がります」(島氏)
プラズマ発生装置の電源を入れると、巨大なガスバーナーを横倒しにしたような金属筒から、紫色の炎の柱がすごい勢いで噴きだした。そこに分厚い鉄の板を差し込む。すさまじい閃光(せんこう)とともに、鉄板にぽっかり穴が開いた。
すごい! まるで魔法だ。
もっと鉄が溶けていく感じなのかと思ったが、本当に一瞬で消えてしまった。2センチほどの厚さの鉄板にも瞬時に穴が開くという。
「金属に当たっている場所だけが、ピンポイントでセ氏2万度になっているんですね」(島氏)
たしかに——。そうでなければ、とても人が近づけないだろう。
「大気中に放出された鉄は原子レベルになっています。それが冷却されると、鉄分子に戻ってバラバラと落ちてくる。小さくて見えないけれど、鉄の粒子が散らばっているんです」(島氏)
換気する際に微粒子をフィルターで取り除けば、周辺への健康被害もないという。
「ダイオキシンのような物質も、分子としてつながっているから有毒なのであって、バラバラにしてしまえば無害になります。これだけの高温だと分子が分解されて原子になってしまって、無害になるのです」(矢口氏)
水プラズマ発生装置を生かす方法として最初に考えられるのは、産業廃棄物の処理だ。
産業廃棄物の処理は、世界中で大問題になっている。海洋汚染のマイクロプラスチックも、産廃問題に帰結する。埋め立て地は満杯に近くなり、リサイクルも難しい。紙でストローを作るなどして目先をごまかしているのが現状だが、水プラズマ技術はそんな手詰まり状態になった産廃問題を根本から解決してしまうのである。
産業廃棄物の処理の基本は、「埋める・捨てる・燃やす」しかない。
しかし環境省が定める特定有害廃棄物(ダイオキシンやヒ素、サリンなど20数種類がある)の処理は、この3つの方法が使えない。埋めても捨ててもやしても、必ずその場所を汚染してしまう。その最たるものが核廃棄物で、こうした特別な廃棄物は処理ができず、保管するしかない。
だが水プラズマによる分解なら、こうした物質も無害化できる。さすがに核廃棄物だけは処理できないが、分解できる物質は多い。たとえば冷蔵庫やクーラーに使われているフロンガスは大気中へ廃棄できないため、処理が面倒だが、セ氏2000度の熱で分解できる。水プラズマの高温を通せば、一瞬で分解されてしまうわけだ。
「保管処理しかできない二十数種類の物質のうち、半分以上は水プラズマで分解し、無害化できます。これによって廃棄物の全体量を減らすことができるんです」(島氏)
こうして全体の保管コストやリスクが減れば、最終保管場所もいまより多く用意できるだろう。
また、ゴミ処理のネックは輸送コストにある。日本では産業廃棄物の中間処理場、最終処理場があり、そこでしかゴミ処理を行えない。法律で決まっているのだ。
「ゴミは輸送しなければならないわけです。たとえば沖縄で出た産業廃棄物は鹿児島へ運び、そこから大阪へ運んで最終処理をする。そういった面倒なことをしなければならない。実際、沖縄には最終処理場がありません。東京も処理する場所がいっぱいなので、処理できないゴミは新潟や北海道へ持っていくということが、日常的に行われているんです」(島氏)
水プラズマ装置をトラックで運び、現地で処理すれば、輸送コストがかからない。産廃には輸送が危険なものも多いが、そうしたリスキーなものも動かさないですむ。
「医療廃棄物もそうですね。もしわれわれがトラックで病院の敷地まで行き、そこで水プラズマで処理できれば費用が圧縮できるしょう」(島氏)
とてもいい話なのだが、そこで先ほど述べた法律が問題になる。
「これまでは廃棄物を廃棄された場所で処理する技術はなかったわけです。そのため、私どものような処理方法を許可する法律がまだない」(島氏)
水プラズマでの処理以前に、産業廃棄物の処理を、出た場所で行うことが法律上できないのが現状なのである。
「日本のゴミ処理認可は場所に出すんですね。設備や施設ではなく、場所です。だからゴミ処理を行うには、半径何キロの住人から許諾(きょだく)を受けなさいといった法律になっている。そこが難しい。法律を変えないと、車でそこまで行ってゴミを燃やすようなことはできない」(矢口氏)
法律を変えるには、プラズマによる焼却に伴うリスクをすべて調べ上げなければならない。リスクをクリアしてから、初めて法律をどうするかという話になる。
「法律の専門家は技術の細かいところまではわからない。するとどうなるかというと、大手メーカーと組んでくれという話になります。これがまた難しくて、産廃業界はすそ野がものすごく広いんです。産廃として出るゴミの種類は膨大ですから」(島氏)
単純に大手化学メーカーや工業機械メーカーと組めば、すべての課題が解決するかといえば、そうもいかないというのだ。
「今はペットボトルも、どこの国も引き取らなくなったでしょう? だから自分の国で最終処理まで持っていかなければならなくなった」(島氏)
とはいえ、日本も最終処理をしましょうとはならない。
「たとえば福島第一原発です。もともとの電気料金には、発電コストしか入っていない。原子炉の廃炉にかかる費用は含まれていないのです。廃炉の費用は当然、使った人が払わなければならないのですが、そうなると電気代は現在の10倍以上ですよ」(島氏)
現在の10倍の電気代……間違いなく、家庭の経済は崩壊する。
要は、そういうことなのだ。これまで産業廃棄物の処理費用はメーカーの負担だった。消費者が使い捨てをしたものを回収して、海外で格安で処理してきたのだ。だがそれはもう通用しない時代になる。消費者が廃棄費用まですべて負担することになるのだ。
「どう処理するか、その費用をどうするか。廃棄するコストの責任をだれが持つのか。本来であれば、大手企業が率先してコストを価格に反映させるべきですが、それは業界の価格破壊につながります。これから考えなければいけないことは多いんです」(島氏)
20年前、インターネットの普及率はまだ低く、スマートフォンもなかった。現在の社会などだれも予測できなかった。では、次の20年はどうなるのか。
「以前、サウジアラビアの人たちが視察に来ていいました。あと何十年かで石油ビジネスができなくなる、と。そういう危機感があった。次の産業をどうするか考えていると」(島氏)
石油がなくなった後、エネルギー産業はどうなるのか。火力発電所は石炭を使っているが、アメリカから輸入されるシェールガスが主力になる。そうした変化のなかで原発は廃炉になっていくだろうが、その処理技術がない。放射能を帯びた建材や配管をどう処理するのか。
「処理をするにはエネルギーがいる。費用もかかる。そのエネルギーを生みだすために、また別のエネルギーがいる。きりがないのです」(島氏)
ここで水プラズマが役に立つ。実は水プラズマ発生器は、水素を発生させるのだ。プラズマの超高温で水が分解され、酸素と水素が発生する。この水素を回収すれば、エネルギーとして利用できるのである。
「日本はEV車の国際競争に出遅れ、国としては次世代車に水素自動車を考えています。未来のことはわかりませんが、間違いなく自動車は、水素自動車になります」(島氏)
水プラズマ発生器が生みだす水素は、1分間で2立方メートル。1時間だと120立方メートルになる。
また、水以上に水素を含むのが軽油などのオイルだ。水プラズマに廃油、有毒な絶縁オイルのPCBや重金属を多く含む硫酸ピッチを噴霧(ふんむ)すると分解され、炭素は二酸化炭素に、有害な重金属は安定した酸化金属になって無害化する。するとどうなるのか? なんと水の13倍、1分間に26立方メートルの水素を製造できるのである。
こうして廃棄物を処理しながら燃料も作れるという、実に都合のいい一石二鳥が起きるのだ。
PCBは移動に役所の許可が必要で、硫酸ピッチはドラム缶に詰めて不法投棄する例が後を絶たない。また廃棄されたドラム缶が見つかっても、ドラム缶自体が溶けてしまって、手のつけようがないことも多い。そこに車載型の水プラズマ発生装置を使えば、現地で無害化処理を行うことができるため、問題は解決する。そうした無害化処理が一般的になれば、いずれ不法投棄も起きにくくなるだろう。
「環境問題を考えれば考えるほど、われわれがやってきたプラズマによる処理は重要になってくる。時代にマッチしてきたわけです」(島氏)
現在は九州大学と民間企業、官公庁、HELIXが手を組み、産学官で水プラズマを利用した革新的な産廃処理技術を開発しようとしているという。究極の目標は廃炉処理だ。技術開発から法律のハードルまで、越えるべきことは多いが、実用化すれば日本の環境技術は世界をリードするだろう。
「アントニオ猪木さんも応援してくれているんですよ」(島氏)
意外な人物の名前が出てきたが、政治家であり実業家としての顔も持つ猪木氏が評価するなら、実現する可能性もきわめて高いはずだ。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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